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「Sghr スガハラ」
ガラス職人たちが変幻自在に生み出す、究極のタンブラー【前編】

2021.12.15
「Sghr スガハラ」<br>ガラス職人たちが変幻自在に生み出す、究極のタンブラー【前編】
軽さ薄さに徹底的にこだわった、スガハラの定番タンブラー「フィフティーズ」。数分前までるつぼで水飴状に溶けていたガラスが、秀美なかたちに姿を変えた

時は1970年代。多くのガラス製造企業が価格競争に巻き込まれていく中、千葉県山武郡九十九里町の「菅原工芸硝子」は、職人主体のブランド開発へとかじを切ることで生き残りを懸けた。名品誕生の背景に職人あり。その自由な発想から紡ぎ出されたタンブラーの製造現場に迫る。

手作業で一定のかたちを量産。
これぞ職人技の極み

右から)瀧澤慎仁、秋山光男、多部田雄一
撮影時は3人の職人によるチームだったが基本は4人体制で製造。製造工程を分担することで、1時間数十個ものタンブラーが生まれる

「Sghr スガハラ」のブランドで知られる菅原工芸硝子。中でもガラス特有の繊細さと小気味よい口当たりをもたらすタンブラー「フィフティーズ」は名品と呼ぶにふさわしく、1950年代に世界を席巻したシンプルモダンを踏襲したことから名づけられた。つるりとした手触りとその意匠から、「どこが手づくりなのか」とたずねる人が後を絶たないのもうなずける。

スガハラはいまでこそ多彩なプロダクトを展開するブランドだが、設立当初は問屋からの受注生産を担う工房のひとつに過ぎなかった。だが自主開発への転機となったのは、オイルショックによる受注減。1974年に職人を中心とした「開発研究会」を発足させ自社ブランドを設立したところ、ほどなくしてヒット作に恵まれたのだ。

「スガハラの魅力は、個性の集まりから生まれる製品の多様さやおもしろさですかね」と、この道24年の職人である秋山光男さん。確かに炉の周囲で作業に勤しむ職人を見渡すと、いかにもといった屈強な青年に、ベテランとおぼしき年配者。さらには竿と変わらないほどの背丈の女性と、工房内はダイバーシティ。そんな職人たちの個性を“暮らしで使えるもの”に落とし込むことが、スガハラそのものなのだ。

流れるような動きと
職人の勘が交じり合う現場

季節の移ろいを感じる豊かな房総の地は、職人の創作意欲をかき立てるのかもしれない。名が知れた現在も社内にデザイナーは一人も在籍しておらず、デザイン部門もない。アイデアの源泉は日々対峙するガラスから生み出され、時には気泡といった製造工程における欠点や失敗を逆手に取り、新作のデザインに落とし込むこともあるという。

加えて菅原工芸硝子ではメーカーでありながら職人の創作活動のバックアップも行っており、工房に併設されたファクトリーショップでは、休憩時間や休日に編み出した職人個々の作品も展示販売されている。「天然の素材を人間が扱うため、同じような出来映えに見えても微妙に違っているんです。50年以上携わる大ベテランの職人でも、日々探求ですよ」と、この作家活動が回り回ってスガハラのデザインに帰結することも珍しくはない。

この日の午前中、秋山さんのチームでは多部田さんがるつぼからガラスを巻き取り、秋山さんが成形。そして瀧澤さんが竿から製品を切り離すといった工程をひたすら繰り返しフィフティーズを製造していたが、休憩を挟んだ午後には別製品の製造に移るようで、型の交換が行われていた。チーム体制によるシステマチックな分業とアナログな職人技が絶妙に融合した現場。だからこそ量産がかなうのだが、息の微妙なコントロールひとつで均一な成形を行うからこそ、その日の“ガラスの流れ”やチームを組む人の“癖”も大きく関係するという。

「木工や金属などと違い、ガラスには直接手で触れない難しさがあります。今日は大柄な多部田くんがガラスを巻いていましたが、これが女性の職人が巻いてきたものだと、息の入りやすさが割と違うんです。息の量を調節するんですが、温度が下がると固まってしまうので悩んではいられない。経験がものを言う世界ですが、実はわかったようなフリをしているだけかも……」と笑う秋山さんは、フィフティーズと並んで人気を誇るビールグラス「ポウサ」の生みの親。飾らないけれども、優しげで奥深い。そんなポウサの意匠と秋山さんの人柄は、どこか似ているのかもしれない。

4000種をも超えるスガハラ製品の一部。どれもが職人の声と腕から生まれた意匠であり、型を併用することで規格を揃えている。手にするとハンドメイドの心地よい“ゆらぎ”が伝わってくるようだ

 

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Sghr スガハラのうつわは
オンラインで購入いただけます!

渋谷パルコのDiscover Japan Lab.および公式オンラインショップにて、Sghr スガハラを販売中! ぜひ実際に手に取ってお楽しみください。

 

 

 

Sghr スガハラの作品一覧

text: Natsu Arai photo: Yuko chiba
Discover Japan 2021年12月号「ストーリーのある贈り物」


 

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