「ヤッホーブルーイング」
ビールづくりはチームづくり
「よなよなエール」を生み出した軽井沢発のクラフトビールメーカー「ヤッホーブルーイング」。《軽井沢発、ヤッホーブルーイングの躍進》では、その歴史やビールづくりへの想いなどを全3回にわたって深掘りしていきます。第1回はチームを大事にするヤッホーのビールスピリットに迫りました。
日本のビール文化に
バラエティを提供したい
ビール好きなら、いまや知らない人はいない「よなよなエール」。この看板製品を筆頭に、数々のヒット製品を生み出してきたのが、軽井沢にある「ヤッホーブルーイング」だ。
始動したのは、1997年のこと。当時、日本に流通しているビールはラガータイプが大半だったため、“日本のビール文化にバラエティを提供し、お客さまにささやかな幸せをお届けする”ことを目標とした。それから20年が経ち、現在のクラフトビールブームの先頭に立つ同社だが、知名度が上がった実感はあるのだろうか?
「社員が桁違いに増えたというくらいで……、外からの見る目は変わったのかもしれませんが、ビールづくりへの信念は昔から変わっていないですね」と、醸造ユニットディレクターの森田さん。「むしろ、有名になったことでつまらなくなったと思われたくないので、できるだけニッチなほうを選ぶようにしています(笑)。私たちは万人受けを狙うのではなく、一人でも〝大ファンになってくれる〟ビールをつくりたいんですよ」。
確かに、新製品を出すときにも攻めの姿勢を崩さない。味はもちろん、ネーミングやデザインに至るまで。それは、原料や製法へのこだわりがあってこそ。同社のビールづくりの3本柱は、「ホップの使い方」、「ビールのバランス」、「クリーンさ」だという。確かに飲んでみると、嫌な苦みやエグみのない、飲み疲れしないビールをつくっていることがわかる。
ずばり「ビールづくりとは?」と問うと、森田さんは「チームづくり」と断言する。積み重ねたノウハウをチームで共有し、皆の意見を取り入れてつくっていく。新作ビールのレシピもコンペ方式で、若い社員にもチャンスがある。そのため、社員自ら積極的に勉強する文化が、会社に根づいているのだ。
組織の基盤ができれば、その意志は人が入れ替わっても継承されていく。新たな市場を創出し、全国的にメジャーになりながらも、商品づくりがブレないマインドは、ここに由来するのかもしれない。
ビール文化の盛んな海外への輸出など、さらなる展開を見せているが、今後の展望をこう語る。
「2020年までに、日本のビール業界のシェア1%を目指しています。この業界は2兆円市場なので、1%でも200億円。これは金額の問題ではなく、影響度の高い存在になりたいということ。バラエティあるビールの文化を、日本の消費者に味わって、知っていただきたい。『どのビールを買おうか』という選択肢にクラフトビールが当たり前のように入り、買いたいときに手軽に買える。そうなることが私たちの目標です」。
ヤッホーブルーイングのビールができるまで
①麦芽粉砕・糖化
粉砕した麦芽(グリスト)にお湯を混ぜ合わせた「マッシュ」という状態。この釜の中でデンプンを糖に変えていく。
②濾過・煮沸
麦殻を濾過槽で取り除いたら、きれいな麦汁を煮沸釜に移して煮沸。そのあとにホップを入れ、香りや苦みをつける。基本的に数種類のホップをブレンドする。
③発酵
ワールプールで麦汁を澄まし、冷却したら発酵タンクへ。仕込んだ麦汁を一次発酵タンクで2日程度発酵させたら、二次発酵タンクに移し2週間程度発酵させる。密閉により圧力がかかり、二酸化炭素が溶け込む。毎日、温度・圧力・糖度・PH値を調べて記録する。
④熟成
上は珍しい横置きの熟成タンク。ビールと酵母が沈殿しやすく、酵母への負担も減るので熟成にもよいという。左は一部がガラス張りになっており、酵母を見られるのが森田さんのお気に入り。
⑤充填
完成したビールを缶やビン、たる製品へ充填していく。量は日によって異なるが、平均して一日2000ケース(5万缶)程度を詰めている。
⑥トライアングルテスト
ロットの異なるビールをひとつだけ混ぜて、その差異の有無を確認するテスト。ロットによる味の差をなくし、安定供給できるよう努めている。
ヤッホーブルーイング
https://yohobrewing.com/
text:Chihiro Kurimoto photo:Yuichi Noguchi
2016年別冊 「美味しいクラフトビールの本」
《軽井沢発、ヤッホーブルーイングの躍進》
1|ビールづくりはチームづくり
2|バラエティ豊かな個性派ビールたち
3|ファンをつくるさまざまな活動