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最新技術×海上建築
海上ファーム《Green Ocean》
海水を栄養源として農作物を育てる海の畑

2023.2.11
最新技術×海上建築<br>海上ファーム《Green Ocean》<br><small>海水を栄養源として農作物を育てる海の畑</small>

海上建築スタートアップ N-ARK(ナーク)は、気候変動時代で深刻化する海面上昇と塩害の課題解決をするため、海水農業技術を研究開発する、CULTIVERA(カルティベラ)とパートナーシップを結び、海に適応する建築と耐塩性技術を融合させた、Arktectureを研究開発し、2022年、静岡県西部・浜中湖沿岸に海上ファーム「Green Ocean(グリーンオーシャン)」の建設を準備中。陸と海の課題解決も同時に取り組んでいる、グリーンオーシャンを紐解いていこう。

海から見える可能性

ナークは「海から建築を再発明する」をコンセプトに、気候変動時代のなかで人々がより良く生きていくための新しい価値観を追求している。現在の建築物の多くは陸地に存在しているが、ナークは近代建築が最も苦手としていた海に適応する建築と耐塩性技術を融合させたArktecture(Ark+Technology+Culture)を研究開発し、海面上昇や水害塩害問題解決とともに、海上建築の可能性を広げる取り組みをしている。

また、海上を利用した耐塩システム建築、海でサステナブルに利用可能な塩性に順応した素材開発、そして海水を栄養素として栽培できる海水農業技術の3つを組み合わせて、塩害、沿岸部の水害、海面上昇など課題毎にソリューション化し、陸と海の課題解決も同時に進めている。

最新技術 × 海上建築

グリーンオーシャンの建材には、CO2の吸収と固定にもなる間伐材や県産材を使用し、木材ジョイントは耐塩性を考慮したカーボンジョイントを採用予定。水面下の箱舟部分は、浮体設備全体に特殊塗膜を施すことによる浮力の増加を想定しており、特徴的な屋根の形状は雨水を効率的に取り込む。雨水と海水を混ぜ合わせることでph調整と稀釈率調整を行い、塩性農業の肥料となる。室内温度は、気温が安定している冷たい海水を利用することでファーム内の空調役割を担う。循環的なシステム環境を取り入れることにより、グリーンオーシャンは”地球の絆創膏“のような役割を持つ。

海水農業技術を研究開発するパートナースタートアップ・カルティベラは湿度管理で栽培する技術「モイスカルチャー」を用いることで、5mmほどの特殊繊維で自然の土壌の表層約15cmを再現することができ、この特殊繊維によって水を水分気化し、植物に水分枯渇ストレスをかけながら育てることで、糖度やビタミンが強化された野菜を栽培することができる。モイスカルチャーを使用する水は従来の灌漑(かんがい)農法の10分の1で済み、水が豊富でない土地でも応用可能だそうだ。

また、海水農業はアルカリ性の海水と酸性の雨水を混ぜ合わせ中和し、品種に合わせて多様な種類の根を育成することで地中と空中の水分と養分が吸収出来るように特殊な栽培を行う。その結果、海水に含まれるミネラルと栄養素を活用できる機能性野菜に成長する。

そのほかにも、植物プランクトンや海藻の光合成による基礎生産は浅い海(干潟・磯・浜)で生態系を循環させているが、環境悪化によりこの基礎生産量が減少し、漁業にも影響を与えている。グリーンオーシャンの海面下では藻類などを栽培し、海中環境改善にも取り組んでいく。

ナークは現在、海上未病都市の構想とそれを実現するためのコンソーシアムを2023年6月に発足するために、将来的なビジョンを大幅アップデート予定。また、2024年の浜松花博への海上パビリオン出展に向けて、2023年の5〜7月に浜名湖にて、浮体技術を行政と漁業組合と調整中だ。

グリーンオーシャンは、人の生活と自然環境を守るプラットフォームのような存在なるだろう。ナークが掲げる、“海から建築を再発明する” 取り組みに注目だ。

読了ライン

Green Ocean/N-ARK(ナーク)
https://www.n-ark.jp

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