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《白井渚/シライナギサ》
水墨画を彷彿とさせる美しいうつわ

2022.7.22
《白井渚/シライナギサ》<br>水墨画を彷彿とさせる美しいうつわ

マットな素地にひと筋の霧が流れ出たかのような静謐な佇まい。石川県金沢を拠点に作陶する白井渚さんのうつわは、日本の伝統技法「墨流し」を取り込んだ独自技法「霧流し」にてつくられる。スタイリッシュで現代の生活に映える、白井さんの作品とともに制作背景に迫る。

白井渚(シライナギサ)
1991年栃木県生まれ。愛知県立瀬戸窯業高校を卒業後、瀬戸市新世紀工芸館を経て金沢卯辰山工芸工房へ入所。2017年日本クラフト展入選、2018年テーブルウェア大賞入選・そば猪口アート公募展 準大賞、2019年金沢市工芸展 めいてつ・エムザ社長賞。現在は金沢を拠点に作陶している。

独自技法「霧流し」が生み出す
白と黒の共演

金沢の街と豊かな自然を望む高台に建つ白井渚さんの自宅兼工房。ゆったりとした空気が流れるこの場所から日々生み出されているのは、おもに磁器土を使った緩やかな流線を描く美しい形のうつわ。そして、白と黒の二色から織りなされる、水墨画を彷彿とさせる美しい濃淡が白井さんのうつわの魅力だ。

この世界観をつくり上げている最大の要素が、国内外で古来から伝わる伝統技法の「墨流し」を取り込んで再解釈し、日本的な感覚を余白に表現した白井さん独自の技法である「霧流し」だ。
通常墨流しでつくったものは作品全体に模様が入っていたり、派手な模様であることが多いが、白井さんの霧流しを使った作品は、生活や空間に馴染むよう、派手な模様にしすぎず、「間」を意識してデザインされている。あえて足さず、引き算を選ぶ潔さ。そうして日本独特の美意識である「余白」を落とし込んだうつわは、クラシックな和室にも馴染みながら、現代的な洋室の中に置いてもよく映える不思議な魅力を放つ。

白井さんの世界観を構築する上でもうひとつ欠かせない要素が、石膏型を用いた鋳込み(いこみ)技法である。石膏型の内側に泥漿調整を行った陶磁器土の層を一様につくる成形方法で、おもに大量生産の場合に使われることが多い。しかしながら、白井さんは「使い方によっては表現の可能性が広がる素材」と話し、一つひとつ丁寧に、独自の質感をつくり上げていく。こうしてマットで薄く繊細な質感と、洗練された雰囲気の中にも温かみを感じる柔らかなフォルムが出来上がる。そして和洋どちらにも馴染むアート性の高い作品が生み出されるのだ。

金沢市内にある自宅兼工房からの風景
工房内

制作工程

鋳込みに使う石膏型。繰り返し使える
鋳込みには泥漿土(でいしょうつち)を使う。泥漿土とは、磁器土を水と薬液・珪酸ソーダで調整した液体状の土で、生クリームのようになめらかな見た目。白井さんが自身で調整している。白と黒の泥漿土をつくり、石膏型に土を流し込むときに白と黒の土を同時に入れ、型を回しながら土を流すことでマーブル模様ができる
型の中に土を流し込み、数分経った後泥を出す。そうすることにより型の内側に泥の膜ができ、乾燥したら型から外せる
皿などの表面に模様が出ているものは、最後に 反対色の土を垂らし、流して模様をつくる
陶芸窯で素焼きは800℃、本焼きは1250℃まで温度を上げる
焼き上がり

「白黒のバランスは調整可能ですが、偶然にできる模様のコントロールしきれない楽しさを残したい」と白井さん。そんな遊び心が一つひとつ異なる模様を生み出し、ふたつとない美しさを放つのだ。部屋のテイストを問わず溶け込みながら洗練された雰囲気を醸し出す白井さんの作品は、日常使いからアートまで、さまざまなアプローチで私たちの暮らしを豊かにしてくれる。

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