FOOD

イタリアの風土が溢れる「ピアッティ」
大熊健郎の東京名店探訪

2020.10.17
イタリアの風土が溢れる「ピアッティ」<br><small>大熊健郎の東京名店探訪</small>
今月の一品 パルマ産生ハム、トラヴェルセトレーゼ社パルミジャーノ・レッジャーノ、シチリア産ドライトマト。自慢のスライサーで薄く切る生ハムはとろけるような味わいの極上の逸品。100g1400円(税別)。シチリアの気候だからこそできるドライトマトは岡田さんがずっと扱い続けている商品。50g500円(税別)。パルミジャーノ・レッジャーノはざくざく割って贅沢にも塊で食べるのが正解。100g800円(税別)

「CLASKA Gallery & Shop “DO”」の大熊健郎さんが東京にある名店を訪ねる《東京名店探訪》。今回は、厳選された生ハムやチーズを取り扱い、イタリアの風土溢れたお店づくりをしているイタリア食材専門店「ピアッティ」を訪れました。

大熊健郎(おおくま・たけお)
「CLASKA Gallery&Shop “Do”」ディレクター。国内外、有名無名問わずのもの好き、店好き、買い物好き。インテリアショップ「イデー」のバイヤー&商品企画、「翼の王国」編集部を経て現職
www.claska.com

岡田幸司さん
ゼネコンで主に構造設計を担当。新婚旅行で訪れたイタリアに魅せられ、まずは直輸入したドライトマトの通販から事業をスタート。現在に至る

いい店というのはなんとなく店外にまでそれを予感させる雰囲気が出ているものである。それは老舗感があるとか、しゃれた外観であるといったこととはまた違う、それこそ内側から醸し出ているオーラのようなものと言えばいいだろうか。

以前住んでいた自宅の近所を散歩していたときに出合ったこの店もそう。ピアッティは厳選されたパルマ産の生ハムやシチリアのドライトマト、チーズなど扱うイタリア食材専門店。通りがかりに明るく豊かなイタリアの風土があふれ出ているような気がした直感は間違っていなかった。

オーナーの岡田幸司さんの経歴は少し変わっている。前職はなんとゼネコンで構造設計の仕事をしていたという。ただ岡田さんにはイタリアの建築や文化への関心からいつか現地で暮らしたいという思いがあった。そしてその思いを実現させたのが1996年。休職し、インターンシップを利用してたまたま派遣されたシチリアで1年間のホームステイを経験した。そこでの体験が後に岡田さんの運命を変えることになる。

「地元の食材を使い、振る舞われた家庭料理がとにかく美味しかった。まさに地産地消の文化が息づいていて、生のイタリアとの出合いを感じました。帰国後も何かイタリアとつながることができないかと思い続けていました」

食材以外にもチーズカッターやエプロン、クロス類も並ぶ。「チーズは切るんじゃなくて割るものだよ」と岡田さん自慢のチーズナイフを見せてくれた

いったんは元の仕事に戻ったものの、イタリアへの思いは募るばかり。でも一番身体に残っていたのが食べ物だった。あるドライトマトを求めて再びシチリアを訪ねたのがきっかけとなり、2003年に事業をスタート。ネット販売やイベント出店を中心に活動を続ける中で知り合った人との出会いや支援にも恵まれ、’09年、現在の実店舗をオープンした。

岡田さんは言う。「いま、食品の多くが工業製品化されていますよね。そうではなくて食べ物を本来ある状態のまま、フレッシュな味や香りを感じられる本来の姿で伝えたい。スーパーで売っているものに比べれば確かに贅沢品かもしれません。でもそういう思いに共感してくれる方もきっといると思ってやっています」。

取材中、パルミジャーノ・レッジャーノを割って出していただいた。その塊を口に入れると濃厚な香りと優しくふくよかな味わいが一気に口に広がった。栄養豊富な牧草を食べて牛の乳と塩だけでつくったというシンプルなパルミジャーノ。ああ、豊かさとはこういうことなのだろう。

黄色い外壁と緑のオーニングがイタリア風情を醸し出す建物は通りでもひと際目立つ存在

ピアッティ
住所|東京都目黒区駒場4-2-17 清水ビル1F
Tel|03-3468-6542
営業時間|11:00~20:00
定休日|月・火曜(祝日の場合は営業)

photo: Atsushi Yamahira
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