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日本ワインはなぜ美味しくなった?
いま、日本ワインの進化がとまらない!

2019.10.2
日本ワインはなぜ美味しくなった?<br>いま、日本ワインの進化がとまらない!
北海道も、日本ワインの生産地として注目を集める。写真は、北海道ワインの鶴沼ワイナリー。北海道随一の広大な畑だ

日本の土壌で育ったブドウを使い、日本の醸造家がつくる「日本ワイン」。ここ数年で格段の進化を遂げたと言われている。でもなぜ? その理由を日本ワインの普及に力を入れてきたJ.S.A認定ソムリエ遠藤誠さんに教えてもらった。

遠藤誠さん
早稲田大学オープンカレッジ、アカデミー・デュ・ヴァン東京校などで、ワイン講師を務める。ほか、日本ワインを愛する会副会長、日本ワインコンクール審査員、外務省在外公館課で日本ワイン講座を担当するなど、日本ワインにも造詣が深い。著書多数

「約15年前に、ある会で“日本ワインは10年前と比べて飛躍的に美味しくなった”と話したことがありますが、日本ワインは、絶えず進化し続けています」。

こう笑いながら話すのは、J.S.A認定ソムリエで、人気ワイン講師の遠藤誠さん。2004年に設立された「日本ワインを愛する会」の創設メンバーで、副会長も務める。

20110年に、日本固有のぶどうとしてはじめて国際ぶどう・ぶどう酒機構(OIV)に品種登録された品種「甲州」。山梨を中心に多く育てられている

「美味しくなった要因はいくつかありますが、ワインが身近なものになってきたことが大きいと思います」と遠藤さんは解説する。

「生まれたときからワインが身近にある “ワイン・ネイティブ”の人が多くなりました。また、生産者も自社畑で育てたブドウを使い、肩ひじを張らずに自由にワイン造りを楽しんでいます。生産者と消費者が一体となって、日本ワインを育ててきたのは、間違いありません」。

一般客に向けて開放しているワイナリーも多い。写真は山梨の勝沼醸造

日本でワイン造りがスタートしたのは明治時代のこと。日本のワイン市場が大きく転換期を迎えたのが1975年だ。1970年に行われた日本万国博覧会を契機に食生活の洋風化が進み、ワインの輸入量や消費が増加した。そして1975年にはじめて、「赤玉ポートワイン」に代表される甘味果実酒と、本格ワインである果実酒の消費量が逆転した。

1980年代には、大手のワイナリーを中心にワイン用ブドウの本格栽培がはじまり、ワインは急速に日本の生活に広がっていった。遠藤さんは「とはいえ、この頃はワインといえば“外飲み”のお酒でした。それが’90年代後半の赤ワインブームで、一気に身近なものになりました。現在、ワインはスーパーやコンビニでも買える“家飲み”のお酒として浸透しています」と話す。

山梨のシャトー・メルシャンも、現在畑の規模を拡大中。写真は椀子の自社畑

世界に目を転じると、1930年代にフランスのブルゴーニュ地方ではじまった「ドメーヌ元詰」運動(=栽培・醸造・瓶詰を一貫してワイナリーで行うという動き)が、より土地や畑の個性を表したワイン造りをするための「自然派ワイン」へと進化していった。

「こうした自然派ワインの造り手の栽培・醸造技術を現地で学び、共感した日本のワインの造り手が、2000年前後に日本に続々と戻ってきました。そこで、ドメーヌ式の生産者が急増したわけです。また、規制緩和でワイン特区が出来、小規模ワイナリーでもワイン醸造ができるようになったのも追い風となりました」と遠藤さん。

遠藤利三郎商店
遠藤利三郎商店
住所:東京都墨田区押上1-33-3
Tel:03-6657-2127
営業時間:18:00~24:00
定休日:なし
http://endo-risaburou.com/index2.html

日本で育てたブドウを使い、日本で造る日本ワイン。さらに、栽培から醸造、瓶詰までを一貫して自ら行うドメーヌ式のワイン造りへ。進化し続ける日本ワインからは、ますます目が離せない。

文=本間朋子 写真=永禮賢、平野愛、吉田素子
2018年1月号 特集「ニッポンの酒 最前線!」


≫三代目 遠藤利三郎さんのエッセイはこちら

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