石川・かほく市《KAJI FACTORY PARK》
繊維を未来へ紡ぐクラフトツーリズム
前編|「KAJIグループ」が仕掛ける、地域に根ざしたものづくり
2025年4月、石川県かほく市に、繊維産業の最先端を体感できる「KAJI FACTORY PARK(カジファクトリーパーク)」が誕生した。ファクトリーツアーやワークショップを通して合成繊維の可能性を知り、地域が築き上げてきた産業の魅力を発信している。
石川の風土と、
繊維の魅力を体感する

「KAJI FACTORY PARK」を訪れ、工場を見学してまず驚くのが、160台の織機が爆音をたてていっせいに稼働し、次々と美しい布を織り上げていく様子だろう。石川で3代続く合成繊維メーカー「KAJIグループ」が誇る“世界で一番薄くて軽いナイロン織物”は、一反に用いる2万本以上の極細の縦糸の間を、ウォータージェットで横糸を飛ばして織り上げる。このスケールと想像を超える技術を目の当たりにし、日本の合成繊維(以下、合繊)が世界で注目されている理由がわかった。

世界で一番薄くて軽いナイロン織物を実現できるのは、自社で加工するナイロン糸があるからだと、パークのプロジェクト長・砂山徹也さん。
「糸に熱を加えて撚り、それを戻すという加工を施すことで、ふわふわで弾力のある“伸びる糸”ができます。その細さは、最も細いもので髪の毛の3分の1。これを高品質に加工できるのは、自社グループの技術力の結晶です」
極細の伸びる糸で織る布はストレッチ性を備える。糸が細い分、織りの密度が高くなり、撥水性や防風性にも優れる。軽くしなやかな生地はスポーツウェアやウインドブレーカーに最適だ。

一方、石川をはじめとする北陸が、日本の繊維産業、中でも合繊の一大産地であることをどれだけの人が知るだろうか。現在、ナイロンやポリエステルなど合繊長繊維製造の約9割を北陸3県で占めている。
北陸は一年を通して雨が多く、湿潤という気候ゆえに、もともと絹の生産が盛んで繊維産業が発展してきた。戦後の復興期から高度経済成長期にかけては、天然繊維の代替としてのナイロン、ポリエステルをはじめとする合繊が急速に普及。乾燥による静電気を嫌う合繊を扱うのに、北陸はもってこいの地だった。

気候とシルクでした
石川県は豊富な水が絹の生産に適し、織物産業が盛んな地だ。戦後、合繊が台頭すると、一年を通して湿潤な気候である石川は、静電気を嫌う合繊の製造にも適し、一大産地として発展する
ところが、北陸の繊維産業は徐々に衰退していく。50年ほど前、石川県内に3800社ほどあった機屋と呼ばれる機織り業者は、いまでは200社以下に激減した。理由のひとつは、北陸の繊維産業のほとんどがアパレルメーカーなどの下請けであること。日本のブランドでも製造は海外で行うというところが増え、国内の繊維産業はますます縮小していくことになった。
かほく市で1934年に創業したKAJIグループも例外ではない。いまや誰もが知る国内外のアウトドアブランドやスポーツメーカーの生地を数多く手掛けているが、下請けとして黒子に徹している以上、KAJIの名が表に出ることはなかった。
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地域・産業・企業三方よしの関係とは?
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繊維を未来へ紡ぐクラフトツーリズム
01|繊維の魅力を体感“繊維の遊び場”が誕生!
02|KAJIグループの地域に根ざしたものづくり
03|地域・産業・企業三方よしの関係とは?
text: Yukie Masumoto
2026年2月号「地域を変える企業」



































