ART

手から手へ引き継いできた“軌跡”の展覧会
特別企画展《SHOKUNIN pass/path》
陶芸、提灯、茶筒、木桶、金網の職人たち

2021.11.5
手から手へ引き継いできた“軌跡”の展覧会<br>特別企画展《SHOKUNIN pass/path》<br><small>陶芸、提灯、茶筒、木桶、金網の職人たち</small>

京都伝統産業ミュージアムでは、特別企画展「SHOKUNIN pass/path」を、2021年11月6日(土)〜2022年1月23日(日)まで開催する。

中川木工芸の中川周士氏と開化堂の八木隆裕氏が、2017年のミラノサローネで発表した同タイトルの展示を起点に始まった取り組みであるこの展覧会は、英語の「Craftsman」や「Artisan」とは異なる意味や性格を持つ「職人」という言葉と、職人による「職人性」への探究によって、それぞれの作り手としての現在地を示し、これからの工芸の座標を映し出す。会期中は、中川木工芸と開化堂に朝日焼、金網つじ、小嶋商店を加え、5つの工房が繋いできた「今」が見えてくる展示と、工芸を軸にしたシンポジウムやワークショップも開催される。

京都伝統産業ミュージアム
京都市の伝統産業が一堂に見られる「74CRAFTSWALL」や、工程を学び、触れ、体験できる「74CRAFTSEXHIBTION」を常設している。また一番奥に位置する企画展示室は約280平米の空間を有し、時には学びとして、時には新たな発見の場として、伝統産業を体感できる企画展を年に数回開催している。

《出展は京都を代表する5つの工房》
小嶋商店|小嶋俊・小嶋諒

小嶋商店は江戸寛政年間創業、京提灯の製造・販売を行なっている。伝統を守り正統派の京提灯を作りながら、提灯の新たな可能性を求め、既存の概念にとらわれない提灯の在り方を提案している。竹割から紙貼りまで一貫した手作業で頑丈で無骨な小嶋式提灯を生み出す。

江戸時代から代々伝わる伝統製法をベースに、「素材やフォルム、空間」と「提灯」との関係性を模索し、提灯が生み出す新たな景色を創造し、未来に小嶋式提灯を伝承している。

小嶋商店
https://kojima-shouten.jp/

金網つじ|辻徹

京金網は、京料理を支える調理道具として料理をつくる方々に長らく愛用されてきた。そして、これまでに学んだ知恵や経験を活かした「現代の生活に溶け込む商品づくり」をコンセプトに、手仕事で金網製品の製作・販売を行っている。

金網つじの全ての商品は「脇役の品格」という創作理念のもと、使っていただくことで心地良さを感じていただける金網製品をつくるために、日々ものづくりをしている。そして、これからも時代を超えて、職人が受け継いできた技術を守っていきながら、新しいものづくりに挑戦していく。

金網つじ
https://kanaamitsuji.com/

中川木工芸|中川周士

中川木工芸は、初代亀一が老舗の木桶工房に丁稚奉公をしたことから始まった。40年ほど勤めて独立し、1961年に京都白川通りに中川木工芸を開業。その後二代目の清司が京都工房を引き継ぎ、2001年に国の重要無形文化財保持者(人間国宝)の認定を受けている。そして2003年、三代目の周士が滋賀県大津市に「中川木工芸 比良工房」を開いた。現在、中川木工芸では京都と滋賀、二つの工房体制で運営している。

木桶の製作技法はおよそ700年前、室町時代頃より大陸からその技法が伝わり、江戸時代頃には日本各地でさかんに使われるようになった。中川木工芸ではその当時から受け継がれる伝統的な木桶の製作技法を用いて、おひつや寿司桶など白木の美しい木製品を数多く制作している。近年、ほかの技法では表現が難しいデザイン性に富んだ革新的な作品の製作にも挑戦し、日本国内のみならず海外からも高い評価を得ている。

中川木工芸
https://nakagawa.works/

朝日焼|松林豊斎

朝日焼は茶の生産地であり、茶の文化の中心地である京都・宇治の窯元として、宇治という土地の茶文化とともに1600年頃(慶長年間)歩み始めた。江戸時代後期にはそれまでの粉末状の抹茶を飲む茶の湯の習慣とは異なる、「煎茶」という茶葉に直接お湯を注ぎ、急須や宝瓶と呼ばれる道具を使って飲む茶の習慣が現れ、産地としての宇治も煎茶に対応することに伴い、朝日焼でも煎茶のための「宝瓶」という器を作ることとなった。

このように朝日焼では、大きく茶の湯のための茶盌、そして煎茶のための宝瓶という二つの大きな軸を中心に茶の器を作ってきた。また、ほかの朝日焼の特長として、その当主の名前を引き継いで作ってきた。名前を継ぐことにより、その技術だけに留まらず、アイデンティティ、哲学、歴史を確実に継承していくことを意識しているそうだ。

現代においては、松林佑典が十六世豊斎を襲名し、茶の湯の茶盌、そして煎茶の宝瓶をともに現代の朝日焼として如何に位置づけるかへと取り組むと共に、日本の茶文化のみに留まらず、英国、台湾や中国など多様な茶文化へ接することで、未来の茶文化を築いていくことを目指し、活動を続けている。また、ほかのジャンルとのコラボレーションにより、茶文化からほかのアイテムへ、ほかの要素を茶文化へと展開を図ることも積極的に行っている。

朝日焼
https://asahiyaki.com/

開化堂|八木隆裕

時は文明開化の1875年(明治八年)、開化堂は英国から輸入されるようになった錻力(ブリキ)を使い、丸鑵製造の草分けとして京都で創業。以来、一貫した手づくりで一世紀を過ぎた今もなお、初代からの手法を守り続けている。

開化堂が一世紀以上茶筒づくりを続けてこられたのは、初代がつくり出した茶筒の価値を知り、守り、つくり続けることが一番大事であると理解しているからだ。それを時代や状況が変わっても代々受け継いできた。

八木隆裕さん 開化堂の茶筒は、へこみや歪みができても修理することで使い続けていただくことができます。それは、手づくりだからできることです。大変有り難いことに、二世代、三世代にわたり弊堂の茶筒をお使いのお客様がおられます。それは、もちろんお客様に大事にしていただけたからこそですが、この先、もし修理が必要になっても、弊堂職人によって修理することができるよう、これからも絶えることなく技術を繋いでいきます。開化堂は、これからも百年使える暮らしの道具を皆さまにお届けします。

開化堂
https://www.kaikado.jp/

特別企画展 SHOKUNIN pass/path
会場|京都伝統産業ミュージアム 企画展示室(京都市左京区岡崎成勝寺町9-1 京都市勧業館みやこめっせ 地下1階
会期|2021年11月6日(土)〜2022年1月23日(日)
休館日|11月29日、12月21日、12月29日-1月3日
開館時間|9:00〜17:00(入館は16:30まで)
観 覧 料|800円(18歳以下無料)
https://kmtc.jp/

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