伊勢神宮にも奉納された縁起の良い「最中」
福田里香の民芸お菓子巡礼
民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は、お面をモチーフにした伊勢神宮にも奉納された縁起の良い、三宅製菓本店の「備中神楽面最中」を紹介します。
福田里香(ふくだ・りか)
菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍。8年間にわたり続いている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中
備中は現在の岡山県西部です。「備中神楽」は、国指定重要無形民俗文化財として、この地方に継承される郷土芸能。秋祭りに舞う備中神楽には、役指し舞や茣蓙舞などの神事舞に加え、大蛇退治などの神代神楽といった多彩な演目があります。
踊り手がつける面をモチーフにしたお菓子が「備中神楽面最中」です。製造元の「三宅製菓本店」は、備中神楽の発祥地・高梁市で1905(明治38)年に創業した老舗。備中神楽面最中の中身は、北海道産大納言小豆と最高級白双糖で炊き上げた粒あんです。パリッと軽やかな最中皮は、岡山県産のもち米製。大変贅沢な味わいです。
現在は販売終了となりましたが、三宅製菓本店では備中神楽面最中と「倉敷緞通」を組み合わせた贈答セットがありました。倉敷緞通は、柳宗悦がディレクションした民藝品です。当初無地だった緞通に縞柄を提案し、さらに図案を芹沢銈介に依頼して「倉敷緞通」と命名しました。神楽面も民藝です。郷土芸能と民藝品の組み合わせは、この上なく相性がよくすてきです。
三宅製菓本店
住所|岡山県高梁市成羽町下原577
Tel|0866-42-3105
営業時間|8:30~16:30
定休日|土・日曜
www.miyakeseika.jp
text: Ricca Fukuda photo: Wakana Baba
2020年11月号 特集「あたらしい京都の定番か、奈良のはじまりをめぐる旅か」