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《シライナギサ》のうつわ
華やかなモノトーンの情景

2024.3.19
《シライナギサ》のうつわ<br>華やかなモノトーンの情景

うつわの上にゆらゆらと漂う霧の気配。シライナギサさんが生み出す白と黒が織りなす幻想的な世界は、どこかはかなげだが芯を感じさせる。シンプルで華々しい、引き算の美学を堪能したい。
2024年3月30日(土)〜4月14日(日)にかけて、東京・渋谷パルコ Discover Japan Lab.では「シライナギサ 個展」を開催。

Discover Japan公式オンラインショップでは、本展の一部作品を4月2日(火) 20時より順次販売予定です。(店頭の販売状況により日程・内容が変更になる場合があります)

シライナギサ(しらい なぎさ)
1991年、栃木県生まれ。愛知県立瀬戸窯業高校の専攻科を修了後、瀬戸市新世紀工芸館を経て金沢卯辰山工芸工房へ入所。2017年、日本クラフト展入選、2018年、テーブルウェア大賞入選ほか。現在は金沢で作陶している。

白黒の世界観が想像力をかき立てる

シライナギサさんにとって、うつわは昔から身近な存在だった。
「故郷の栃木は益子焼で有名ですし、母もうつわが好きだったので、この世界に興味をもったのは自然な流れでした」

陶芸の道に進むと決心した後、地元・栃木の窯業学校に行くべきか、それとも愛知・瀬戸のそれに進むべきか迷った揚げ句、「新天地で幅広く学びたい」と、後者を選択。陶芸の技術を習得し、晴れて磁器作家として独立した。

デビュー当初からつくり続けている2シリーズ。Cylinder(右)は街中のビルのある風景を抽象的に表現したもの。霧流し(左)もモノトーンで構成されているがイメージが異なる。ただ両方ともマットで柔らかな質感で、暮らしにすっと馴染む

マットな素地に漂う霧のような模様。「霧流し」と呼ばれる技法は、シライさんの代名詞といっても過言ではない。日本古来の伝統技法である墨流しを再解釈したもので、水墨画のような幻想的な描写が、見る者の目を奪う。
「モノトーンの配色にこだわるのは、霧流しを美しく見せたいからです。また、モノクロ写真がそうであるように、白黒の世界は情報量が少ない分、使う側の想像力をかき立てる気もするんです」

不要なものを削ぎ落とした姿は凛としていて、迷いを感じさせない。かといって他を拒むのではなく、絶妙な余白がうつわ全体に調和をもたらしている。
「賑やかな模様は使い方にテクニックが必要。その点、私のうつわは間を意識しているので、料理も盛りつけやすいと思いますよ」

ベースづくりには、石膏型を使った鋳込み技法が用いられている。素地が固まる前に型から外し、一つずつ手で成形することで柔らかなフォルムが生まれる

デビュー当初から霧流しと並行してつくっているのがCylinderだ。マスキングテープを使い、白黒2種の釉薬でブロック状の模様を描いていくのだが、霧流しとはまた異なる、どこかレトロでモダンな雰囲気が楽しめる。
「作風は異なりますが、どちらもさりげなく空間にアクセントをもたらすようなデザインを意識しています」

個展ではバラエティに富んだ作品が集結。日常使いしやすいかたちなので、手にしたその日から活躍することだろう。

霧流しの模様はこうしてつくられる!

【1】素地には泥漿(でいしょう)土(磁器土を水と薬液で調整した液体状の土)を使用。白と黒の土を同時に型に流し込む。こうすることでマーブル状の模様ができる
【2】数分後、型から土を出すことで、内側に膜ができる
【3】乾燥後、型から外し成形。素焼き〜本焼きをして完成

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〈シライナギサ 個展〉作品ラインアップ
 
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text: Misa Hasebe photo: Shimpei Fukazawa
Discover Japan 2024年4月号「日本再発見の旅」

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