acca<アッカ 岡山>瀬戸内海の絶景を望めるイタリアンレストラン【後編】
犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン
いまはまだスタートをしたばかり、それほど有名ではないけれど、私イチオシの“期待の星”を探して、ニッポンをめぐります!今回は、岡山県瀬戸内市にあるレストラン「acca(アッカ)」を前後編記事でご紹介します。
気がついたら日本の中の
〝イタリア〞に導かれていた
2010年春先から秋にかけて、「アッカ」は全面改装した。かねがね薪火で肉を焼いてみたいと考えていたシェフ。その夢をかなえたのか……と思っていたが、実はこの改装には、もうひとつ重大な理由があった。お母さんが介護を必要とする病になり、仕事をしながら介護できるよう改装したのだ。
ところが、しばらく経つと病気が進行するのを見て「東京ではやはり難しい。地方の病院で治療をしよう」と覚悟を決める。全国いろいろ探したが、たまたま岡山、さらにそこから1時間かかる牛窓を訪れた。
小さな山一面オリーブ園、眼下には瀬戸内海。温暖な気候と豊富な魚類、何より太陽の光がさんさんと降り注ぐ店内は第二の故郷「イタリア」に通じるものがあった。林シェフは即決、‘14年に新生「アッカ」が誕生した!
アクセスは不便にもかかわらず牛窓「アッカ」は広尾時代よりさらに予約の難易度が高まった。というのも林シェフ一人で料理をつくり、サービスをするから1日3組まで。魚や肉、野菜の仕入れに午前中を費やし、そしてお母さんの介護も行う。予約の電話も、限られた時間にしか出られない。それでも林シェフが牛窓を大層気に入った理由は「目の前の海から新鮮な魚がたくさん揚がってくる。それを地元の魚屋さんがきちんと処理してくれます」。朝捕った新鮮な魚を使える。鮮度がいいとあれこれ手を加えなくても十分美味しくなる。「カニ、エビ、野菜などはほぼ理想の状態で手に入ります」。イタリア料理に欠かせないオリーブオイルも、特別な料理には目の前の日本オリーブ園のエキストラバージンオイルを使用。牛と豚だけは長年使ってきた「中勢以」の熟成肉を使っている。
「母の体調も回復して落ち着いています。ここに来て本当によかった」。そしてさらに大きな変化があった。移転して2年後の2016年8月、シェフは加苗さんと結婚したのだ。加苗さんのおかげで、シェフは料理に没頭できるようになり、予約も以前より多く取れるようになった。何より、笑顔がすてきなマダムの存在は温かい。これはうれしい変化だが、料理そのものは大きく変わっていない。シェフは旬の素材を最高の状態で料理するのみ。
私が大好きなテレビ番組に「小さな村の物語イタリア」がある。番組では家族が心をひとつにして生きていくことの大切さをつづる。そして美味しい料理が人をつなぐというイタリア人の考え方。それが本当に豊かな人生なのだと教えられる。「アッカ」のテーブルでふと、その場面を思い出した。
accaの夜のコース
生このこの冷製パスタ
カキの焼リゾット
ヒラメのオーブン焼き
中勢以の熟成肉の薪焼き
ドルチェとコーヒー
オリーブとパンも美味しい
acca
住所|岡山県瀬戸内市牛窓町牛窓496牛窓国際交流ヴィラ内
Tel|090-7997-4586
営業時間|17:00~18:30スタート
定休日|日・水曜(不定休あり)
おまかせコース8000~9000円前後(仕入れる魚による)。税別。予約は電話で(なるべく10:00~12:00に)
text:Yumiko Inukai,photo:Muneaki Maeda
Discover Japan 2018年4月号『ニッポンの未来戦略。』
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