4度目の瀬戸芸。北川フラムさんに聞いた「この島ははずせない!」
12の島と2つの港で繰り広げられる今年の瀬戸内国際芸術祭。個性豊かな島や地域にアーティストが入り込み、その特徴を生かした多様な作品を展開している。全部の島を見て回りたいけれど、日程的にちょっと厳しい。そんな中でも「ここははずせない!」という特に注目すべきところを、総合ディレクターの北川フラムさん聞いた。
[女木島]小さなお店のテーマアイランド
女木港周辺で「島の中の小さなお店」プロジェクトとしてアーティストたちがユニークな店舗を展開。レアンドロ・エルリッヒによる虚実が向かい合わせになった不思議な空間のコインランドリーや、宮永愛子による海と向かい合うヘアサロン。原倫太郎+原游がつくったちょっと変わった卓球場は、この夏日本橋髙島屋でも展示を予定しているそう。
[小豆島]アジアのアーティストが大活躍
小豆島ではアジアの注目作家が活躍。台湾のワン・ウェンチー(王文志)とリン・シュンロン(林舜龍)はそれぞれ数千本の竹で、内部に入れる巨大オブジェを制作。中国のシャン・ヤン(向阳)は古い漁船や家具などを使って船と灯台を、また中国のダダワ(朱哲琴)はかつての米蔵に小豆島で録音した寺社の音と光と水による幻想的な空間をしつらえた。
[大島]今年から定期船が就航
ハンセン病の国立療養所大島青松園のある大島では、鴻池朋子が療養所裏の散歩道を復活させるほか、療養所にかかわる人々の「語り」から図案を起こし共同制作した手芸作品を展示。山川冬樹は対岸の庵治町へ泳いで渡ることで両者をつなげ、その記憶を展示。秋にはクリスティアン・バスティアンスが人間の尊厳を問いかける映像作品を公開、高松でライブパフォーマンスも。
[男木島]しっかり地域とタッグを組む
平地がほとんどなく坂道が迷路のように入り組んだ男木島では、空き家を使った作品が充実。遠藤利克が朽ち果てた民家で天井からひと筋の水を流して家の気配を作品化させるほか、サラ・ヴェストファルは光と映像によって海景のようなインスタレーションを公開。グレゴール・シュナイダーは町の一区画に周囲から隔絶された空間をつくり、鑑賞者を未知の世界へと誘う。
高松だって見逃せない!
各会場への玄関口である高松港の周辺では、「北浜の小さな香川ギャラリー」として、香川県の特産品を題材・素材としたさまざまな作品を展開。先端技術と香川の県民食「讃岐うどん」の出合いから生まれた石原秀則『うどん湯切りロボット』は理想的な讃岐うどんの食べ方を教えてくれる。
文=小林さゆり 写真=西岡 潔
2019年8月号 特集「120%夏旅。」