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富山県《山口久乗》
現代デザインの“おりん”が家庭に安らぎをもたらす

2024.8.23
富山県《山口久乗》<br>現代デザインの“おりん”が家庭に安らぎをもたらす

約400年の伝統をもつ富山・高岡の鋳物産業。「久乗おりん」で知られる、1907年に創業した山口久乗は、地場産業の流れを汲み、仏具や楽器を制作。デザイナーと二人三脚で新製品をつくり続ける同社に、ブランドストーリーを伺いました。

山口久乗の4代目・山口康多郎さん。元銀行員で山口久乗を担当していたことが縁で入社

山口久乗
1907年創業、富山・高岡の仏具メーカー「山口久乗」。おりんののびやかで心安らぐ音を身近に感じてもらいたいと、近年はインテリア仕様の商品も多数展開する。

鋳物産業のまち・高岡の伝統を引き継ぐ

本社には、商品を試すことのできるショールームが。もちろん購入も可能だ

富山・高岡の伝統工芸品「高岡銅器」。江戸時代初期、加賀藩藩主・前田利長が城下に「金屋」と呼ばれる特区をつくり、河内国(現・大阪府)の流れをくむ7人の鋳物師(いもじ)を呼び寄せたことが鋳物産業のルーツ。そう教えてくれたのは、「山口久乗」の4代目・山口康多郎さん。

「鍋や釜の鋳造からはじまったのですが、仏教徒が多い土地柄とあってか、江戸時代中期より仏具がつくられるように。それが高岡の地場産業として続いているんです」と話す通り、初代・山口休乗もその波に乗り「山口久乗商店」を創業。「事業を起こすのに本名の“休”はなかろうと屋号を“久”にしたおかげか、117年も続いているんです」。

風鈴の歴史と仏具から波及!
音づくりの技が融合した「かざりん」

高岡銅器の着色技術が爽やかな「青銅」のかざりん。持ち運びができる置き型タイプのため、瞑想、ヨガ、睡眠導入の際に使用する人も多い

おりん独特の豊かな音色には、銅合金の配合や鋺型(まりがた)のかたちといった連綿と紡がれてきた仏具制作の技が凝縮されている。「この音色にはリラックス効果があるとされているので、暮らしの質を高めるために生かせないかと。身近な場所でもおりんを感じてもらいたいんですよね」との想いから、山口久乗では2010年より音を純粋に楽しむシリーズ「優凛」の販売をスタート。そのひとつが、一寸の小ぶりなおりんが伸びやかな音を奏でる置き風鈴「かざりん」である。

「風が運んでくるとされていた疫病や災いを払うものとして、平安貴族が銅合金の鐘を軒先にぶら下げたことが風鈴の起源だといわれています。かざりんの構想は以前からあったのですが、疫病退散の想いを込めてコロナ禍での販売に踏み切りました」と山口さん。

こちらは真鍮そのものの素材感を楽しめる「黄銅」

大衆向けにと、いつしか廉価なガラス製に取って代わった風鈴だが、お清めの力があるとされていた銅鐸や風鐸をミニチュアサイズに仕立てた鐘こそ風鈴のルーツ。そんな風鈴の歴史と仏具から波及した音づくりの技を融合したかざりんは、小さくとも透明感ある音やゆらぎは健在。

「おりんの音は背中をしゃきっとしたいときにもリラックスしたいときにも使えるんです」と山口さんが話すように、じんわりと広がるかざりんの音はオンオフの切り替えにも至適。能率を上げたい日や良質な眠りを求める夜など、ウェルビーイングな暮らしにそっと寄り添ってくれるのだ。

伝統×現代に馴染むデザイン

鳥のかたちをした呼び鈴「ことりん」。くちばしには手紙をはさめる

街が育んできた伝統に、現代に馴染むデザインを落とし込みたい。そう考えた山口久乗では15年以上前よりデザイナーと二人三脚で新製品を生み続けており、その姿勢はまさに伝統と革新。音色に耳を傾けるゆとりこそ、山口久乗の考える上質な暮らしかもしれない。

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鋳造、切削、研磨、着色、彫金など、それぞれの技術を極めた匠が集まる高岡の街。得意とする手法もおのおの異なるため、製品に合わせて依頼する職人も変わる。写真は切削の様子
おりんを仏具ではなく楽器として楽しんでもらいたいとの発案から生まれた、おりんの楽器「久乗編鐘(きゅうじょうへんしょう)」。山口久乗の音は、新高岡駅をはじめとした駅の発車音にも採用されている

 

山口久乗 製品一覧
 

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