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吉金菓子舗「かすり羊羹」
福田里香の民芸お菓子巡礼

2020.6.29
吉金菓子舗「かすり羊羹」<br>福田里香の民芸お菓子巡礼

民芸とお菓子の甘い関係をひも解いていく、お菓子研究家・福田里香さんの《民芸お菓子巡礼》。今回は地元に寄り添う菓子づくりが特徴の、吉金菓子舗の「かすり羊羹」を紹介する。

福田里香(ふくだ・りか)
お菓子研究家。書籍や雑誌を中心に活躍する。8年間にわたり続けている本連載をまとめた書籍『民芸お菓子』が小社より発売中

久留米絣を手織りする版画が包装紙。藍地に白抜きの絵柄はまるで絣のよう

福岡県久留米市の「吉金菓子舗」は、以前にもこの連載で取り上げた和菓子店です。今回はもうひとつ、民藝品にちなんだお菓子を紹介します。それは地元に古くから伝わる伝統織物「久留米絣」をモチーフにした「かすり羊羹」です。

柳宗悦は名著『手仕事の日本』で、筑前(福岡)の博多織を高く評価した文に続き「九州の織物ではもう一つぜひ忘れてはならないものがあります。それは「久留米絣」でありまして、おそらく日本のどの国の人も、これで着物を拵えたでありましょう。」と褒めたたえています。そう、久留米絣は当時、日本人の普段着を一手に担っていた木綿織物なのです。まさに民藝。

「久留米名産の栞」には「水天宮御守菓子」の文字と井桁柄と宮司さまの意匠。1本1188円

吉金菓子舗の「かすり羊羹」は、小豆の風味を生かした棹物で、歯切れのよい上品な甘さ。お茶請けにぴったりです。切り分けるとこしあんの生地の中に、久留米絣の代表的な柄のひとつ「雪ん子紋様」が飛ぶというしゃれた意匠。しかも包装は「井桁紋様」の反物を模していて、側面にはうず巻き模様まで。なんてかわいいんでしょう。

吉金菓子舗
住所|福岡県久留米市日吉町12-28
Tel|0942-32-5827
営業時間|8:30〜18:30
定休日|日曜不定休

文=福田里香 写真=馬場わかな
2020年6月号 特集「おうち時間。」


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