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長崎《邦久庵》
|実際に見に行ける名建築家の自邸

2026.5.4
長崎《邦久庵》<br><small>|実際に見に行ける名建築家の自邸</small>

建築界の巨匠たちが自ら設計し暮らした邸宅から見えてくる、快適さへの工夫とは。今回、「日本設計事務所」を設立し、高層建築やハウステンボスの設計を行った建築家・池田武邦さんの自邸「邦久庵ほうきゅうあん」をご紹介する。

池田武邦(いけだ たけくに)
1924-2022
1967年、「日本設計事務所」を設立。霞が関ビルを皮切りに次々と高層建築を手掛ける。50歳の頃から超高層ビルの建設に疑問を抱き、「ハウステンボス」などの設計を通して自然との調和を訴えた。

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長崎の土に還る地産地消のすみか

日本の伝統×自然を愉しめる設計
大村湾に浮かぶ邦久庵。茅葺屋根の葺き替えを通して伝統技術が継承されていく

日本初の超高層ビル「霞が関ビル」をはじめ、高度経済成長期の超高層建築を牽引した池田武邦。長崎・大村湾のほとり、「琵琶ノ首鼻」と呼ばれる小さな岬に設計された終のすみかが「邦久庵」だ。ほぼすべて九州の材だけで、釘を使わない伝統工法で構成されている。自然の一部としてふさわしい建築の在り方を追求し、目指したのは「土に還る」建築。

茅葺屋根を実際に間近で見ることができる2階の書斎。窓からは池田が愛した裏山や大村湾を眺められ、季節や時間の移ろいを肌で感じられる

そのシンボルといえる茅葺屋根は、断熱性・調湿性に優れ、葺き替えの技術を後世に伝承する場としても機能している。1階は囲炉裏のある広間と台所、畳の寝室、隠れ家のような2階は書斎といった簡素なつくり。

玄関であり、セカンドリビングでもあるデッキは真西に向けてつくられ、春分の日、秋分の日にはちょうど正面に夕陽が沈む

西側、大村湾に面したデッキからの眺めは素晴らしく、池田が好んで過ごしたという。南側は小さな裏山に寄り添うようにして台風から守られ、まさに自然と共生する庵といえる。

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波の穏やかな大村湾だからこそ、海辺ぎりぎりに建設することが可能に。東西にデッキが設けられ、心地よい風が吹き抜ける

〈施設Data〉
公開日|不定期に一般公開を開催
料金|公開イベントによる
www.hokyuann.com

〈建築Data〉
住所|長崎県西海市西彼町風早郷1424-2
竣工|2001年
設計|池田武邦
施工|志田建築
建築面積|106.5㎡
延床面積|150.0㎡
構造|木造2階建

実際に見に行ける名建築家の自邸
01|東京《前川國男邸》
02|長崎《邦久庵》

text: Aya Honjo
2026年3月号「訪ねる建築 暮らす建築」

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