高知《横倉山/よこぐらやま》は
幻想的で神秘的なロマンに包まれていた
植物分類学者・牧野富太郎が愛した
高知・横倉山を遊ぶ①
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自らを「草木の精」と表現したほど、生涯を懸けて植物の研究に打ち込んだ牧野富太郎。その“庭”ともいえる横倉山で、博士のフィールドワークを追体験しよう。
牧野富太郎(まきの・とみたろう)
1862年、高知県佐川町生まれ。植物分類学の第一人者。94年の生涯を通して収集した標本は約40万枚。新種や新品種など1500種類以上の植物を発見した。採集指導や講演会、植物図鑑の刊行など、植物を愛する後進の育成にも尽力
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日本の植物分類学の父と称され、NHK連続テレビ小説『らんまん』のモデルともなっている牧野富太郎。94年の生涯を通して植物に情熱を注ぎ続け、多大な功績を残した。その原点となった場所が、高知県中西部・越知町に位置する横倉山。牧野博士が幼少期から足繁く通い、研究のフィールドとした豊かなる山を訪ねた。
今回、横倉山を案内してくれたのは、越知町で生まれ育ったトレッキングガイドの所谷眞智子さん。「子どもの頃からこの山が遊び場で、植物採集が大好きでした」という。標高約800m、土佐唯一の修験の山でもある横倉山。岩場の続く険しい道もあるが、植生を観察しながらゆったりとトレッキングするなら、3時間程度のコースがおすすめだ。
「この山には樫と椎を中心に、樹齢数百年の巨木がたくさん残っています」と所谷さん。山中には牧野博士自筆の歌碑が立てられている。『森々と杉の木立ちの限りなく 神代ながらの横倉の山』。
源平の戦いに敗れた安徳天皇一行がこの地まで落ち延び、隠れ住んだという伝説も、歴史のロマンを感じさせる。博士が愛した山は悠久の時を超え、ありのままの美しさにあふれていた。
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壇ノ浦の戦いで入水した安徳天皇が、実はひそかにこの地に落ち延びていたという伝説が残る。安徳天皇を玉室大神とする横倉宮や、宮内庁所轄の安徳天皇陵墓参考地のほか、平家一門の従臣88名を祀る墓や祠が山中に点在
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1|高知・横倉山は幻想的で神秘的なロマンに包まれていた
2|横倉山で見られる植物たち
3|安藤忠雄建築「越知町立 横倉山自然の森博物館」
4|山の恵み、清流・仁淀川と土佐和紙の魅力を知る
5|高知・横倉山エリアの旅案内
text: Aya Honjo photo: Sadaho Naito
Discover Japan 2023年9月号「木と生きる」