INFORMATION

市民と歩み続ける小樽とルタオ、
これからどうなるのですか?
|小樽のまちづくり

2025.4.23
市民と歩み続ける小樽とルタオ、<br> これからどうなるのですか?<br>|小樽のまちづくり

変化し続ける世界情勢と日本。港町である小樽は、いつでも時代がつくり出す波に大きく揺さぶられながらも進化を遂げてきた。これからの小樽について、かじ取りを担う3人にインタビューした。

≪前の記事を読む

小樽とルタオの進化

〈1966年〉
市民が街の歴史的な遺産の価値に気づく
市が運河の埋め立て計画を含めた「道道臨港線」の都市計画を決定した年。この後、運河の埋め立ての是非をめぐり、約10年に及び市を二分する大論争が起こり、最終的には官民で景観を守っていくという気運が生まれた。

〈1998年〉
「小樽洋菓子舗ルタオ」が創業
小樽観光の中心地であるメルヘン交差点に「小樽洋菓子舗ルタオ」がオープン。「親愛なる小樽の塔」という意味のフランス語「La Tour Amitie Otaru」の頭文字を取り、小樽の地名とかけて「ルタオ(LeTAO)」と名づける。

〈2023年〉
小樽港第3号ふ頭及び周辺の開発が進む
2023年春に小樽港クルーズターミナルが完成。2024年春には国による整備がされていた14万t級大型クルーズ船の寄港に対応できる岸壁整備が完了した。現在も同エリアでは、賑わい空間を創出するための整備が進む。

〈2024〉
旧小樽倉庫南側(旧運河プラザ)に「ルタオ運河プラザ店」が開業
市が公募型プロポーザルにより民間事業者を募集した結果、ケイシイシイが選定された。「ルタオ運河プラザ店」として2024年10月11日にグランドオープン。2025年春にはカフェ・レストランも開業予定だ。

「お菓子だけでなく、 食を通じて小樽を盛り上げたい」

ケイシイシイ 代表取締役
上村成門さん
三重県鳥羽市出身。1983年に寿製菓(現・寿スピリッツ/本社:鳥取県米子市)に入社。2017年、寿スピリッツグループ会社のケイシイシイ(本社:北海道千歳市)の専務に就任。2021年から代表取締役社長を務める。

弊社は、お菓子の総合プロデューサーとして全国の「プレミアム・ギフト・スイーツ」を創出する「寿スピリッツグループ」の一角を担い、1996年に北海道千歳市でコトブキチョコレートカンパニー(現:ケイシイシイ)を設立。1998年にご縁をいただき、小樽市堺町に「小樽洋菓子舗ルタオ本店」をオープンしました。

はじめはまったくお菓子が売れず、小樽の方々にルタオのお菓子を知ってもらうため、市内であればシュークリームひとつから無料配達したり、店頭では試食品を手渡ししたりと、少しずつ地元のお客さまに受け入れていただきました。現在は、堺町通りと小樽駅前を含め、7店舗を営業しています。

ルタオ運河プラザ店では、地元に愛されてきた歴史的建造物を任せていただくことになり、ルタオが小樽の皆さまに少しでも貢献できたのだと感慨深く思います。はじめてのバー業態にも挑戦していますが、〆パフェメニューやスイーツに合うお酒探しなど、スタッフも楽しみながら取り組んでいます。

今春には小樽とイタリアンを掛け合わせた「オタリアン」がテーマのカフェレストランもオープンします。できるだけ地産地消の食材を使用する予定です。お菓子というフィールドから一歩抜け出し、小樽でさまざまな展開ができたらと思っています。お菓子だけでなく、食全般を通じて小樽を盛り上げていきたいと思います。

「ナイトタイムエコノミーや回遊性を高めて、滞在型観光の街へ」

小樽市 市長
迫 俊哉さん
1958年、小樽市生まれ。高崎経済大学卒業後、小樽市役所に入庁し、企画政策室長、総務部長、教育部長などを歴任。2017年に市役所を退職し「小樽みらい会議」を設立。2018年8月に小樽市長に初当選し、現在2期目。

旧小樽倉庫の活用については、公募型プロポーザルの選定事業者として、小樽に25年以上続く店舗があり、小樽観光への課題にも理解があるケイシイシイさまが貸付事業者となり心強く思っています。

小樽は札幌に近いこともあって、これまでは通過型の観光地でしたが、コロナ禍を経て2棟の大型ホテルの建設も予定されており、今後は滞在型の観光地を目指していきたいと思っています。その課題解決のカギが「夜の観光」だと考えています。そのため、ルタオ運河プラザ店のバーなどは22時まで営業していますし、2024年春に開業した「小樽国際インフォメーションセンター」も20時までオープンしています。今後、市内にナイトタイムエコノミーの選択肢が増えていくことを願っています。

また、ルタオ運河プラザ店は、小樽観光の強みである「海」や「港」のエリアの起点に位置しています。再開発が進められている小樽港第3号ふ頭周辺のほか、運河と一体となった建物として残すことを決めた「旧北海製罐小樽工場第3倉庫」など、北運河エリアへの回遊性も視野に入れた拠点づくりをしていただけるとありがたいです。面的に連続した魅力のある地域づくりを目指しています。

小樽に残る歴史的建造物を活用しながら残していく、というのは課題も多いですが、ほかにはない小樽の街並みを後世に残すために力を尽くしたいと思っています。

「小樽市民は小樽が大好き。 市民ととともにまちづくりを推進」

小樽観光協会 会長
西條文雪さん
1952年、小樽市生まれ。一橋大学を卒業後、三菱商事を経て1981年に西條木材産業(当時)の常務に、1991年に西條産業代表取締役に就任。2014年から小樽観光協会会長、2021年から小樽観光振興公社社長も務める。

2024年3月、小樽観光振興公社が小樽港第3号ふ頭近くに「小樽国際インフォメーションセンター」を開業しました。こうした港湾振興のプロジェクトは、大型クルーズ船の寄港が増えはじめた十数年前から検討を進めていました。「物流で栄えた街」から、「海を生かした観光の街」として再開発計画を話し合ってきました。

インフォメーションセンターには、旧小樽倉庫にあった小樽観光協会が運営する売店も移転しました。小樽だけでなく周辺地域の土産品なども取り揃えています。運河プラザには観光案内所もありましたが、公的な駐車場が近隣にないことが課題でした。その点、インフォメーションセンターには320台の駐車スペースがあり、小樽運河まで歩いて観光できる利便性があります。

ルタオ運河プラザ店を起点とし、インフォメーションセンター、旅客船ターミナル、そして北運河エリアまで、文化と歴史を紡ぐ新たな観光エリアが誕生しそうです。堺町通りは活気があり、インバウンド客の中でもアジア圏の方々に人気ですが、北運河エリアはヨーロッパからの観光客がターゲットになるのではないかと考えています。

小樽市民は小樽が大好きな人が多い。まちづくりのイベントも、高校生や大学生が参画してくれるようになりました。老若男女の市民と一緒に、より時代にマッチしたまちづくりをしていきたいです。

line

小樽のまちづくり
01|《LeTAO/ルタオ》の新たな挑戦①
02|《LeTAO/ルタオ》の新たな挑戦②
03|小樽とルタオのこれから

text: Tomoko Homma photo: Kenji Okazaki

2025年3月号「ニッポンのまちづくり最前線」

北海道のオススメ記事

関連するテーマの人気記事