「黒部峡谷トロッコ電車の旅」建築デザインの聖地、黒部峡谷へ。
全3回の《日本屈指の絶景鉄道、黒部峡谷トロッコ電車の旅》最終回は、建築デザインの観点から見どころを紹介する。黒部峡谷は実は建築の聖地。トロッコ電車に揺られながら大自然と共存する建築を眺めるのもこの旅の魅力の一つだ。
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トロッコに揺られながら大自然と名湯に触れ合う黒部峡谷トロッコ電車の旅。峡谷内の絶景にそびえ立つ建造物も見どころ満載だ。
北アルプスの峡谷として知られ、豊富な水量をもつ黒部川は、大正時代から水力発電の適地として発電所建設が進められてきた。トロッコ電車の車窓からは、こうした発電所やダムを見ることができ、建物のデザインもひと際目を引くものがある。
その代表格が新柳河原発電所。宇奈月ダムの建設に伴い柳河原発電所を移設したもので、その特徴的な建築デザインは湖に浮かぶ西洋の城をイメージしたもの。中世ヨーロッパの物見の塔を思わせるつくりは一見の価値がある。
そのほか、黒部川第二発電所に送水する高さ50mを超える大型の小屋平ダム。いずれも近代日本建築運動のリーダーの一人で、モダニズムの建築デザインでありながらも和風建築の名手であったとされる建築家・山口文象氏によるものだ。
さらには大自然の中に映える朱色の鉄橋など、建築目線からも見どころの多い、いわば建築デザインの聖地。自然の中で共存する建築や土木デザインも黒部峡谷のトロッコ旅の魅力のひとつなのだ。
文=板倉 環 写真=工藤裕之
2019年9月号 特集「夢のニッポンのりもの旅」
建築家。1930~60年代にかけて活躍した、近代日本建築運動のリーダーの一人。バウハウス創立者の建築家ヴァルター・グロピウスのアトリエで働いた経歴をもつ。