京都独自の銭湯文化がわかる4つの特徴とは?
|銭湯の聖地、京都へ!①
ローカル色を楽しむことこそが旅の醍醐味だと思うことが増えた。銭湯はそんな醍醐味を肌で感じられる最たる場所だ。風に揺れる暖簾の先にある京都はあなたのまだ見ぬ京都かも。
文=銭湯ライター・林 宏樹
1969年、京都市生まれ。京都の銭湯に富士山のペンキ絵はないのかという疑問から銭湯にハマり京都府、滋賀県の全銭湯をめぐる。著書に『京都極楽銭湯案内』、『京都極楽銭湯読本』(ともに淡交社)など
地元に愛される銭湯は約90軒!
京都は「銭湯の聖地」なんです
旅先でご当地グルメに舌鼓を打つことを楽しみにしている方は、多いのではないだろうか。その土地の風土や文化が育んだ食材や料理法を五感で感じれば、その土地を知るきっかけにもなる。街の銭湯にも、ご当地グルメのような楽しみがあるように思う。
残念ながら街の銭湯は減り続けているが、受け継がれてきたローカル色は色濃く残っている。それは、かたちにも表れる。
たとえば、東京の伝統的な銭湯は宮づくりと呼ばれる寺のような姿をしていて浴室には富士山のペンキ絵があったりするが、関西では見掛けない。京都の伝統的な銭湯は、京町家に似た佇まいだし、大阪の伝統的な銭湯は玄関の両脇に前栽がある。新しく建て替えられた銭湯では、そのようなローカル色は薄れてきているけれど、京都の脱衣籠を使う習慣のように脈々と受け継がれているものもある。そういうところに目を向ければ、銭湯の魅力は増すように思う。
京都は市内に90軒近い銭湯が残っていて、京都独自の銭湯文化をいまも感じることができる。文化財銭湯もある。歴史をさかのぼれば、銭湯の起源といわれる寺の浴室もいくつか遺構として残っている。また近年、銭湯を残していこうとチャレンジする若い世代の動きもある。そう、京都は銭湯の聖地と呼ぶにふさわしい土地なのだ。その一端をご案内します。
京都の銭湯で見られる4つの特徴
①荷物は籠ごとロッカーへ
脱衣場に必ずといっていいほど長方形の脱衣籠が用意されている。そこに荷物や脱いだ服を入れて、籠ごとロッカーに収納するのが京都流。籠を持って空いているスペースに移動すれば、ロッカーの前が混み合わない
②約9割の銭湯が地下水を利用
京都盆地の地下には琵琶湖に匹敵する地下水があるといわれるほど京都は水に恵まれた都市。豆腐などきれいな水にまつわる名物も多い。銭湯も地下水を使用している施設が圧倒的に多く、恩恵を肌で感じることができる
③戦前から続く老舗銭湯が多い
第二次世界大戦で大規模な空襲を免れたことで、京都市街の銭湯は戦前から同じ場所で営業を続けているパターンが多い。戦前築の建物を、改装を重ねながら利用している銭湯も多く、趣ある風情が楽しめるのも魅力
④サウナの追加料金が不要
東京や大阪では入浴料以外にサウナ料金が数百円程度必要な場合が多いが、京都市内の銭湯ではサウナの利用料金が不要なのが当たり前。旅行客が京都の銭湯を利用し、コストパフォーマンスの高さに驚くことも多い
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《船岡温泉》
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text: Hiroki Hayashi photo: Takuya Oshima
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