北海道《蟹鮨 加藤 ニセコ店》のいくらをお取り寄せ
自宅で過ごす時間が増えた昨年から今年にかけて、美味しい贈り物は、さらに人気が増しています。年末年始にかけてのシーズンは、やはり究極に美味しく、贈った相手に食卓でそのストーリーに共感してもらえるのが理想です。日本各地に息づく貴重な食文化を伝えている「日本食文化会議」のメンバーに、この冬の一押しを語り尽くしていただきます。今回は北海道産の大粒いくら「蟹鮨 加藤 ニセコ店」をご紹介します。
教えてくれたのは……
「日本食文化会議」の皆さん
料理人、茶人、菓子職人、伝承文化の継承者など食のプロフェッショナルが集い、日本の食文化を国内外に広く発信する団体。今回は魚、肉、野菜(漬物)それぞれを得意とするメンバーにご登場いただく。https://jfcf.or.jp
うすいはなこ
料理人。日本料理、食文化講師。博物館設計の仕事を経て日本料理店で修業した後、独立。「H-table料理教室」主宰。季節や行事食、食卓文化を伝えながら、地元江戸料理の研究、地域の特色ある魚食文化を残す活動をしている。著書『干物料理帖』は2021年グルマン世界料理本大賞でグランプリ受賞。
秋鮭シーズンの到来とともに、お店ではいくらづくりがはじまります。仕入れる腹子は、卵はしっかり成熟していながら卵膜がまだ柔らかいもの。鮭は川を遡上しているところで漁獲するイメージがあるかもしれませんが、上質ないくらは、お腹に卵を抱えた鮭がまだ沖合にいるときに漁獲したものです。鮭の卵は、川で産み落とされてから自力で生き抜いていくために、母鮭の産卵が近づくほどに卵膜が硬くなります。だから川や沿岸で捕れた鮭の腹子は卵膜が硬く、「ピンポンいくら」といって、口の中でプチッと弾けて膜が残ってしまうのです。
西内実義料理長は、まずは3粒、指でつぶして腹子の状態を確かめます。まれに卵膜が硬いものがあるそうで、それらが混ざらないよう細心の注意を払います。流水が注ぐボウルで腹子を丁寧にばらし、特性の醤油だれにひと晩漬け置き、翌日ざるに上げる前にもうひと仕事。膜が薄いためにどうしてもつぶれてしまい、浮いた膜をピンセットでひとつずつ取り除くのです。いくらの自然のままの味わいを楽しんでもらいたいと、張りを保つ安定剤や保存料、化学調味料は無添加。いくらの産地の一流店で食べる旬の味を家庭で堪能できるとは、至福の極みです。
秋鮭シーズンに、
料理長が手間を惜しまずお店で手づくり!
北海道の老舗蟹卸問屋「加藤水産」がニセコで営む日本料理店「蟹鮨 加藤 ニセコ店」。鮭が故郷の川を目指す9月から10月中旬にかけて、北海道の沖合で捕れた鮭の腹子を用い、料理長自らお店でつくるいくらの醤油漬けです。
①質のよい腹子だからこそ、一粒ひと粒を無駄にせず、手間はかかっても美味しく仕上げたいと西内料理長。
②腹子をばらす際は金網などを使わず、流水が注がれるボウルの中で腹子自体をしっかりと膨らませ、丁寧に作業する。
③ばらした卵を醤油だれに漬ける前に、潰れているものがないか、膜が残っていないかなどをチェックする。
④卵膜と卵が密着しているところは、かす揚げの上で流水を当てながら、最後のひと粒まできれいにばらしていく。
⑤醤油だれにひと晩漬け置き、完成したいくら。空気に触れるとすぐ乾き、張りがなくなるのは安定剤を使っていない証し。
⑥味はしっかりしていながらも濃過ぎず、いくらそのものの味わいを感じる。まずはご飯にたっぷりのせて。
祝いの魚・鮭の子ですから
おめでたい席にも喜ばれます
昨今は冷凍技術が上がり、秋につくったいくらを正月でも美味しく食べられるようになりました。いくらはめでたいときに食べるものですが、その親である鮭もまた「神の魚」、「祝いの魚」と呼ばれる鮭文化があるのは、あまり知られていないかもしれません。
北海道でアイヌの人々は、鮭が遡上する川筋を好んで集落を築きました。秋、産卵のために海の栄養を蓄えて大量に上ってくる鮭を、彼らは「カムイチェプ(神の魚)」と呼びます。魚肉だけでなく内臓やヒレなども食べ、干したり凍らせたりして保存食にし、翌春まで命をつなぐ食べ物として大切にしてきたのです。ちなみに、凍らせた鮭を薄く切って刺身にするルイベは、アイヌ語の「ルイペ」からきています。卵のいくらはアイヌ語で「チポロ」。芋をつぶしたものやおかゆに混ぜて食べたり、調味料のように使います。皮で冬用の靴もつくるなど、一尾丸ごと捨てずに利用したのです。
鮭は新潟でも馴染みの深い魚です。中でも村上市の三面川に上る鮭は、古くから朝廷へ献上していた記録が『延喜式』に残されています。村上の人たちは鮭を「イヨボヤ」と呼び、「年取り魚」として正月の祝い膳や雑煮に必ず用いてきました。その卵であるいくらが珍重されるのは言うまでもありません。
さて、いくら料理の王道といえば、やはりいくら丼でしょうか。東京の下町にある我が家では、温かいご飯ではなく酢飯に海苔を敷き、いくらをたっぷりのせていただきます。いくらは添え物ではなく、メインでば〜んと食べるのが好きです。我が家ではちらし寿司にもたびたび登場します。普段は穴子、玉子、キュウリ、海苔、というのが定番ですが、穴子をいくらに替えるいくらバージョンは、子どもの誕生日などハレの日によくつくります。
酒飲みには、麹に漬けた鮭のルイベといくらを和える「いくらのとも和え」、鬼おろしでおろした大根といくらを合わせる「いくらおろし」がたまりません。最近おもしろいなと思ったのは、いくらが洋食にも使われていること。バターやチーズとの相性がいいので、鮭をムニエルにして、いくらをたっぷりかけると美味しいですよ。
ここ数年は鮭の不漁が続き、北海道産の天然いくらはますます稀少になりそうです。そんなときこそ本物の味を少しでも多くの人に知ってもらいたいと思います。
皮が薄いけれどダレていない。
極上のいくらの証しです
美味しさのヒミツ
「沖合で獲れた鮭の腹子を料理人がすぐに加工」
沖合で獲れ、北海道で水揚げされた鮭から取り出したばかりの腹子を使用。いくらを知りつくした一流の料理人が一粒もむだにせずつくったものは、水産加工業者が大量に仕込む市販品とは別もの。安定剤など無添加でいくら本来の味わいを楽しめる。
うすいさん流!美味しい食べ方
「王道のいくら丼はばば〜んと豪勢に!」
北海道産天然鮭の旬のいくらは卵膜が柔らかく、舌の上ですっと溶けるような食感。旨みがあふれ出し、酢飯がそれを受け止める。
北海道産 天然鮭 いくら醤油漬け
価格|8800円(送料込み)
内容量|250g×2
原材料|鮭卵(北海道産)、醤油、酒
賞味期限|2022年4月末
注文方法|Tel、Mail
*10月につくったいくらを冷凍し、100個限定でお届け
北海道・倶知安町
北海道の海の幸を堪能する
地元のカニやウニ、旬の魚介類をふんだんに使った懐石料理をカウンター席で楽しめる「蟹鮨 加藤 ニセコ店」。締めのいくら丼にはいくら醤油を垂らすのだが、これは、いくらを仕込む際につぶれてしまったいくらを利用した西内料理長のお手製。
蟹鮨 加藤 ニセコ店
住所|北海道虻田郡倶知安町字山田167-34 品山1F
営業時間|11:30〜14:00(L.O.)、18:00〜22:00(L.O.)
定休日|なし
Tel|0136-55-7577
Mail|niseko@sushikato.jp
https://niseko.sushikato.jp
text: Yukie Masumoto, Tatsuya Matsuura photo: Kenji Itano
Discover Japan 2021年12月号「ストーリーのある贈り物」