ビームスがコラボレーションした未来に残したいアイヌの手仕事
北海道の先住民とされているアイヌ。狩猟採集文化のもと、厳しい北の大地で山や森、川や湖といった自然と共生してきた人々だ。そんなアイヌが独自の文化の中で育んできた手仕事と、ビームスフェニカがコラボレーションし、新コレクション「AINU CRAFTS」を発表した。
カムイへの祈りが込められた工芸品
北海道の工芸品というと、ステレオタイプ的に木彫りの熊などを思い浮かべる方もいるかもしれない。けれど本来のアイヌの工芸品は、そういった“お土産物”とはまったく異なることを、まずは説明しておきたい。
アイヌの文化では、道具や装身具など身の回りに存在するものが、自然界の多くのものに加え、すべて神であると信じられてきた。神が姿かたちをもって人間の世界に現れたものと考え、その神々を「カムイ」と呼び大切にしてきたのだ。そのため装身具一つとっても祈りの気持ちを込めてつくり、手間暇を惜しむことをしないアイヌの工芸品は、暮らしに根ざすことで”用の美”をまとう民芸品ともまた別のものである。
「AINU CRAFTS」を手掛けたビームスフェニカのディレクターの北村恵子さんとテリー・エリスさんは、これまで沖縄のやちむんや栃木の益子焼など、日本全国の手仕事をする人々と商品づくりを続けてきた。その経験からアイヌ文化をどのように捉えているのか?
「なによりとても強い家族のつながりを感じます。たとえば籠をつくるための素材ひとつとっても叔父さんやいとこで山に入って採ってきたものだったり、刺繍の模様やいろいろなもののつくり方は祖父母から教えられたものだったり、作家たちの話のいたるところに家族の存在が感じられます。いまも家族のためにつくることを続けている人たちがいて、その技術がここまで残っていることは貴重です」と北村さん。
本来販売することを前提とせず、使う相手を思い浮かべながらつくってきたアイヌの工芸品を、“誰か”の生活に取り入れられるよう世に届けるかたちになるまでは、当初想定していた倍以上の2年という時間がかかったという。それでも二人は、お土産物ではなく日常の中で使う生活用品や身に着けられるもののかたちにすることにあくまでこだわった。理由は安定的に売れる商品をつくることが、技術を守ることにつながり、作家の自己表現の場をつくることになると考えるからだという。
「アイヌの暮らしは、東京やそのほか都市部に暮らすひとたちと変わらない“普通”の暮らしです。でも自然の近くにいることが彼らにとってはとても自然で、リラックスできることなのだと感じました」とエリスさん。
新宿のビームスジャパンでは、2019年10月27日(日)まで「AINU CRAFTS」のコレクションのほか、古い着物や本物の刀剣などいまでは目にすることが難しい貴重なアイヌ文化の資料が展示されている。この機会に独自の文化を育んできたアイヌの美しい手仕事に触れてみてはいかがだろう。
▽商品開発秘話についてより詳しく知りたい人はこちら
fennica things vol.7 阿寒湖とアイヌ
https://www.beams.co.jp/special/fennica_things/vol7/
20日にはトークショーも開催!
参加の4作家を招いたトークショーがBギャラリーにて開催される。アイヌの自然観や信仰などから生まれた歴史や文化について興味をもった方、必聴!
Tradition and Innovarion アイヌ クラフツ 伝統と革新-阿寒湖から-
期間 :フェニカ スタジオ 〜2019年10月20日(日)、Bギャラリー〜2019年10月27日(日)
会場:ビームスジャパン5F
住所:東京都新宿区新宿3-32-6
時間:11:00~20:00
問:Bギャラリー
Tel:03-5368-7309
www.beams.co.jp/bgallery
トークショー
開催日:2019年10月20日(日)
時間:18:00〜19:30
会場:Bギャラリー(ビームス ジャパン 5F)
予約方法:Bギャラリーへ電話にて要予約(先着30名、無料)
ゲスト:下倉洋之(彫金作家)、瀧口健吾(木工作家)、鰹屋エリカ(刺繍作家)、木村多栄子(編物作家)
北村恵子、テリー・エリス(共にフェニカディレクター)
協力:NPO法人阿寒観光協会まちづくり推進機構
https://ja.visit-eastern-hokkaido.jp/plan_your_trip/2314/