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人とつながる、人と育む
福井の暮らし【後編】

2022.2.10
人とつながる、人と育む<br>福井の暮らし【後編】

壮麗な海と山が市内に凝縮され、高い幸福度を誇る福井。傍目から見ればこの地は宝の山だが、人は得てして身近なものの魅力に気づきにくい。謙虚で地元愛あふれる市民の姿をひも解けば、真に豊かで心地いい暮らしが見えてきた。

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福井に住みたくなる
4つのキーワード

油揚げ愛に餅文化など北陸3県の中でも独特な食文化をもつ背景や、全国トップクラスに輝く教育水準の高さにも注目。

日常の食卓から見える、福井の人々の信心深さ
福井に暮らすなら知っておきたいこと。まずは子育てについてだが、教育の質において福井の右に出る者はいない。その根底にあるのは格差や不公平感のない指導の在り方。授業づくりや指導方針の決定はもちろん、成績も複数の教員の目を通してつけられるため、学校全体で生徒を育成する基盤が出来上がっている。「福井の高い教育水準を都内で受けようと思うと、驚くほどコストがかかります」と言い切るのは、移住者の五十嵐さん。待機児童もゼロと、子育て世帯が移住を検討するための安心材料が福井には揃っている。

また福井が独自の食文化を築いてきた背景には仏教思想があり、「一乗谷朝倉氏遺跡」の西の山際には多くの寺院跡が見つかるなど、その歴史は戦国時代までさかのぼる。移住者の髙橋さんが「地元の人たちと一緒にいると、野菜一つひとつに魂が宿っているかのように感じます」と語るように、仏教は生活の一部として広く浸透しているのだ。

その証拠に福井市の一世帯あたりの「油揚げ・がんもどき」の購入額は、なんと58年連続日本一。信徒の催事には当時高級品だった油揚げ料理が添えられており、いつしかそれが一般家庭へと広まったのだが、同じく餅文化が盛んなことも稲作信仰がルーツ。12カ月の行事ごとに餅が存在するなど、信心深さが食文化にも表れている。

自然豊かな歴史・文化遺産
戦国の世において、朝倉氏が103年間にわたり治めた城下町跡。町並みがほぼ完全な姿で発掘されており、国の重要文化財・特別史跡・特別名勝に指定されている。

一乗谷朝倉氏遺跡
住所|福井県福井市城戸ノ内町
Tel|0776-41-2330(朝倉氏遺跡保存協会)
営業時間|見学自由、復原町並は9:00~17:00(入館16:30まで)
料金|復原町並入場料一般330円
http://fukuisan.jp/ja/asakura

福井藩主松平家の別邸。江戸初期から中期を代表する名園で、2019年には日本遺産にも認定。四季折々の佳景が広がり、春と秋にはお茶席が設けられることもある。

名勝 養浩館庭園
住所|福井県福井市宝永3-11-36
Tel|0776-20-5367(福井市文化振興課)
開園時間|9:00~17:00、3月1日~11月5日は~19:00(各入園は閉園の30分前まで)
入園料|一般220円
www.fukuisan.jp/ja/yokokan

みんな大好き越前がに!
福井といえば、雄のズワイガニである「越前がに」。実は地元では、漁期がわずか2カ月という雌の「セイコガニ」や、脱皮して間もない「水ガニ(ズボガニ)」のほうが親しまれている。

「きな粉×黒蜜」をたっぷりくぐらせるのが福井流のあべかわ餅!

餅は季節、行事ごとに食べるものです
市内に餅店が点在するなど、日常的に餅を食べる習慣がある。地域性の出る雑煮は、味噌で煮込んだ丸餅に具材は鰹節のみと、餅を味わうための潔いスタイルだ。

油揚げといえば、薄揚げではなく「厚揚げ」
スーパーでは棚一段を占めるほど油揚げが販売されているが、その消費量を考えるとうなずける。分厚い油揚げを甘辛く炊くのが福井流で、全国的に珍しい「中揚げ」は調理法を問わない万能選手。

働く女性に優しい食文化!
一家のだんらんに店のお総菜あり。

totoの海鮮丼 950円
toto baseの看板商品で、マグロ・いくら以外はその日に水揚げされた鮮魚を使用。コシヒカリ発祥の地である福井の米に合うよう、寿司酢は独自にブレンドしている

世相を一歩先行く、共働き世帯の時産術
1932年に世界初の人造絹糸(レーヨン)取引所が誕生するなど、福井を代表する繊維産業は、織物工場で働く女性たちの力によって支えられていた。戦後は性別役割分業が全国的には定着したが、福井はそのセオリーには当てはまらず、独自の道を切り開いている。なぜなら曽祖母の代から女性が働く姿を目の当たりにしてきたため、その光景が至極当然だからだ。

共働き世帯の割合を見ても、福井県は60.0%(※1)と全国トップ。それは市民の日々の食卓にも顕著に反映され、退勤時刻ともなれば店のお総菜は争奪戦。男女ともにフルタイムで働くからこそ、お総菜を利用した“時産”は昔から当然で、勤務先と自宅をつなぐ道中におのおの行きつけのお総菜店をもっている。事実「おふくろの味は?」と市役所職員にたずねると、「特に思い当たらない」といった答えが返ってきた。福井には古今東西、現代の世相にマッチしたワークライフバランスが歴史とともに根づいているようだ。

totoのブリ大根 650円
いいブリが揚がった日にしか並ばないという、料理長おすすめの味。中までしっかり味が染み込むよう、大根とブリをひと晩漬け込んだ、プロの味をご家庭で
totoのむつ(銀ダラ)の照焼き 600円
脂ののった銀ダラは、照焼きで食すのが一般的。ハレの日には欠かせない一品で、地元でつくられる魚に合う醤油を使い、プロの技で煮崩れないようつやよく仕上げた
店名は御魚(おとと)が由来です!

雑貨店のような洗練されたお総菜店
最高級の魚介類を扱う「越前水産」が運営。駅前の名店「らでん」の料理人によるレストランクオリティの味が、朝食から晩酌までシーンを問わず楽しめるとあって、老若男女から愛されている人気店。

toto base
住所|福井県福井市高木中央1-401
Tel|0776-52-1003
営業時間|10:30~19:00
定休日|水曜
https://totobase.jp

一品料理から鮮魚を使用した豪快な焼き物まで、福井の食卓を支えるお総菜たち。中でも手間のかかる揚げ物は人気が高く、市内の支出額は日本一(※2)を誇るなど総菜文化を物語っている

街中のスーパーでも、お総菜コーナーが充実!
広い店舗内の壁際はお総菜売り場で埋め尽くされているが、夕食どきになれば、仕事終わりの人々が男女問わず押し寄せる。スーパーをのぞけば、その土地の食文化が見えてくるからおもしろい。

ハーツ志比口
住所|福井県福井市志比口2-11-13
Tel|0776-52-2282
営業時間|9:30~22:00
定休日|なし
www.fukui.coop/hearts/shop/hearts_shihiguchi/

※1 2017年「就業構造基本調査」
※2 2019年「全国家計構造調査」

福井暮らしに興味をもったなら……

知り合いができれば、そこから人の輪が広がっていくところが福井のおもしろさ。移住を検討しているならば、まずは地域の人と触れ合うことが第一歩だ。

 福井市定住促進ポータルサイト

 

福井市にあるコワーキングスペース

画像提供:福井新聞社

福井新聞社が開設した、福井駅から徒歩2分の場所にあるワークスペース。新しいことをつくる人たちの多様な交流拠点として活用されるなど、福井の未来を考える場所でもある。

XSTAND(エックススタンド)
住所|福井県福井市中央1-9-24 福井中央ビル4F
営業時間|8:00~21:00
料金|ドロップイン利用1日1100円、登録料2200円
※支払いはクレジットカード決済のみ
https://xstand.square.site

中央公園の利活用や学生向けプラットフォームの構築など、クリエイターがプロジェクトを立ち上げ、価値創造を行う拠点として活用。「大手3丁目」という所在地から名づけられた。

OOTEⅢ(おおてサード)
住所|福井県福井市大手3-13-1 福井市企業局1F
Tel|0776-92-0456
営業時間|9:00~12:00、13:00~17:00
料金|ドロップイン1時間利用500円~
定休日|土・日曜
※貸切等で利用できない場合あり(要問合わせ)
https://chiiki-frontierlaboratory.com

福井市が総務省の「ふるさとテレワーク推進事業」を活用して開設した、日本海が眼前に広がるサテライトオフィス。越前海岸盛り上げ隊のスタッフも頻繁に利用している。

越廼サテライトオフィス
住所|福井県福井市居倉町43-25(越前水仙の里公園水仙ドーム内)
Tel|0776-20-5230
営業時間|9:00~17:00
料金|無料
https://koshino.localinfo.jp

宿泊&イベントスペース

古民家を改修した、農家レストラン兼民宿。暮らすように旅ができる場所であり、居間はイベントスペースとしても利用可。移住の前後で使える、幅広い用途が魅力だ。

杵と臼
住所|福井県福井市上東郷町22
Tel|0776-41-8220
営業時間|10:00~21:00
定休日|日・月曜(宿泊・イベントは可能)
https://kinetousu.net

福井市NEWS

福井市総務部 移住定住推進室 右から主事・増永匡浩さん、 室長・竹原純子さん、 副主幹・神月成悟さん

2024年春北陸新幹線がついに福井へ
東京~福井が2時間53分に!
100年に一度の大イベントとして盛り上がる新幹線開通。在来線への乗り換えが不要になるため、週末の仕事終わりに東京から福井へ出向くことも可能に。足を運ばなくてはわからない福井の魅力がぐっと近くなる。

福井駅周辺再開発の実施
「歩きたくなる」まちを目指す
新幹線開通に合わせ、着々と再開発が進んでいる福井駅西口周辺。ホテル・オフィス棟と住宅棟からなる複合施設を新設するなど、市街地周辺で利便性の高い都市の暮らしがかなう街づくりを構想している。

新幹線福井開業に向けて、福井市のロゴも刷新!
謙虚さが裏目に出てしまいアピールが苦手な福井。いまは自分から発信する時代と、福井のよさを知ってもらうべく、市民総出でPR活動を行う。

※福井市への移住に関する問い合わせは福井市移住定住推進室(Tel|0776-20-5514)へ。

 

福井市定住促進ポータルサイト

 
移住者座談会

 

text: Natsu Arai photo: Kenji Okazaki illustration: Fumiaki Muto
Discover Japan 2022年3月号「第2の地元のつくり方」

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