「即位礼正殿の儀」の前におさらいしておきたい4つのコト
10月22日には、天皇陛下の即位を内外の代表がお祝いする「即位礼正殿の儀」が開催される。そこで、改めてこれまで紹介してきた天皇にまつわるトピックをまとめた。
「令和」の出典として話題!
①万葉集
①万葉集
万葉集とは、大まかに説明すると20巻約4500首を収めた我が国最古の歌集である。編纂(へんさん)がはじまった時期ははっきりせず、また成立も759年以後としかわかっていない。主な編纂者は大伴家持(おおとものやかもち)といわれているが、彼一人ではなく複数の人がかかわっていると思われる。
蒐集された歌のうち、時代が後半になると編纂者の大伴家持のようなプロ歌人の作品が多くなるが、万葉集以降に編纂された古今和歌集や新古今和歌集(しんこきんわかしゅう)との大きな違いは、天皇や皇族、貴族や官人など、ある程度身分や教養を備えているとおぼしき階級だけでなく、名もなき庶民の歌が多く蒐集されている点だろう。
歌の内容は大きく分けて「雑歌(ぞうか)」、「相聞歌(そうもんか)」、「挽歌(ばんか)」の3つ。テーマとなっているのは神や自然の偉大さ、家族や男女の愛情、亡くした人への思いをうたったものが圧倒的多数だ。
前述の庶民の歌でよく知られているのが、外敵の侵入を防ぐために単身赴任で九州防衛にあたった兵士たちの、故郷や家族、恋人を思う「防人(さきもり)の歌」だろう。こうした庶民の歌をはじめ、全体に通じる素朴でおおらかな歌風は「万葉調」、「ますらをぶり」などと称されて、古今和歌集など後の歌に大きな影響を与えた。
「即位礼」の見方が深まる!②皇室おしゃれ学
宮中の女性が着用した中国風の「乙姫さま」のような装束が、いつ日本風の「十二単」になったのか、実はよくわかっていない。文献をたどると平安中期、清少納言や紫式部の活躍した時代に変化したと思われている。
「十二」というのは、「十二分に」という言葉があるように、「たくさん」を意味するもので、平安時代には20枚以上重ねて歩行が困難であったという話も残っている。その時代には貴人に仕える女房が着る装束ということで「女房装束」と呼ばれていた。
また、江戸時代が終わるまでは、女性が公の場で儀式に参加する機会が少なく、一定の着付け方法が定められたのは、大正の即位礼のとき。ここで「五衣唐衣裳」という名称も定まった。
さらに、江戸時代までの日本のカイコが出す糸で仕立てた十二単の重さは、明治以降のフランス種の3分の1の重量、いまよりはずっと軽かったと思われる。現在の絹糸は太く重いので、立って長時間の儀式をする「立礼」の実情に合わせ、五衣を「比翼仕立」(襟袖裾の見える部分のみ5枚重ね)にして軽量化を図っている。
かつて即位の際に天皇が御座についた
③京都御所「紫宸殿」
京都御所の中でも最もオフィシャルな建物といえるのが紫宸殿だ。京都御所の正殿として、1868(慶応4)年に明治天皇が公家や大名を前に新政府の指針「五箇条の御誓文」を示し、明治・大正・昭和の3天皇の即位礼が行われた場所だ。
東西約33m、南北約23mの御殿は南側を向く。古来中国では、国の君主である天子は北を背に南を向いて人民を治める「天子南面す」という思想がある。唐の都・長安を手本に造営された平安京はこの思想を反映、それは平安時代の復古を目指して1855(安政2)年に再建されたこの紫宸殿にも受け継がれる。
住所:京都市上京区京都御苑3
Tel:075-211-1215(受付時間:8:30~17:15)
入場時間:入場時間は季節で変動、ウェブページを確認 ※予約不要の通年公開
休止日:月曜(祝日の場合は翌日休)、年末年始 ※臨時休止日あり。詳細はウェブページを確認
入場料:無料
※無料ガイドツアーは、1日4回実施(9:30~、10:30~、13:30~、14:30~)。予約不要。参観者休所に集合
2000年以上受け継がれている日本人の心④【対談】日本人にとって天皇とは?
宮中とゆかりの深い伊勢の地で、旧知の仲である竹田さん、松本さんが天皇について語り合った。
松本 あらためて天皇陛下のご存在、竹田さんにはどう映っていますか?
竹田 日本は歴史がある国です。先人たちの軌跡は記録で残され、考古学でも2000年はさかのぼることができる。これは素晴らしいことです。鮭が産卵のために川をさかのぼって自分が生まれた場所を目指すのは、それが子孫を残す最も確実な方法だからです。
そして日本人が2000年以上大切にしてきたものが天皇です。その理由はもはや誰もわからずとも、そこには何か意味があるわけです。
松本 天皇とは何か?これを言葉で説明するのは難しいことですね。
竹田 とても多面的で、いろいろな価値や趣をもっていますから。でもそこに存在理由があると私は思います。
つまり天皇があっての日本であり、いわば日本そのものを守り続けている存在であるといえるのではないでしょうか。宮中は古いものを残すことに価値を見出してきた世界です。日本の古きよきものが、社会では失われていても、宮中で継承されています。
新時代「令和」を迎え、今年は日本の転換期であることを多くの人が感じているのではないでしょうか。そもそも”天皇”についてきちんと知っていますか?「即位礼正殿の儀」前におさらいしておくのも良いでしょう。
《「即位礼正殿の儀」の前におさえておきたい基礎知識》
・万葉集はツイッター⁉いまこそ知りたい万葉集の魅力
・十二単って本当に12枚着ているの?ご大礼の見方が深まるおしゃれ学
・まさに京都御所の象徴。多くの史実に残る神聖な場所「紫宸殿」
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2019年6月号 特集『天皇と元号から日本再入門』
2019年10月号 特集「京都 令和の古都を上ル下ル」
2019年4月号特集「ニッポンの新たな時代、どうつくる?」