銭湯はいま、地域に根ざした交流拠点へ
|続々と進化を遂げる東京銭湯【序章】
現代の日本において、銭湯はインフラとしての役割から、地域に根ざした交流拠点へと存在意義を変えつつある。東京の銭湯の撮影をライフワークとする写真家・今田耕太郎さんに、いまを象徴する銭湯についてうかがった。
建築写真家・今田耕太郎(いまだ こうたろう)さん
1976年、北海道生まれ。建築写真の撮影を専門とするかたわら、銭湯を撮影し続け、東京都浴場組合のウェブサイト「東京銭湯」ではフォトエッセイを連載。2021年に写真集『東京銭湯』(ネクト編集事務所)を刊行
時代が変わっても銭湯の役割は変わらない
「写真家として独立する前、通っていた銭湯に撮影協力をお願いしたところ、女将さんがおにぎりとけんちん汁を用意して迎えてくださって。その愛情が深く染み入り、涙しながら撮影した思い出があります。そんな風に銭湯は、日本の古きよき人情や心意気が息づく場所。写真を通して銭湯の素晴らしさを伝えたいと活動しています」
約17年にわたり、今田さんが撮影してきた東京の銭湯は200軒以上。長年地域に根づく趣深い銭湯に加え、近年はモダンなデザイナーズ建築の銭湯も増えたそうだ。
「銭湯では誰もが身分や職業を表すものを脱ぎ捨て、裸で同じ空間を共有し合います。だからこそ、会話せずとも同志のようなつながりを感じられ、目と目が合えば自然と会釈し合うように、交流が生まれるのです」と今田さん。そんな銭湯がもつ力に価値を見出す方々が、カフェなどの交流の場を備えた銭湯をつくったのであろう。
「これからの銭湯の意義を、地域の交流拠点に見出し、銭湯の火を絶やすまいと活動する次世代の担い手の姿に頼もしさを覚えます」
宮造建築からモダン建築へ。番台からフロントへ。時代とともに姿は変われども、身も心も温めほぐし、交流を生み出す銭湯の力は、きっとこれからも続いていく。
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text: Miyo Yoshinaga photo: Kotaro Imada
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