「金ノ三寸 (かねのさんずん)」
高岡伝統工芸の魅力を体感する一棟貸しホテルが誕生!
富山県高岡市にある銅器メーカー「四津川製作所」の代表・四津川元将が、オープンさせた民家ホテル「金ノ三寸(かねのさんずん)」。金屋町という重要伝統的建造物群保存地区に指定されている街に、宿を誕生させた理由に迫る。
高岡の老舗銅器メーカーが、なぜホテルをつくったのか
高岡銅器や高岡漆器などの伝統工芸がいまに受け継がれている、ものづくりの街・富山県高岡市。その中でも最も古い歴史をもち、高岡鋳物発祥の地として重要伝統的建造物群保存地区に指定されている街が金屋町だ。この街で生まれ育った銅器メーカー「四津川製作所」代表取締役の四津川元将さんが、街のために自分だからできることを模索し、2020年12月に誕生したのが一棟貸しの民家ホテル「金ノ三寸」。ホテル名は、鋳物の「鋳」の文字を分解して名付けられた。
築100年の2棟続きの古い建物をリノベーションし、外観は伝統的な意匠を復活。館内はもともとの古材に加え、地域性・独自性のある技術と新しい素材や挑戦を試みた。
「高岡銅器を感じられる宿にしたいと思いました。実際に使っていただくことで本物の銅器のよさを伝えたいと思っています。生活の中に溶け込ませることで、魅力を感じていただけるとうれしいですね」と四津川さんは言う。
生活の中で高岡銅器の魅力を体感できる宿へ
長期滞在を考えた充実のしつらえ
一軒の宿から金屋町を観光都市に
高岡市は加賀前田家2代当主・前田利長が築いた高岡城の城下町。当時から400年以上に渡って、高岡銅器を代表とする鋳物製作が盛んな街だ。金屋町はその地にあって、利長公が最初に7人の鋳物師を呼び寄せた場所。重要伝統的建造物群保存地区にも認定されており、街並みの美しさから、映画やCM撮影でも人気だが、人々が暮らす生活の地でもある。
「金屋町に暮らす住民の人たちにも、宿ができたことをよかったと言ってもらいたいし、賑わいではなく趣のある通りにしたいと思っています。金ノ三寸を通して、金屋町に魅力を感じてくれる人が増えてくれたらうれしいですね。お店の人とゆっくりと会話ができ、歴史を感じ、ものづくりもできる。さまざまな観光の在り方が楽しめる高岡の魅力を、ここから伝えていきたいと思います」と四津川さん。
ひとりの街に対する熱い想いからスタートした金ノ三寸。鋳物の魅力を伝えながら、街の人と観光客をつなぐ架け橋として、今後多くの人に愛されていくだろう。
民家ホテル金ノ三寸
料金|1泊1棟5万1000円~(税込) ※8名まで宿泊可
住所|富山県高岡市金屋町4-12
Tel|080-5859-6343
IN|16:00 OUT|11:00
text: Kaeko Ueno photo: Atsushi Yamahira
2022年1月号「酒旅と冬旅へ。」