ガラス作家・花岡央
「ほかでは真似できないガラスを求めて」
岡山県・備前市で、鮮やかなガラスのうつわを日々制作する吹きガラス作家・花岡 央さん。備前焼で有名な備前市で生まれ育ったにもかかわらず、なぜ花岡さんはガラスの世界に進んだのか、そして色や文様が印象的なうつわはどのように生まれているのか。その秘密を知るべく、工房を訪ねました。
記事内で紹介した商品は渋谷パルコのDiscover Japan Lab.および公式オンラインショップにて数量限定販売します。
花岡 央(はなおか ひろい)
1982年、岡山県備前市生まれ。倉敷芸術科学大学ガラスコースにて小谷眞三氏に師事。卒業後、fresco(大阪)に入社し、チーフとしてfrescoブランド製品のデザイン・制作までを手掛ける。2013年に帰郷し、ギャラリー併設の吹きガラス工房「ヒロイグラススタジオ」を設立。色ガラスに丸みのある切り子模様を施したren(レン)、備前の米を溶け込ませた淡いブルーのGRICE(グライス)などを制作。
「結果がすぐ見えて、集中してひとつの作品に向き合える」
岡山県備前市、のどかな田園風景に建つ吹きガラス工房「ヒロイグラススタジオ」を訪れると、カラフルな色見本が吊るされた作業場で、花岡さんが額に汗をにじませながら溶解炉の中のガラスを見つめていた。
備前焼で知られる地で生まれ育ったが、岡山県内にある倉敷芸術科学大学では陶芸ではなくガラスコースを選んだ。
「吹きガラスは制作スパンが短く、つくり始めた翌日には手に取れる。結果がすぐに見えるので、次はこうしてみよう、とすぐに実践することで日を追うごとに自身の技術向上が実感できます。その上、2人がかりで呼吸を合わせて制作するところがスポーツに似ていると思います。集中して1つの作品に向き合えるのも自分に合っている。だから、ガラスコースを選びました」
「自分にしかつくれない作品を、故郷でつくりたい」
卒業後は、大阪にある工房「fresco(フレスコ)」に就職した花岡さん。自社ブランドのコンセプト作りやデザインなどの商品企画から、制作、販売までを一貫して経験し、チーフにまでのぼり詰めた後、独立を決意。自身が生まれ育った備前に吹きガラス工房を設立した。
まず制作したのは、豊富な色展開が目を引くren(レン)シリーズ。昔ながらの日本家屋の扉や窓に見られる連子(れんじ)と呼ばれる縦格子をモチーフにしていることが名前の由来で、スリット模様とカラフルな色合いが特徴。形状や切り口が丸みを帯びていて、手に取りやすい柔らかな印象がある。
色を焼き付けたり、削ったり、他の吹きガラスに比べて制作工程が多く手間がかかる。
「まずは覚えてもらうために、他ではなかなか真似できない作品をつくろうと思いました」
その次に生まれたのが、淡いブルーのGRICE(グライス)シリーズだ。
工房の周辺に広がる農業地帯が、旧閑谷学校の学校田であったという歴史ある地域であることから、備前の未熟米や藁などを炭化して発色剤を作り、ガラスに溶かし込むことで淡いブルーのガラスに仕上げた。
「洋服を選ぶように、うつわも気分で選んでもらえたら」
赤やブルーなど、renの鮮やかなカラーリングは食卓に並んでいるのを見るだけで元気になれる。ベージュなど落ち着きのある色は、和洋どちらにも使えるとあって料理好きな人に人気が高い。
「熱いものを入れると割れるのは、ガラスが極端な温度変化に弱いから。目安として40℃以上の温度差を避けるようにして、たとえば、ぬるま湯で温めたガラスのうつわに、熱々ではなく、ほんのり温かい肉じゃがを入れるといった使い方もできます」
GRICEは、淡いブルーが料理そのものを引き立て、透明な水や日本酒を入れても美味しそうに見える。
「実は、GRICEは工房前の田んぼで稲作をしている両親が売り物にならない未熟米を前に困っている様子を見て、お米を発色剤に使ったガラスがつくれないかと試行錯誤した結果、生まれた作品です。この備前の地で、地域に根ざしたガラスをつくり続けたいと思います」
renもGRICEも一つの作品が出来上がるまでひと手間もふた手間もかかるが、それだけに、ほかの作品にない味わいで日々の暮らしを彩るのだろう。
花岡 央さんのうつわを
オンラインで購入いただけます!
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渋谷パルコのDiscover Japan Lab.および公式オンラインショップにて、花岡 央さんの作品を販売中! ぜひ実際に手に取ってお楽しみください。
Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1 渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~20:00
定休日|なし
Instagram|@discoverjapan_lab
※うつわはすべて数量・期間限定販売
※営業時間の変更の場合がありますので、最新情報は渋谷PARCOの営業時間(https://shibuya.parco.jp)をご確認ください
Text: Akiko Yamashita photo:Shintaro Miyawaki, Simpei Fukazawa