お笑い芸人・余市町ワイン大使 髭男爵 ひぐち君さんが推すワイン
ぴのろぜ
|私が夏に飲みたいお酒⑤
太陽が燦々と照らし、汗が滴る日本の夏。酒を飲みたくなるときもきっとあるはず。ビール、日本酒、スピリッツ、ワイン、焼酎……。酒のスペシャリスト6名がこの夏に飲みたい名酒を語ります。
今回は、北海道余市町のワイン大使も務めるお笑い芸人の髭男爵 ひぐち君さんが登場。夏にぴったりの冷やして美味しいワインを紹介します。
髭男爵 ひぐち君(ひげだんしゃく ひぐちくん)
日本ソムリエ協会認定ワインエキスパート&ソムリエ・ドヌール(名誉ソムリエ)。余市町ワイン大使。全国のワイナリーを訪ね、オンラインサロンなどでワイン情報を発信中
キンと冷やせば、“余市の酸”が染み渡る
夏のワインといえばロゼ!
冷やして美味しいロゼは夏にぴったり。キンキンに冷やすと酸味がシャープに際立ち、夏疲れして酸っぱいものがほしいときにもいい。フランスでは白よりロゼのほうが消費量が多いくらい人気だし、日本ワインもロゼが増えており、ブームはもうそこまで来ている。ぜひこの夏、飲んでほしい。
ロゼは初心者にもやさしいワイン。白と赤の中間的な存在で、前菜から魚や肉、デザートまでペアリングできる。和食にも中華にもエスニック料理にも、キャンプなどのアウトドアシーンにも合う。夏の明るい時間から屋外で飲んだら最高! ほかの人と被りにくいから、ホームパーティの手土産にもいい。
おすすめは、栃木・足利にある「ココ・ファーム・ワイナリー」のロゼワイン「ぴのろぜ」。北海道・岩見沢の「10R Winery」のブルース・ガットラヴさんが醸造する「こことあるシリーズ」の一本で、北海道・余市の「木村農園」のピノ・ノワールを100%使い、野生酵母で醸造されたロゼワインだ。
“余市の酸”がもたらす、アセロラやザクロのような上品な酸味が夏に最適。さくらんぼやラズベリーのようなチャーミングでピュアな果実感で、紅茶を思わせるほのかな苦みも食欲を誘う。トマトやピーマンなどの夏野菜とも相性抜群。また、塩で味わうトウモロコシの天ぷらなどを合わせると、スイカが塩で甘みが引き立つように、料理の塩気がワインの果実味を引き上げてくれる。ピノ・ノワールは醤油とも相性がいいので焼きナスなどもよく合う。
“ワインの造りはブドウで8割が決まる”といわれるが、ぴのろぜのブドウをつくる木村農園は、栽培が難しいピノ・ノワールを約40年前から育てている第一人者。僕は余市町ワイン大使就任を機に木村農園で畑の作業を教わる機会に恵まれた。8.5haもあるブドウ畑を家族だけで管理されており、収穫だけで1カ月かかるほど大変。遅摘みにすることで熟度をしっかり上げたり、垣根を高くして葉を多く残すことで酸を保持できるのでは? という考え方や、雪の中のほうが暖かい冬はブドウの樹を雪の中に寝かせるなど、現場でしか学べない貴重な勉強をすることができた。
ワインは水を使わない酒で、一度の発酵でアルコールになることから、ブドウが育った土地の味わいが出やすい。日本は雨が多いので、日本ワインは繊細な味わいになり、旨みや出汁感を感じることができるといわれる。身体に染み入るようなその味わいは、世界のどこにもまねできない日本の個性だ。さらに近年の気候変動の影響で、余市をはじめとした道内がピノ・ノワールの栽培好適地となり、世界的な注目も上昇中。日本人がその味を知らないのは、あまりにもったいない。価格もリーズナブルで比較的入手もしやすいぴのろぜでのテロワールを体験してほしい。
僕はこのワインを飲んだことをきっかけに造り手になった方を何人か知っている。風呂上がりに冷えたぴのろぜを飲んだら、あまりにも美味し過ぎて、翌日会社を辞め、ワイン造りを目指した人もいる。だからこのぴのろぜは、言うならば人生を変えちゃうワイン。皆さんの人生も変わるかもしれないので、気をつけて飲んでくださいね。
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ぴのろぜ
価格|3960円(参考価格)/750㎖
原材料|ブドウ(北海道産)
アルコール度数|12.6度
問い合わせ|ココ・ファーム・ワイナリー
Tel| 0284-64-9800
https://cocowine.com
text: Miyo Yoshinaga illustration: Kako Kuwayama
Discover Japan 2024年6月号「おいしい夏酒」