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「金ノ三寸 (かねのさんずん)」
高岡伝統工芸の魅力を体感する一棟貸しホテルが誕生!

2021.12.6
「金ノ三寸 (かねのさんずん)」<br>高岡伝統工芸の魅力を体感する一棟貸しホテルが誕生!

富山県高岡市にある銅器メーカー「四津川製作所」の代表・四津川元将が、オープンさせた民家ホテル「金ノ三寸(かねのさんずん)」。金屋町という重要伝統的建造物群保存地区に指定されている街に、宿を誕生させた理由に迫る。

高岡の老舗銅器メーカーが、なぜホテルをつくったのか

高岡銅器や高岡漆器などの伝統工芸がいまに受け継がれている、ものづくりの街・富山県高岡市。その中でも最も古い歴史をもち、高岡鋳物発祥の地として重要伝統的建造物群保存地区に指定されている街が金屋町だ。この街で生まれ育った銅器メーカー「四津川製作所」代表取締役の四津川元将さんが、街のために自分だからできることを模索し、2020年12月に誕生したのが一棟貸しの民家ホテル「金ノ三寸」。ホテル名は、鋳物の「鋳」の文字を分解して名付けられた。

築100年の2棟続きの古い建物をリノベーションし、外観は伝統的な意匠を復活。館内はもともとの古材に加え、地域性・独自性のある技術と新しい素材や挑戦を試みた。

「高岡銅器を感じられる宿にしたいと思いました。実際に使っていただことで本物の銅器のよさを伝えたいと思っています。生活の中に溶け込ませることで、魅力を感じていただけるとうれしいですね」と四津川さんは言う。

8名まで滞在できる「八」の棟と、4名まで宿泊可能な「月」の棟からなる「金ノ三寸」。鋳物作品の展示が見られる「八」のダイニングは、ラグジュアリーな気分を演出
2階は考えつくされた間接照明と低い位置にまとめられた家具類が穏やかな休息をうながしてくれる。大きな観光地にはない静けさが、また来たいと思わせる宿の魅力だ

生活の中で高岡銅器の魅力を体感できる宿へ

日本の伝統建築空間の中には、挑戦や遊びなどのさまざまな仕掛けがある。2階へと階段を上ったスペースには、あえて壁に凹凸をつけることで、さりげなく高岡銅器を飾っている
キッチンスペースには、銅器メーカーならではの作品が勢ぞろい。滞在中は四津川製作所の「KISEN」シリーズのうつわやグラスを実際に使うことができる

長期滞在を考えた充実のしつらえ

どちらの棟もキッチンを完備。冷蔵庫や電子レンジに加え、IHコンロや食器類なども充実しているため、長期滞在にも最適だ
家族で同時に入浴しても余裕な広さのバスルームは、使いやすさを重視して現代風に。アメニティも身体にやさしいものを厳選

一軒の宿から金屋町を観光都市に

高岡市は加賀前田家2代当主・前田利長が築いた高岡城の城下町。当時から400年以上に渡って、高岡銅器を代表とする鋳物製作が盛んな街だ。金屋町はその地にあって、利長公が最初に7人の鋳物師を呼び寄せた場所。重要伝統的建造物群保存地区にも認定されており、街並みの美しさから、映画やCM撮影でも人気だが、人々が暮らす生活の地でもある。

「金屋町に暮らす住民の人たちにも、宿ができたことをよかったと言ってもらいたいし、賑わいではなく趣のある通りにしたいと思っています。金ノ三寸を通して、金屋町に魅力を感じてくれる人が増えてくれたらうれしいですね。お店の人とゆっくりと会話ができ、歴史を感じ、ものづくりもできる。さまざまな観光の在り方が楽しめる高岡の魅力を、ここから伝えていきたいと思います」と四津川さん。

ひとりの街に対する熱い想いからスタートした金ノ三寸。鋳物の魅力を伝えながら、街の人と観光客をつなぐ架け橋として、今後多くの人に愛されていくだろう。

「住んで生まれ育った人間が先頭に立って、街を動かさなくちゃ」と笑顔で語ってくれた四津川さん。ゲストからの「ありがとう」のひと言が、何よりの幸せだという
伝統的な外観とは一転、フロントには重厚な銅をふんだんに使用。一歩入ると非日常空間が出現するおもしろさがある
伝統と人々の暮らしの中にある金屋町に溶け込んだ金ノ三寸の外観

民家ホテル金ノ三寸
料金|1泊1棟5万1000円~(税込) ※8名まで宿泊可
住所|富山県高岡市金屋町4-12
Tel|080-5859-6343
IN|16:00 OUT|11:00
 
 

≫公式サイトはこちら

 

text: Kaeko Ueno photo: Atsushi Yamahira
2022年1月号「酒旅と冬旅へ。」

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