《ガラス作家・西村青 個展》前編
|渋谷PARCO Discover Japan Lab.で夏支度
今年も暑い夏がやってきました。うだるような暑さの日々を快適に、心豊かに、潤してくれるすてきなものたちが、日本各地から渋谷パルコ「Discover Japan Lab.」に集まっています。
2022年7月16日(土)~7月31日(日)にかけて、「西村青 個展」が開催。初日は西村さんご本人も在廊予定!
自分だけのお気に入りとして、大切な誰かへのお中元・夏ギフトとして、ぜひ。店頭だけでなく、公式オンラインショップからもお買い求めいただけます。
西村青(にしむらせい)
1990年、奈良県生まれ。高校卒業後にイタリアへ語学留学した後、富山ガラス造形研究所に入所。修了後の2014年より、ガラス作家ピーター・アイビー氏の工房「流動研究所」に勤務。現在も富山を拠点に、リサイクル素材を用いた吹きガラスによる作品づくりに取り組む。
そこにあるだけで美しく、手が触れたときに
喜びを感じる、ガラスのうつわ。
夏に買い足したい、暮らし回りの品の筆頭格といえば、「ガラスのうつわ」。眺めて、触れて、使って、涼をもたらしてくれる……お気に入りのガラスのうつわがあれば、夏の食卓はいっそう豊かになる。
今回、渋谷PARCOの1階にあるDiscover Japanの直営店「Discover Japan Lab.」では、特別展を開催!
ものづくり大国・富山を拠点に活躍する気鋭のガラス作家・西村青(せい)さんが手掛けるガラスのうつわが、一堂に会する。アートピースのような美しい佇まい。そして「触れる」ことで気づく「使い心地」のよさ。一度手にすれば、西村さんのうつわが、きっと好きになる。
唯一無二な手技が
美しい日用品を生み出す。
1200℃近くの熱で溶かした砂などの原料は、徐々に冷えて固まることで透明なガラスとなる。
クラフトの一大産地として知られる富山県で活動をする西村青さんは、そんなガラスを使ったうつわを昔ながらの吹きガラスの技法でつくるガラス作家だ。
高校を卒業後、ものづくりの道に進むことを決意。ガラスづくりの伝統があるイタリアに語学留学をした西村さんは帰国後、富山でガラス作家として道を歩みはじめた。県内で活動するガラス作家のピーター・アイビー氏に師事しながら手掛けたうつわが評判を集める。西村さんのガラスは師匠譲りの技で仕上げる繊細な薄いガラス、独自の造形、廃蛍光灯のリサイクルガラスを使った青みがかった自然な色合いに特徴がある。
自分自身が使いたいと思えるかどうかを大切にしながら、うつわのデザインをするという西村さん。
「吹きガラスをしているとガラスが自然になりたいかたちがあることがわかってきました。ガラスにとって無理のないかたちと、デザインのバランスを見極めながらつくっています」
物質としてのガラスがもつ「温かみ」が、手にすることの喜びをもたらしてくれる西村さんの作品。うつわに触れる位置にアクセントがあるのもその作品の特徴。ストイックでシンプルな造形の中に、持つという感覚を大切にしながら、必要最低限のオリジナルの意匠が控えめに施されている。
「一人のクラフトマンとして、どんなかたちが美しく、どうしたら自分らしいガラスになるのかを考えながら日々つくっています。一方、ガラスには割れてしまうとか、危ないというネガティブな側面もあるかもしれません。そんなはかないガラスの断面の美しさを表現として取り入れているのが、スリットを入れた作品です」
ガラスづくりは身体や精神と直結していて、スポーツと通じるところがあるところもおもしろいと西村さんは話す。
「そのときの体調や精神面が自然にかたちに反映されていきます。だから美しいかたちをつくるためにも普段から心身ともに健やかでいることを心掛けています。現代の技術では機械でも吹きガラスと同じようにつくることは可能です。でも、だからこそ私がつくるものには、自分がつくったという『痕跡』をどこかに残したい。そんなところも含めてガラスを楽しんでいただけたらうれしいです」
コレクターも多い西村さんのガラスのうつわ。ユース・カルチャーの発信拠点である渋谷での個展となる今回は、西村さん自身も楽しみにしていることがあるという。
「先日数年ぶりに渋谷を訪れたのですが、その賑わいに驚きました。自分もそうでしたが若いうちはいろんなものに興味があるので、うつわにお金をかけることは難しいかもしれません。ですが歳を重ねたいまでは、うつわも生活の基盤をつくる上で大事なもののひとつであると実感しています。私がつくったコップが誰かの生活の一部になってくれたら、ものづくりの励みにもなりますし、これ以上にうれしいことはありません」
みずみずしい魅力をもつ西村さんのガラスのうつわ。日常の中で楽しんでみてはいかがだろうか。
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text: Takashi Kato photo: Hisashi Ogawa
2022年8月号「美味しい夏へ出掛けよう!」