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「ウシマル」千葉の恵みが詰まった地産地消レストラン【前編】
犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン

2021.5.14
「ウシマル」千葉の恵みが詰まった地産地消レストラン【前編】<br><small>犬養裕美子のディスカバー ベスト・レストラン</small>

どんな小さな店でも、どんな辺鄙な場所でも、『ホンモノ』であれば、必ず人は引き寄せられる。今月も強烈な一店に出合いました!今回は、千葉県山武市にあるレストラン「Ushimaru(ウシマル)」について、前後編記事でご紹介します。

犬養 裕美子(いぬかい・ゆみこ)
東京を中心に世界のレストラン事情を最前線で取材する。新しい店はもちろん、実力派シェフたちの世界での活躍もレポート。また、日本国内各地にアンテナを張り、料理や食文化を取材。農林水産省表彰制度「料理マスターズ」審査員

打矢 健(うちや・けん)
1977年生まれ、新潟県出身。調理師学校卒業後、東京都内で修業。イタリアン、ジビエを専門とするフレンチ、素材にこだわるイタリアンなどを経て、素材のある場所で仕事をしたいと長野県のレストランで1年働く。2008年に「ウシマル」のシェフに就任

シェフにとって千葉県は
素材の宝庫

東京という巨大なマーケットに隣接しているため、千葉は素材の供給地というイメージが強い。農業産出額全国4位、漁獲量全国第19位(ともに平成26年度)という数字がそれを証明している。もちろん生産量だけでなく素材の品質のよさも注目されている。料理人のリクエストにこたえて野菜をつくり収穫、配送の時間をきちんと計算して届ける流通業者も出てきた。一方、そんな魅力的な素材が揃うならと、千葉県を仕事の場にする料理人も増えている。千葉県山武市にあるイタリア料理店「ウシマル」の打矢健シェフは、そんな先駆者の一人。「ウシマル」は2000年に鉄板焼きの店としてスタートしたが、新しく打矢シェフを迎えるのを機に、〝地産地消〞をベースにしたイタリアンへと方向転換。シェフはできる限り生産者に会い、野菜、魚、肉、さまざまな素材を使うことにした。少しずつその料理が評判になり、東京からも訪れるお客が増えていった。そして10年、なんと食べログで2年連続「ブロンズ賞」を受賞。地元のお客には見慣れた素材を思いもよらぬ料理に変身させる。東京からのお客には、珍しい千葉産素材が洗練された料理で楽しめる。この両輪が揃って「ウシマル」は評価を得たのだ。

千葉ならではの素材
きのこ

シェフが採ってきたきのこ。左から赤山とり茸、山どり茸もどき、あい茸、アンズ茸。手前右は自家菜園のズッキーニの花。

外房の九十九里浜で捕れる天然鰻。かなり大きな身を炭火で焼く。シェフは水分を吹きかける独自の焼き方を考案。

カエル

初夏の田んぼから聞こえてくるのはカエルの声。食用カエルはあっさりとして上品な味わい。

ジャージーの雄仔牛を肥育生産者の元で18ヶ月育て、その後解体。首から肩のロース肉は自社熟成。

シェフの仕事を誇る素材

粒状、粉状、パリパリの結晶状など。かたちによって使い方も違う

料理の基本の基本。味つけに欠かせない塩を、打矢シェフは自分でつくる。九十九里の海水を大鍋で沸かして、時間をかけて塩分だけに。精製しないので丸い味。

 

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Ushimaru(ウシマル)
住所|千葉県山武市松尾町木刀1307-2
Tel|0479-86-1222
営業時間|12:00~14:00(L.O.)、18:00~21:30(L.O.)
定休日|水曜、第2火曜、木曜は昼休
ランチ3800円、1万
円、ディナー6000円、1万円(土・日曜、祝日は昼夜とも6000円、1万円。税・サービス料10%別。8月11~15日は問い合わせを)

text:Yumiko Inukai,photo:Muneaki Maeda
Discover Japan 2018年8月号『あの憧れの楽園へ』

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