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クラシック音楽の聖地「名曲喫茶ライオン」
大熊健郎の東京名店探訪

2020.7.30
クラシック音楽の聖地「名曲喫茶ライオン」<br>大熊健郎の東京名店探訪
造作家具にぴったりと収まるレコード。昔は歌謡曲を流していたところ、お客の希望がきっかけでクラシックを流すように

「CLASKA Gallery & Shop “DO”」の大熊健郎さんが東京にある名店を訪ねる《東京名店探訪》。今回は渋谷にあるクラシック音楽愛好家たちの憩いの場「名曲喫茶ライオン」を訪れました。

大熊健郎(おおくま・たけお)
「CLASKA Gallery&Shop “Do”」 ディレクター。国内外、有名無名問わずのもの好き、店好き、買い物好き。インテリアショップ「イデー」のバイヤー&商品企画、「翼の王国」編集部を経て現職。
www.claska.com

道玄坂路地裏、上り坂の途中にそのレトロな佇まいの建物がある

クラシック音楽を聴くようになったのは高校生のとき。偶然ラジオから流れてきたドビュッシーのピアノ曲に突然夢見心地な気分を味わったのだ。なんだか自分と音楽と時間が一体になった気がしたのである。

以来専らクラシックを愛聴しているのだが、世の中的にはオジサンやマニアの世界、あるいはスノッブな趣味だと思われがち。でも実は興味はあるけどきっかけがつかめないと感じている人も多いのではないだろうか。そんな人にこそぜひ足を運んでもらいたい名店がある。

渋谷の道玄坂を上ったさらにその奥、渋谷きってのディープなエリアともいえる場所に「名曲喫茶ライオン」はある。創業は1926(昭和元)年。建物のレトロな外観もさることながら、ほの暗い店内に広がる江戸川乱歩の世界さながらの空間に驚く人も少なくないだろう。

柱や壁の凝った装飾、中央にそびえる特注の巨大4チャンネルスピーカー、スピーカーに向かって椅子がいっせいに並ぶ風景。ここはいわばクラシック音楽に祈りを捧げる教会である。

初代が自ら彫った喫茶ライオンのアイコン

「創業者の山寺弥之助さんはもともと会津若松の造り酒屋の御曹司でとにかく趣味人。建物の内装やデザインもすべて自分でこなす凝り性だったの」と教えてくれたのは御年85歳になるという3代目店長の石原圭子さん。

特に昭和30、40年代は3階建ての建物が連日客で一杯になるほど大盛況で接客にてんてこ舞いだったという。いまでもほぼ毎日、40年近く通い続けている常連の方もいるそうだ。

ベートーベン弦楽四重奏曲14番
幼少期からピアノを習い、クラシックに慣れ親しむ大熊さんが選んだ一枚。パイオニアの大音響で店内はまるでコンサート会場さながら。スピーカーの前に鎮座するベートーベンもお忘れなく

そもそも名曲喫茶というのはどういうシステムなのか気になる方もおられよう。ライオンの場合、毎日15時と19時に定時プログラムと称して決められた楽曲を月替わりに流している。それ以外はお客さんのリクエストタイム。

チャージのようなものはなく、ドリンク代さえ払えば何時間でも楽しむことができる。音楽を楽しむための場所なので大声でしゃべるのは厳禁だが、スピーカーから離れた奥の席でなら商談もできるという。電源タップがある席もあり、パソコンで仕事をしているお客さんもいる。意外と自由なのではじめてでも心配は無用だ。

イギリス仕込みの濃厚なコーヒーをいただきながらベートーベンの弦楽四重奏曲を聴かせてもらった。静謐な空間の中、最高の音質で好きな音楽を味わえる喜び。これを贅沢と言わず何と言おう。

名曲喫茶ライオン
住所|東京都渋谷区道玄坂2-19-13
Tel|03-3461-6858
営業時間|11:00〜22:30(L.O.22:20)
定休日|なし

photo : Atsushi Yamahira
2019年4月号 特集「ニッポンの新たな時代、どうつくる?」


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