高岡「茶寮 和香」
地元の食材とうつわが織りなす、美しくもどこか温かい日本料理
格子造りの建物と石畳の調和が美しい、高岡市金屋町の一画にある日本料理店「茶寮 和香(さりょう にこか)」。カフェからはじまって6年、日本料理では5年の節目を迎え、いまでは町に次々と新しい飲食店が誕生している。「高岡らしく。唯一無二でありたい」と語る、店主・早川勇人さんが目指す今後とは?
地方に出てはじめて高岡の魅力を再認識した
初めて暖簾をくぐった時から何度足を運んでも、やんわりと温かな空気を感じる「茶寮 和香」。富山県高岡市で生まれ、大阪の名店「一汁二菜うえの」などで修業した早川勇人さんが、2015年に開店した日本料理店だ。
「私が地方の良さに気づけたのは、料理の修行先である香川県高松市に行ってから。その土地の条件でしか生まれない食材や文化があるんです。独立することを決めてお店の場所を考えたときに、高松に開店することも頭に浮かびました。しかし最終的に高岡にしたのは、自分の好きな味や記憶に残っている味が、幼少期に高岡で食べていた味だったからなのです」と早川さん。毎年秋にクラフトに関する総合イベント「高岡クラフト市場街」で、2013年に客人と参加して、その想いが合致したのだと振り返る。
陰陽五行や花鳥風月を取り入れて
「うちは和食ではなくて日本料理と言うようにしてます。」と早川さんは語る。和食にも通じるものがあるが、日本料理には、すべての物は二つの相反する性質をもつもので調和し成り立っているとされる「陰陽五行」や、季節のうつわなどを楽しむ「花鳥風月」といったルールがあり、それを軸にして組み立てられる。たとえば、片刃包丁は柄を真っすぐにもったときに刃の左右で陰と陽を示し、四角い皿に丸いうつわを合わせると陰と陽になる。食材も同様で、それらを五味、五色、五法で料理の世界が出来上がる。
「すべてを高岡のうつわにするとルールが崩れてしまうこともあるので、高岡のうつわはアクセントとして使っています」。早川さんは凛とした空間で手を美しく動かし、食材が生きるようにその場で物語を生み出しつづけている。
高岡らしさを残しつつ次のステージへ
「茶寮 和香」がオープンして6年。ここ数年で金屋町の飲食店は4店舗に増えた。それぞれが良好な関係で、「もっとお店の選択肢が増えればいいですよね。地元を大切にするという想いもありますが、それ以前に人が好きなんですよ。食材もうつわも、つくってくださる方自身が高岡の恵みだと思うので、それをつなげていきたいです」と早川さんは話す。
それぞれのお客さまに想いやイメージがあって、それに寄り添って料理を考えるやり方が早川さんには向いているという。お品書きはいつも朝に決め、美味しそうなものがあれば、お客様の顔を思い出しながらつくる。「高岡で料理屋をやるのであれば、文化的な方がいいのではないかと思っていて。皆さん、街には何もないって自分たちでは言われるけれど、その奥ゆかしさが高岡の色気だと感じています」。
「茶寮 和香」の料理や早川さんの言葉にも、その色気が漂っている。それこそ、皆がこの店に惹きつけられる理由なのだ。
茶寮 和香
住所|富山県高岡市金屋本町2-26
営業時間|11:30~14:00、18:00~22:00 ※2日前までに要予約
定休日|日曜、祝日
Tel|0766-75-8529
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text: Kaeko Ueno photo: Atsushi Yamahira
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