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せとうち海産物三昧の旅
いま訪ねたい、プレミアムなせとうち

2020.10.16
せとうち海産物三昧の旅<br><small>いま訪ねたい、プレミアムなせとうち</small>
広島県の大崎上島の衛生的な地下海水をくみ上げて海産物を養殖する「ファームスズキ」の新鮮な牡蠣は、生で食べても焼いて食べても美味しい

全国の漁業生産額の約4分の1を占める瀬戸内海。せとうちの海が育んだものは、豊かな海産物だけでない。「海の道」で人々の暮らしと文化を支えた海に思いを馳せ、その恵みを堪能しよう。

「プレミアムせとうち案内」と題し、瀬戸内エリアのワンランク上の体験を取り上げた1冊。
12月号増刊「プレミアムせとうち案内」

瀬戸内海は古くから、豊かな海の幸に恵まれ、日本の沿岸漁業の先進地として、さまざまな漁法が営まれている。特に、海面養殖業については、その発祥の地として知られているほか、全国の養殖業の全体収穫量の約4分の1を瀬戸内海が占めている(瀬戸内海漁業調整事務所公表資料より)。

ここで育てられている海産物は牡蠣や海苔、ワカメなどの海藻類や、ブリ、マダイなど。中でも、牡蠣類の養殖は全国の75・3%を占め、瀬戸内海の特産品となっている。せとうちエリアを旅すると、いたるところで牡蠣の養殖筏を見ることができるだろう。さらに、都道府県別でみると広島県の牡蠣養殖は、養殖面積でも生産量でも2位以下を大きく引き離し、全国トップの座を守り続けている。なんと、むき身の牡蠣の生産量は日本全体の62・7%を占めるというから、まさに「牡蠣王国」なのである(広島市水産振興センター、2017年)。

そんな広島県の大崎上島で地下海水をくみ上げて、牡蠣や車海老の陸上養殖を手がけるファームスズキの代表、鈴木隆さんは「牡蠣は、その多くが水分のため、育った場所の“海の味”が味を決めるのです。生で食べるとその違いがよくわかります」と話す。つまり、同じ広島産の牡蠣でも、江田島湾と三津湾では味わいが異なるというわけだ。瀬戸内海には、広島のほかにも兵庫の室津や相生、岡山の日生や牛窓など、牡蠣の名産地がたくさんある。牡蠣スポットをめぐって、味くらべをするのも楽しいだろう。

もう一つ、多種多様な魚がすまう瀬戸内海は、見た目は湖のような波のない穏やかな内海に見えて、水面下では月の引力がもたらす「潮流」が超高速で流れる世界有数の潮流海域であることが特徴。海域の狭い鳴門海峡や来島海峡では「渦潮」ができることもあり、海上交通の難所といわれてきた。また、瀬戸内海の中央に位置する「しまなみ海道」の周辺海域は、潮の流れが早く、村上水軍が活躍したことでも知られる。

こうした「海の道」を通ったのは、地元漁師だけでなく、江戸から明治期にかけて大阪から瀬戸内を経て下関をまわり、山陰、北陸、北海道を結び物流の要を担った「北前船」や、幕府や参勤交代の船、琉球国王や朝鮮通信使の船などさまざま。

このように潮流が激しい瀬戸内海には「風待ち・潮待ち」と呼ばれる寄港地が点在し、雅な文化を育んだのだ。人々の往来の中で、塩づくりなどで財を得た豪商が誕生し、日本酒づくりも盛んになっていった。つまり、瀬戸内海が育んだのは、海産物だけでなく、人々の暮らしや文化そのものなのだ。せとうちの名物を口にしながら、そんな歴史にも思いを馳せたい。

せとうちの海の幸といえば……

しっかり詰まったミソとぷりぷりの身が特徴の車海老「とれ海老やん」

せとうちの海の幸といえば、何を思い浮かべるだろうか?牡蠣、穴子、海苔、海老、フグ、鯛……枚挙に暇がない。それが瀬戸内海なのだ。

きれいな地下海水で陸上養殖
「ファームスズキ」

「塩田熟成牡蠣 オイスターぼんぼん」は生食こそ美味しい

広島県大崎上島の地下20mから地下海水をくみ上げた養殖池で、牡蠣や車海老などを育てている。多くの生き物が共存する塩田跡の生態系を大切にし、環境に寄り添った池づくりをすることで、有機的なスタイルの養殖を可能にしている。塩田跡特有の植物プランクトンの働きで、健康に育った牡蠣や車海老の味わいは格別。JR西日本の「PROFISH プレミアムオーガニックフィッシュ」に認定されている。

ファームスズキ
ベイサイドキッチン タケハラポート
住所|広島県竹原市港町4-2-24
Tel|0846-24-6100(たけはら海の駅)
営業時間|ランチ11:30〜14:30(L.O.14:00)、ディナーは予約制(10名以上)
定休日|水・第3火曜(不定休)
www.farmsuzuki.jp

ファームスズキ ファーマーズキッチン
住所|広島県豊田郡大崎上島町東野垂水37-2
www.farmsuzuki.jp
※養殖場内の小さなイートインスペース ファーマーズキッチンは 団体様10名様以上から予約受付しております。
※養殖場見学については受付しておりません、ご了承をお願いいたします。

焼いて美味しい相生の牡蠣
「焼がき 大豊」

焼き炭と網を貸してくれるので、焼いて食べるだけ。肉や主食を持参する人も。11〜4月のシーズンは予約がベター

相生の牡蠣は、栄養が多い海域で育つため、種付けから約半年で食べられるサイズにまで成長する、いわゆる「一年牡蠣」。殻に対して身が大きいのが特徴で、縮みにくいので焼いて食べるのがおすすめだという。大豊は、牡蠣養殖業者が直営する食べ放題の焼き牡蠣店で、制限時間内食べ放題とあって、シーズン中は遠方から多くの人が訪れる。新鮮な牡蠣は調味料なしでも最高にいい塩梅。食材持ち込み可なのもうれしい。

焼がき 大豊
住所|兵庫県相生市相生5133-32
Tel|0791-22-6777
営業時間|10:00~16:30(L.O. 15:00)
定休日|火曜日※火曜日が祝日の場合は、翌日を振替で定休日
www.yakigakitaihou.com

漁協が運営する市場で海鮮三昧
日生の魚市場「五味の市」

日生の牡蠣は身が大きくて濃厚。シーズンは10月下旬〜2月頃まで。市場の近くに買った魚を焼いて食べられるBBQスペースもある

漁師町・日生にある市場。漁師のおかみさんたちが、その日瀬戸内海で水揚げした魚を威勢よく売りさばく姿が圧巻。手頃な価格で新鮮な魚介が買えると、週末には一般客や観光客が列をなす。特に牡蠣のシーズンがはじまると場内の活気はピークに。お土産コーナーには、その場で食べられる惣菜やお寿司もある。名物は牡蠣フライソフトクリーム。たまり醤油のしょっぱさと牡蠣フライのサクサクとした食感が、クリームの甘さに意外と合うのだ。

日生の魚市場「五味の市」
住所|岡山県備前市日生町日生801-8
Tel|0869-72-3655
営業時間|9:00〜16:00(完売次第、閉店)
定休日|毎週水曜日(祝日の場合は木曜日)
www.hinase.net/gominoiti

穴子の味の染みたごはんも絶品
「あなごめし うえの 宮島口本店」

蒸したり煮たりせず、穴子の脂だけでシンプルに焼きあげた
4代目の生家を改装した2階の「他人吉」では、コース料理も提供

穴子の好漁場だった広島・宮島で1901(明治34)年創業の老舗。穴子のアラで炊き込んだ醤油味のごはんに、ぎっしりと焼いた穴子を敷き詰めた「あなごめし」は、広島名物の駅弁としても有名だ。宮島口本店の食堂では、弁当とはひと味違った出来たてホカホカの「あなごめし」のほか、穴子の白焼きや地酒も楽しめる。同店のポリシーは穴子をシンプルに焼き上げること。美味しい穴子を仕入れているからこそのこだわりなのだ。

あなごめし うえの 宮島口本店
住所|広島県廿日市市宮島口1-5-11
Tel|0829-56-0006
営業時間|食堂10:00〜19:00、弁当|9:00〜19:00(いずれも水曜は18:00まで)
定休日|なし(年末年始はHPに)
www.anagomeshi.com

伝統の漁法や大漁祈願の舞を見学
「鞆の浦観光鯛網」

2020年5月1日〜31日、「潮待ちの港」として知られる広島県福山市の鞆の浦で、380年の歴史をもつ漁法「鯛網」が見学できる。樽太鼓と大漁節が響く中、大漁祈願の舞や出漁、伝統の鯛網が引かれる様子が披露される。

鞆の浦観光鯛網
開催場所|広島県福山市鞆町仙酔島田の浦
所用時間|約1時間20分
Tel|084-926-2649(福山観光コンベンション協会)
www.fukuyama-kanko.com/travel/taiami

創業150年以上の老舗の牡蠣養殖会社
「かなわ水産」

殻についた海中の付着物をナタできれいに取り除く作業。
ノロウイルスの存在しない広島県指定の清浄海域で牡蠣を養殖

広島県江田島市で1867(慶応3)年創業の老舗牡蠣養殖会社。牡蠣の種苗採取から自社工場でのむき身包装、冷凍・スチーム加工まで一貫して行っているので、最高品質の牡蠣を安心して味わえる。清浄海域の塩分濃度3.1%以上の海水でパックした生牡蠣は、酢牡蠣にするのはもちろん、加熱しても身が縮まないので天ぷらや鍋でも美味しい。生食できる牡蠣を塩漬けにしてつくった「かき醤」は贈り物としても喜ばれている。

 

クリアで上品な味わいのトラフグ
「ふぐ養殖 安藤建設」

生け簀には国定公園に指定されている仙崎港の沖から海水を引き込んでいる

安藤建設では、事業の多角経営化に伴って1985(昭和60)年から養殖事業を手がけている。トラフグの養殖は、生産技術が確立して間もない2005年からスタート。仙崎港の海底に70mのトンネルを掘って、生け簀に生活排水の少ない海水を引き込んだり、出荷半年前からフグに特別に配合したエサを与えたりと、健康で美味しいフグの養殖に取り組んでいる。こうして大切に育てられたフグは「大吟雅とらふく」のネーミングで、JR西日本の「PROFISHプレミアムオーガニックフィッシュ」に認定され、JR系列のホテルなどで提供されている。

 

牡蠣好き必見アイテム
牡蠣のポーチ付き ショルダーバッグ& 牡蠣ハンカチ

2枚セット

牡蠣愛が止まらない人は、こんなグッズはいかが? 牡蠣型の個性的なリバーシブルハンカチと牡蠣殻のショルダーバッグ&ポーチ。細部にまでこだわった再現性の高さが秀逸。

安芸灘とびしま海道を旅する

本州と島々を結ぶ安芸灘大橋は唯一の有料橋だが、海道エリア内の施設を1000円以上利用すると回数券と交換できる

瀬戸内海に浮かぶ島々を、庭園をわたる飛び石にみたてた「安芸灘とびしま海道」。4つの橋でつながる広島県の4つの島をドライブする。

歴史と文化が詰まった三之瀬地区
「下蒲刈島」

朝鮮通信使の展示館が見学できる下蒲刈島の「松濤園」

下蒲刈島の見どころは島の東部、三之瀬地区に集まる。瀬戸内海にふたつあった海の関所のひとつで、大名などが宿泊する本陣が構えられた。当時をしのばせる「松濤園」や「御番所跡」など数多くの史跡が残り、ゆったり散策するのにぴったりの場所だ。

輝く白砂と青い海、 シーカヤック体験も
「上蒲刈島」

400mにわたって白砂が広がる海水浴場「県民の浜」。桟敷席やビーチハウス、シャワー、売店も完備する

上蒲刈島にある県民の浜は、日本の渚百選に選ばれている海水浴場。宿泊所や天体観測施設、温泉も併設し、瀬戸内海の多島美を眺めながら心身ともに安らげる。

手つかずの豊かな自然が残る島
「豊島」

島の産業は漁業や農業が中心だ

瀬戸内の豊かな自然環境に恵まれた豊島は、古くから漁業、農業の町として知られ、特に「アビ」と呼ばれる鳥類を使ったアビ漁は江戸時代から伝統が引き継がれている。

潮待ち、風待ちの港町として栄えた
「大崎下島」

瀬戸内海航路の潮待ち、風待ちの天然の良港として賑わった大崎下島の御手洗地区には、茶屋や芝居小屋、船宿など明治、大正、昭和の趣のある建物と町並みが残っている。

安芸灘とびしま海道
Tel|0823-68-2211
(安芸灘とびしま海道連携推進協議会)
www.tobishima-kaido.net

江戸期の面影が残る御手洗地区の町並み

レモン栽培を通じて地域を元気にしたい
「ナオライ オーガニックレモンガーデン」

農薬、ワックス、防腐剤、化学肥料を一切使わない有機自然農法で育てたレモンからつくる「スパークリングレモン酒」には、酒づくりを通じて地域活性をしたいとう三宅さんの思いが詰まっている

崎下島の久比の畑や、島からさらにフェリーで約10分の三角島の畑で、オーガニックレモンを栽培しているナオライ株式会社の三宅紘一郎さん。多種多様な植物や昆虫が共生する畑は、誰でも手伝うことができる(要連絡)。「生産者と消費者の区別がない新しい生産モデルをつくりたい」と三宅さんは意気込む。

ナオライ オーガニックレモンガーデン
住所|広島県呉市豊町久比3960三角島
https://naorai.co/project/mikado

塩と酒のまち、竹原を歩く

広島県で瀬戸内海の沿岸のほぼ中央に位置する竹原は、平安時代に、京都下鴨神社の荘園として栄え「安芸の小京都」と称されている。

竹原の特産品を使ったオリジナル
竹を使ったコスメ「せとシリーズ」

竹の成分を国産のハーブにブレンドしたオイルやソープは、肌に優しく誰もが安心して使えるアイテム。自分用にもお土産にも最適。

築約100年の建物をホテルに再生
「NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町」

快適な空間にリノベーションしたラウンジ

2019年8月ニューオープン。3蔵の銘酒を味わえるレストランは、宿泊客以外も利用できる。ランチ2800円〜(税抜)要予約。

NIPPONIA HOTEL 竹原 製塩町
住所|広島県竹原市本町1-4-16
Tel|0120-210-289(VMG総合窓口、11:00〜20:00)
客室数|10室
料金|1泊2食付2万8000円〜(税・サ抜)※2名1室利用時の1名分料金
IN|15:00〜21:00
OUT|12:00
www.nipponia-takehara.com

暮らしとともに歴史を重ねた
たけはらの町並み保存地区

石畳の「本町通り」を中心に、いくつもの小路に格子窓や本瓦葺きの重厚感ある建物が軒をつらねる

江戸時代に製塩業で成した富で、酒造業も広がり隆盛を極めた町。「浜旦那」と呼ばれる塩田経営者たちが、財を投じた旧宅や庭園、寺院など随所に見ることができる。粋な意匠を探しながら歩くのも楽しい。今も多くの人が暮らしているのも特徴で、地元の人々によって町並みが維持されている。酒づくりは3軒の蔵が受け継ぐ。約310年続いた塩づくりを復活させ「たけはらの塩」を製造販売している。

再生させた木桶で醪を仕込む
「竹鶴酒造」

屋号「小笹屋」で1733(享保18)年創業。代々伝わる貴重な道具や資料が、主屋2階に保存される。自然の恵みを生かす酒づくりを継ぐ。

竹鶴酒造
住所|広島県竹原市本町3-10-29
Tel|0846-22-2021
※見学は不可。酒販は要問合せ。

醸すのは全量純米酒のみ
「藤井酒造」

1863(文久3)年創業。杉玉が目印の酒蔵交流館には、銘柄がずらりと並び試飲も可。酒造交流館内にある食事処で日本酒をゆっくり味わえる。

藤井酒造
住所|広島県竹原市本町3-4-14
Tel|0846-22-5158
営業時間|酒蔵交流館10:00〜17:00
定休日|毎週月曜日(祝日の場合は翌日)
※蔵内の「酒蔵そば処 たにざき」の営業時間、定休日は要問合せ(Tel:0846-22-7131)
www.fujiishuzou.com

独自酵母でほかにはない酒を
「中尾醸造」

1871(明治4)年創業。新たな技術や設備も積極的に取り入れる。研究開発を重ね生まれた蔵伝承のリンゴ酵母と、賀茂川の伏流水で酒を醸す。

中尾醸造
住所|広島県竹原市中央5-9-14
Tel|0846-22-2035
※見学は不可。酒販は要問合せ。
www.maboroshi.co.jp

ここは地中海!?絶品イタリアンを食す

「これからは、食べ手が動く時代」。牛窓に移転したリストランテに、遠方から瀬戸内を味わいにやって来る。

魚が料理の決め手に
「acca」

1日10名まで。おまかせコースのみ。陽が暮れる前に島が真っ赤に染まっていく景色も楽しんでほしいと林さんは言う。
牛窓オリーブ園へと続く丘に佇む

「イタリアで修業をした経験がある人なら、オリーブ畑に囲まれて料理ができることの幸せがわかるはず」と、出身地の東京・広尾からここ岡山・牛窓に移転してきたオーナーシェフの林冬青さんは言う。目の前は瀬戸内海、背後には牛窓オリーブ園の木々がかわいらしい実をつけている。毎朝、林さんが一番に赴くのは牛窓の高祖鮮魚店。築地で仕入れていたときには見たことがない魚も多く、雑魚でさえも美味しいことを高祖豊さんが日々、教えてくれる。「魚が決まらないと、何も決まらない」と語るほど、信頼を寄せる。海からの陽光を浴びながら、半袖短パンで仕込みができる解放感も、これまでの料理に好影響を与えているという。

栗のシュークリーム
ワタリガニのリゾ
オコゼのヴァポーレ

acca
住所|岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓496 牛窓国際交流ヴィラ内
Tel|090-7997-4586
営業時間|17:00〜18:30の間の一斉スタート(一回転のみ)
定休日|水曜、日曜(不定休あり)完全予約制

text: Yuki Inoue、Megumi Sasaki, Yumi Fukuda, Tomoko Honma photo: Yuri Yamasaki edit: Tomoko Honma map: ALTODCRAFT
2019年12月号 増刊「プレミアムせとうち案内」


≫しまなみ海道〜尾道をめぐる

≫酒づくりは米づくり。「月の桂」

≫トラフグの旨みを余すことなく味わって「最高級天然とらふぐちりセット」

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