《高知県・東洋町》
マルチワークでかなう
自然豊かな南国での移住生活!|後編


青く輝く雄大な海と暮らしがともにある、高知の最東端にあるまち・東洋町。自然を生かしたさまざまな仕事に取り組みながら自分らしく暮らす。そんなライフスタイルに、地域と人を元気にするヒントがありました。後編では、移住後にどのようなマルチワークをしているかをご紹介!
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「“自然”と仕事し、“自然”と遊ぶ」
暮らしをかなえ、地域の課題も解消

サーファーの聖地と称され、全国的な大会も開催される東洋町には、サーフィン好きが高じて移り住んだ人も少なくない。たとえば、朝イチでビーチに出て波と戯れ、シャワーを浴びてから仕事へ。退勤したらまたサーフィン、夜は飲食業など別の職場へ、という生活もかなうのだ。
現在「バツグン協同組合」事務局長を務める嶋田数昌さんも、趣味のサーフィンがきっかけで20年前に大阪から移住。「サーフィンが日常とともにある、この町ならではの働き方を知ってもらいたい」と意気込む。

ひと口にマルチワークといっても、人の数だけそのかたちはさまざま。群馬出身の神保将大さんは、地域おこし協力隊として観光振興協会でイベントの企画や運営を担当しつつ、副業で漁港などでの作業にも参加している。仕事先が複数にわたることで、移住者が地域に馴染みやすいというメリットも。
「“ご飯食べに来ぃや”ってあちこちから声を掛けてもらって、こっちに来て7、8㎏太りました(笑)」

第二の人生のステージとして、この地を選んだ人もいる。中川じゅんさんは「コーヒーを炭火で焙煎したい」という夢の実現に向けて、備長炭の名産地・東洋町へ。製炭業に従事するかたわら生豆を炭で焙煎し、イベントへの出店を通してファンをつかんでいる。
今秋にはコーヒースタンドを開業予定だ。「東洋町産の備長炭でローストした豆を、室戸の海洋深層水でドリップします。ご縁があった土地の恵みで淹れるコーヒーをたくさんの人に味わってほしいです」と中川さんはほほ笑む。

人口が減少し、働き手不足が深刻化する東洋町において、移住×マルチワークは地域の課題解決に直結する。夏はサーフィンや海上アスレチックといった観光業、冬はポンカンの収穫などの農作業と、自然とともにある仕事は季節や天候に左右されやすい。だからこそ、繁忙期の異なる複数の仕事をコーディネートするバツグン協同組合のような機関が不可欠だ。
「やりたいことがまだわからない」という人も、複数の派遣先で働くことによって思わぬ適性に気づくきっかけが生まれる。スキルを習得し、その経験を別の派遣先で生かすことで、スキルアップにつながるという好循環も。雇用は基本的に無期限だが、組合を“卒業”して派遣先で正社員登用または独立というケースもある。マルチワークは働き手と働く先、ひいては町全体、まさに三方のポテンシャルを広げてくれるのだ。
「人口2000人ほどの小さな町に、美しいビーチがふたつもあり、山や川にも恵まれている。ぜひ外部の視点で、ここの素晴らしさをあらためて掘り起こしてほしい」と長㟢町長。時間がゆっくりと流れる大自然の懐で、自分自身と地域の魅力を再発見したい。
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東洋町に移住してきた方の
マルチワークをご紹介!
《炭焼き+コーヒースタンド起業》

中川じゅんさん
子育てがひと段落したことやコロナ禍の閉塞感などから、地元・青森を離れることを決意。コーヒー店勤務を通して魅了された炭焼きコーヒーにチャレンジすべく、「好きな海の近くで備長炭にかかわれる仕事を」と、バツグン協同組合の採用第2号として2022年に東洋町への移住を果たす。製炭業のほか居酒屋での仕事もこなす。休日には海で大好きなSUPを満喫。
《ホテルスタッフ+東洋町観光振興協会+釣り針づくり》

久保地隆行さん
高知県中部の土佐市で、ジムのパーソナルトレーナーとして活躍。東洋町で開かれたサーフィンスクールへの参加が縁で町の魅力に触れ、2024年に移住。春から夏はホテルや観光振興協会での海上アスレチック運営、オフシーズンは釣り針の製作に従事。「少し不便さを感じることもあるけど、静かで過ごしやすい町ですね」。

《梱包材の納品+サーフィン》

廣瀬忠輝さん
趣味のサーフィンに打ち込める環境を求め、2024年に京都から移住。ヨガスタジオを主宰する妻とともに南国暮らしを楽しむ。漁港そばにある倉庫から鮮魚用の梱包材を納品し、箱詰めなどの作業もサポート。「波さえあれば、冬でも毎日サーフィンに出掛けています。東洋町は海も星空も最高にきれいですよ」。
《梱包材の納品+水産業+東洋町観光振興協会》

神保将大さん
地元・群馬での前職は宅配業。「海があって旅行では行かなそうな場所」という希望で移住フェアに参加し東洋町と出合う。2023年に地域おこし協力隊で移住し、観光振興協会で海上アスレチックの運営などを担当。2024年にはビーチサッカーフェスティバルをイベントとして企画し、好評を博す。
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問い合わせ先|東洋町特定地域づくり事業バツグン協同組合
Tel|0887-23-9555
text: Aya Honjo photo: Atsushi Yamahira
2025年3月号「ニッポンのまちづくり最前線」