アイヌ×越前
世界に誇る新たな工芸が生まれます!
美しい装飾と精緻な技を凝らしたアイヌ工芸。そのつくり手が暮らす北海道釧路市・阿寒湖アイヌコタンと、和紙や漆器の産地である福井県の越前エリア、ふたつの地域の掛け合わせで、どんな工芸が生まれるのだろうか。
渋谷パルコ・Discover Japan Lab.では2023年2月14日(火)〜3月13日(月)まで、アイヌ工芸作家のクラフト展を開催中!
右)アドバイザー・山田 遊
バイヤー。IDÉE のバイヤーを経て、2007年に「method」を設立。「燕三条 工場の祭典」の企画・立案を行うなど、活動は多岐にわたる。
中)アイヌ作家・平良智子
北海道阿寒湖温泉育ち。祖母はアイヌ文化伝承者として活躍した四宅(したく)ヤヱ。幼少時よりアイヌ古式舞踊に親しみ、20代よりアイヌ刺繍をはじめた。
左)山次製紙所・山下寛也
越前手漉き和紙の伝統工芸士で山次製紙所の6代目。オリジナル和紙「浮き紙」を使った商品開発のほか、オーダーメイドによる「ヒロヤペーパー」を提供。
アイヌと越前が出合い、生まれる唯一無二の工芸
北海道東部に位置する阿寒摩周国立公園内には、アイヌ工芸の一大拠点・阿寒湖アイヌコタンがある。観光地・阿寒湖温泉の一画で、アイヌ作家たちが民芸品をつくり販売する店舗兼工房や、アイヌ料理を提供する飲食店が軒を連ねる集落だ。
さまざまな動物や植物、火、水、太陽などをカムイ(神)として大切にしてきたアイヌの人々。自然を尊び、自然と共生してきた彼らは、木材や樹皮、動物の皮といった自然素材から、うつわや着物などをその手で生み出してきた。
そんな独自の世界観や文化を背景に、現代の感覚も取り入れたアイヌのものづくり。それをより多くの人に広め、新たな可能性を切り開こうと、他地域とのコラボレーションを開始。’22年度は、越前和紙と越前漆器の産地として知られる福井の職人との共作が決定した。遠く離れたアイヌ作家と福井の職人らを引き合わせたのは、全国のものづくりに精通したバイヤーの山田遊さんだ。
「山次製紙所の手漉き和紙『浮き紙』は、アイヌ文様と相性がよい」と確信した山田さんが和紙職人・山下寛也さんに声を掛け、阿寒湖アイヌコタンからは刺繍作家・平良智子さんとアイヌ工芸作家・郷右近富貴子さんが参加した。
ものづくりのはじまりは
全国唯一の紙の神さまを祀る神社へ
今回のコラボレーションにあたって、山田さんと平良さんが実際に越前を訪問。まずは、約1500年前に紙漉きの技をこの地に伝えたという川上御前が祀られている「紙祖神 岡太神社・大瀧神社」へ。その後、同じ越前市内にあり、山次製紙所とも親交の深い「滝製紙所」や「石甚製紙所」も訪問し、メーカーごとの和紙の質感や製法の違いを学んだ。
凹凸を表現した越前和紙をアートに昇華
越前漆器でアイヌの歴史と文化を表現
アイヌ刺繍作家と越前和紙職人によるコラボレーションが進む一方、木彫作家の床州生さんと渡辺澄夫さんは、福井で木地師の技術を継承する「ろくろ舎」とのものづくりが進行中。アイヌには、北前船との交易で北陸地方などから入手した漆器を宝物として大切にしてきた歴史がある。時を超えた新たな出合いによる工芸コラボの動向に、今後も注目したい。
読了ライン
渋谷パルコでアイヌの手仕事に出合う
特別展が期間限定で開催中!
渋谷パルコのDiscover Japan Lab.では、2023年2月14日(火)〜3月13日(月)にかけて、阿寒湖アイヌコタンの作家たちがつくる、木彫り作品や刺繍作品、マキリ(ナイフ)、ジュエリーなどが並ぶ特別展を開催中。有田焼とのコラボレーションで誕生したアイヌ文様のうつわも店頭に並ぶ。普段は現地でしか入手できないレアアイテムもあるため、お見逃しなく!
AKAN AINU ARTS & CRAFTS→NEXT × Discover Japan 特別展 2023
会期|2023年2月14日(火)~3月13日(月)
場所|Discover Japan Lab.
住所|東京都渋谷区宇田川町15-1渋谷PARCO 1F
Tel|03-6455-2380
営業時間|11:00~21:00
定休日|不定休
※最新情報は公式Instagram(@discoverjapan_lab)などで随時紹介しています。ぜひチェックしてみてください。
開発中の工芸品の最新情報や阿寒湖アイヌコタンの作家情報は「AKAN AINU ARTS & CRAFTS → NEXT」をチェック!
text: Makiko Shiraki(Arika Inc.) photo: Nik van der Giesen
2023年4月号「すごいローカル見つけた!」