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「御宿 富久千代/草庵 鍋島」
佐賀の酒蔵オーベルジュで九州を味わう。後編

2021.9.30
「御宿 富久千代/草庵 鍋島」<br> 佐賀の酒蔵オーベルジュで九州を味わう。後編

2021年4月に開業した、日本酒「鍋島」を醸す富久千代酒造によるオーベルジュ「御宿 富久千代」。前編では鍋島と九州食材のフルコースを紹介したが、酒蔵オーベルジュの魅力は、それだけではない。おもてなし、意匠など細部に宿る文化も楽しみたい。

≪前編を読む

「鍋島」の 文化に触れて、
美食の旅は完結する。

商家だった面影が見える中庭には、味噌や醤油醸造の際に使われていた煙突が見える。料理だけでなく、空間全体における新旧の文化の融合も楽しんでほしい

富久千代酒造が手掛ける、酒蔵オーベルジュ「御宿 富久千代」。広さ250平米を超える空間を有する同施設は、もともと味噌や醤油づくりをしていた商家を改築。入り口のカウンターには、酒を搾る機材「槽」を活用したほか、酒樽用の置石を配するなど、随所に酒蔵ならではのしつらえが施されている。土地が育んできた新旧の文化を味わいながら語り合える空間をつくり上げた。

今回、我々がうかがった「草庵 鍋島」は、1日わずか6名だけが入ることを許される。「私たちがおもてなしできる最大限の人数でした」と笑いながら語る飯盛さんからは、利益主義ではなく、町を守りたい、来訪する方々をおもてなししたいという純粋な想いが感じられた。

1日6名という特別感もさることながら、草庵 鍋島では、コースの中で供される日本酒を最大3本まで購入できる。中には流通していない銘柄もあるため、ぜひ購入を勧めたい。

また、御宿 富久千代の宿泊客限定で、普段は非公開の酒蔵内を見学することもできる。「鍋島」がどのようにして生まれているのか、その背景にも触れられるのは、酒蔵オーベルジュならではの体験といえるだろう。

寝室は1階と2階に用意され、最大4名が宿泊可能。室内からも茅葺きを楽しんでほしいと天井の一部がスケルトンに
宿泊者専用のライブラリーでは、飯盛夫妻が選書した書籍や音楽が楽しめ、思い思いの時間を過ごせる
本家屋ならではの雰囲気を感じてほしいと、館内には茶室スペースを設けている

そもそも鍋島は、飲食店のメニューに「酒 一合」とだけ書かれているような時代に、純米酒の市場をつくるべく、4軒の酒販店とともに生き残りをかけて1998年に誕生。しかも銘柄名は一般公募で決められたという。「育ての親がたくさんいます」と語る飯盛さんの言葉通り、地域に愛される酒を造りたいと生み出された鍋島は、世界的なワインコンテストであるIWC2011の「SAKE部門」で最優秀賞を獲得するなど、いまや世界に名を轟かせる、“地域が誇れる銘酒”となっている。

酒蔵オーベルジュのはじまりは、町を守りたいという想いから。「鹿島に生まれたんだと、ゆくゆくは子どもが誇れる町にしていきたい」。飯盛さんが見据える先には、常に町がある。御宿 富久千代を起点に鹿島という地を好きになる。そんな未来が見えてきた。

席数はわずか6席。日本酒、料理、うつわはもちろん、シェフとの会話もコースのひとつとして楽しみたい
入り口の扉を開けると、酒を搾る「槽」をリ・デザインしたカウンターが出迎えてくれる

宿泊者だけが 潜入できる「鍋島」の現場へ

普段は見られない酒造りの現場。酒米は、地元米のほか、全国各地の“顔の見える酒米”を使用
現在は13名の蔵人が働き、日本酒「鍋島」を国内外へ届けている。2021年、農業法人を立ち上げた

御宿 富久千代
住所|佐賀県鹿島市浜町乙2420-1
Tel|0954-60-4668
料金|1泊2食付6万6000円~
客室数|1室(1組4名まで)
カード|AMEX、DINERS、DC、JCB、UC、VISAなど
IN|15:00 OUT|11:00
食事|夕食、朝食(和食/草庵 鍋島)
定休日|水・木曜(※12月1日より月・火曜休)
https://fukuchiyo.com

草庵 鍋島
住所|佐賀県鹿島市浜町乙2420-1
Tel|0954-60-4668
料金|2万2000円~(要予約。定員最大6名まで。日帰り夕食のみも可能。ただし宿泊者優先)
営業時間|17:00~22:00(17:00一斉スタート)
定休日|水・木曜(※12月1日より月・火曜休)
 
 

≫公式サイトはこちら

 

≪前編を読む

text: Discover Japan photo: Atsushi Yamahira 撮影協力=佐賀県
2021年10月号増刊「ニッポンの一流ホテル・リゾート&名宿 2021-2022」

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