HOTEL

1300年以上の時を刻む、奈良を味わう滞在
MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS
異なる価値の共存、共生を感じる

2022.3.31
1300年以上の時を刻む、奈良を味わう滞在<br>MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS<br><small>異なる価値の共存、共生を感じる</small>
MIROKU 奈良は奈良公園の南端にある荒池に隣接している。北側には世界遺産の興福寺があり、五重塔を望める客室もある。観光地でありながら静かな環境だ

8つの資産が世界遺産に登録されている奈良県奈良市。古都として、いまも多くの人々を魅了している。それらを堪能できるエリアにオープンしたのはホテルの外でも中でも奈良を感じられる空間だった。

空間に息づくローカルの文化を
目で、手で、耳で。

客室は全7タイプがある。写真は隣接する荒池と春日山原始林を眺められる、洗練された和洋室「Junior Suite」。ツインベッドとリビングセット、デスク、ミニシンクがあり、小上がりに布団を敷くことも可能

平城京遷都からおよそ1300年。奈良時代に東大寺などが建立された古都・奈良は、現在もその面影を残しながら息づいている。それを感じられるひとつが、平城京の外京にあたる「ならまち」。当時の道筋をもとに発展した町で、江戸時代末期から明治時代の町家が並んでいる。

そのならまちの先に2021年9月にオープンしたのが「MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS」。近鉄奈良駅から徒歩10分。同ホテルの西側にはならまちが、北側には世界遺産である興福寺や東大寺を含む奈良公園が広がる。東側は奈良公園南端の荒池に隣接していて、遠くに春日山を望むことができるなど、自然と街が融合するエリアなのだ。

Junior Suiteには、家具メーカー・カリモクと建築家・芦沢啓治さんが協業したブランド「カリモクケーススタディ」のソファが
客室の壁には、福祉施設「たんぽぽの家」に所属し、障がいのある人のアートを発信する「エイブルアート・カンパニー」のアーティスト・澤井玲衣子さんの作品が掛かる

同ホテルは、リビタが手掛けるライフスタイルホテル「THE SHARE HOTELS」の9号店となる。ライフスタイルホテルとは、デザイン性の高い空間や宿泊以外の付加価値、一人ひとりに合わせたサービスを提供するホテルのこと。施設ごとに独自のコンセプトがあり、新しい過ごし方を提案してくれる。

奈良ならではの音響設備
館内、カフェバーや客室「Junior Suite」に設置されている奈良市の工房「listude」のスピーカー。楽器のように全方向へ音が広がる

THE SHARE HOTELSのコンセプトは、「SHARING WITH LOCALS 地域との共生」。MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELSの場合は、「共生の奈良」を感じられる滞在を楽しむことができる。

「都として栄えた奈良では、大陸からもたらされた文化と日本古来の伝統が融合し、日本独自の文化が生み出されました。現在もこのエリアには寺社、古いものと新しいもの、都市と自然など異なるものが共存しています。当ホテルでは、異なる価値観の共存を館全体で表現しています」

景観やしつらえも奈良尽くし!
春日山原始林と興福寺の五重塔が見られる和洋室「Superior with Mt.KASUGA view」
吉野杉を大胆に用いた地階の客室「“The Roots of Nara”(Superior)」

そう話すのは、同ホテルの企画やリノベーションを担当したリビタの上野智博さん。ここは、ホテルの外でも中でも、さまざまな“奈良らしさ”を堪能できるのだ。

空間をつくり上げたキーパーソンは3人いる。1人目は、地上4階部分のインテリアデザインを担当した建築家・芦沢啓治さん。館内や客室に奈良の素材やブランドを取り入れ、観光から宿泊までがシームレスにつながるよう意識したという。

奈良の素材に触れられる 宿泊者専用ラウンジ
茶を飲んだり読書ができる地下1階のラウンジ「TEA TABLE」は、宿泊者専用の空間。5つの飛鳥石からなるテーブル、吉野杉の丸太を使ったカウンター、土壁などが重厚な雰囲気を醸す

2人目は、地下フロアを担当した建築家・美術家の佐野文彦さん。吉野杉や飛鳥石などの素材を用いてプリミティブな奈良の魅力を表現した。

滞在中は、奈良公園に生息する鹿(上写真)との出合いも楽しみたい。MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELSは、奈良公園南端の荒池に隣接しているため、時間帯によっては、テラス先まで鹿が訪れることもあるとか
カフェのセンターで存在感を放つテーブルは、奈良県産の吉野杉の、5m40㎝という長い一枚板を贅沢に使用している。また、その上の照明には、吉野手漉き和紙の伝統手法を守る宇陀紙を掛けている

3人目は、奈良市にあるカフェ・雑貨店「くるみの木」のオーナー・石村由起子さんだ。カフェバーのメニューを監修し、朝食はもちろん、ドリンクやスイーツ、夜食などに奈良産の食材や奈良の郷土料理が取り入れられている。カフェで人気なのは、荒池側にしつらえられたテラス席。奈良公園の景色や外の空気を味わいつつ奈良らしい食を楽しめる、このホテルらしさを享受できる空間のひとつだ。奈良公園の鹿たちがテラスの近くまでやって来ることもある。

奈良がもつ歴史や文化と、プロのセンスが光る空間。そのどちらも味わうことができる旅で、心身に豊かな時間を刻んでほしい。

人と鹿が共生する原始の森を感じながら、
地産の食をいただく。

朝の洋食
大和ポークのスライスハム、ゆで卵、ニンジンの自家製ラペ、紫キャベツの自家製マリネなどがのったプレートのほか、ならまちのベーカリー「ミアズブレッド」のレーズンパンが付く。奈良産の食材をふんだんに使用。

朝の和食
奈良県産こんにゃくまたは粟麩の味噌田楽、奈良漬、奈良市月ヶ瀬産の梅干しなどがのったプレートのほか、奈良県産の白米・ひのひかり、「くるみの木」ブレンドの出汁を使った味噌汁、野菜のせいろ蒸しが付く。

1650円

夜のほうせきセット
ユズを丁寧にくり抜き、その中に米麹味噌などを入れてつくる奈良県十津川村の伝統保存食「ゆべし」、生ハム、ナッツなど、酒に合う肴がセレクトされている。

大和ほうじ茶のお茶漬け 1000円、にゅうめん 1000円

大和ほうじ茶のお茶漬け
奈良県産の白米・ひのひかりに奈良市月ヶ瀬産の梅干しなどを添え、香ばしい大和ほうじ茶でお茶漬けに。ほかに三輪そうめんを使ったにゅうめんも。

左)自家製果実酒 800円、右)果実ソーダ木苺 700円

プチプチとした食感を楽しめる、甘酸っぱい「果実ソーダ 木苺」が人気。季節ごとに用意されている「自家製果実酒」。写真はキウイといちご。ほかに、みかん、りんごと和紅茶などがある。

MIROKU 奈良 by THE SHARE HOTELS
住所|奈良県奈良市高畑町1116-6
Tel|0742-93-8021
料金|1泊素泊まり 1万2000円~(税・サ込)
客室数|44室
カード|AMEX、DINERS、JCB、VISA、MASTERなど
IN|15:00
OUT|10:00
朝食|CAFE & BAR MIROKU TERRACE
アクセス|JR奈良駅から徒歩20分、近鉄奈良駅から徒歩10分
施設|CAFE & BAR MIROKU TERRACE、TEA TABLE、SHOWCASE(ショップ)など
Wi-Fi|あり
 
 

≫公式サイトはこちら

 

text: Yoshino Kokubo photo: Yuta Togo
Discover Japan 2022年5月号「ニュー・スタイル・ホテルガイド2022」

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