《市原湖畔美術館》
千葉県一の貯水面積を誇る高滝湖を眺めながら、現代アートを鑑賞
旅の機運が高まりつつあるいま、おすすめしたいのがアート×自然で非日常を体験できる旅。自然豊かな場所に建つ美術館は、アート作品だけではなく建築、ロケーションからも感性を刺激してくれる。
千葉県市原市にある「市原湖畔美術館」は、県内最大の貯水面積を誇る高滝湖のほとりに建つ、自然豊かな美術館だ。ここではどんな体験ができるのか、ひも解いていこう。
千葉県一の貯水面積を誇る「高滝湖」
1990年に完成した高滝ダムによって作られた人造湖、高滝湖。湖畔には展望テラスなどの広場が各所にあり、市原湖畔美術館をはじめ、高滝神社、高滝ダム記念館などの観光スポットが点在し、歴史と文化が織りなす市民の憩いの場となっている。美術館に隣接した黒い巨大な構築物は、明治期に活躍した藤原式揚水機を模したもの。養老川流域は川による侵食が大きく川面と丘陵上の高低差があったため、このような灌漑揚水機が活躍した。
ユニークな建築構造にも注目!
豊かな自然に囲まれた美術館
潤沢な水と緑に囲まれ、自然豊かな地に建つ市原湖畔美術館。1995年に開館した観光・文化施設「市原市水と彫刻の丘」のリニューアルにより、市原市の市制施行50周年を記念して2013年に誕生。「里山の地に足でしっかり立ち、眼は広く世界を眺める」をテーマに掲げている。
館長を務めるのは、ガウディ・ブームの下地をつくった「アントニ・ガウディ展」や米軍基地跡地をアートの街に変えた「ファーレ立川アートプロジェクト」などをプロデュースし、「房総里山芸術祭いちはらアート×ミックス」、「大地の芸術祭越後妻有アートトリエンナーレ」、「瀬戸内国際芸術祭」などの総合ディレクターも務める、アートディレクター・北川フラムさん。
建物は、前身施設からリニューアルするタイミングでリノベーション。既存建物の仕上材をすべて剥がしてコンクリートの構造体だけを残し、そこにアートウォールと名付けたスチール折板の新しい壁を縫うように挿入して、展示室やラウンジ、ホールなどをつくりだしている。もとあったスロープや階段による回遊性の高いユニークな骨格を生かし、建物内外を連続的に巡れるように仕上げられた。
リノベーションを手掛けたのは、金沢美術工芸大学や美波町医療保健センターをはじめ、住宅や医療福祉施設、公共施設など幅広い分野で活躍する川口有子(かわぐちなおこ)さんと鄭仁愉(てい じんゆ)さん2名の建築家によるカワグチテイ建築計画。
収蔵作品は、銅版画家・深沢幸雄(ふかざわゆきお)をはじめ、市原市ゆかりの芸術家の作品が中心。コレクションの中から年に4回程度展示を入れ替えて常設展示される。企画展は現代アート作品を中心に行われている。
深沢幸雄(1924~2017)
日本を代表する版画家。東京美術学校(現・東京藝術大学)を卒業後、妻の実家がある市原市鶴舞に移りアトリエを構える。1955年に独学で銅版画に着手して以降、多くの技法を開拓し、幾度かその作風を変化させながらも、一貫して「人間」をテーマに制作。1300点を超える作品を発表した。紫綬褒章、アギラ・アステカ受賞。ニューヨーク近代美術館(MoMA)、ボルティモア美術館、メキシコ国立版画美術館、ケルン文化会館、ウフィツィ美術館、チェコ国立近代美術館など国内外の美術館に作品収蔵。市原湖畔美術館には銅版画、ガラス絵、パステル画、書など約500点を収蔵。
地域に根差したアクティビティも
同館では首都圏から車で約1時間というアクセスと、高滝湖畔という絶好のロケーションを生かし、アートだけではなく屋内外で楽しめるさまざまなアクティビティを展開している。美術館前の芝生広場でテントやパラソルを広げて自然を満喫する「ピクニックDAY」やアーティストを招いたワークショップなど、地域や子どもに開かれた取り組みを通して、市原市が掲げる「アートによる地域づくり」の中核を担うユニークな美術館として活動している。
施設紹介
作品紹介
同館は房総の里山に建つ小さな美術館ながら、世界を見据えたを大きな目標を掲げている。地域に根ざし、子ども大人も楽しめ、新鮮な体験ができる“首都圏のオアシス”へ、ハイキング気分で訪れてみてはいかがだろうか。
市原湖畔美術館
住所|千葉県市原市不入75-1
Tel|0436-98-1525
時間|平日10:00~17:00、土曜・祝前日9:30~19:00、日曜・祝日9:30~18:00 ※いずれも入館は閉館30分前まで
休館日|月曜(祝休日の場合は翌平日)、年末年始
料金|展覧会により異なる
アクセス|JR内房線「五井駅」から小湊鉄道「高滝駅」下車 徒歩約20分
https://lsm-ichihara.jp
photo=Tadashi Endo(常設展示室、『凍れる歩廊:深沢幸雄』、ピクニックDAYは異なる)