福井の「工芸の美」を味わう【後編】
伝統を身近にしてくれる旅へ
1500年の歴史を持ち、しなやかに変化を遂げる漆器と和紙の里、福井県。後編では、“本物の美”を求めて、越前市を訪れた。
触れて買って味わう。
本物は妥協しない。
続いて向かうは漆の里・河和田地区からふたつの谷を隔て、車で15分ほどの距離にある越前和紙の里・越前市今立地区。清流を用いた紙漉きが盛んなこの地域は、全国で唯一、紙の神さまを祀る神社があり、大きさなどで住み分ける紙漉き工房や紙問屋が点在する。
その中のひとつ「山次製紙所」は、オリジナルの和紙「浮き紙」を使ったプロダクトを意欲的に発表する。「越前和紙を現代の当たり前にしたい」と語る山下寛也さんが手掛けたのが、もとは壁紙用途で生産していた浮き紙の特性を生かした日用雑貨。独自の手法で深い凹凸が漉き出された浮き紙は、和紙ならではの風合いをいっそう引き立て、柔らかい表情で身の回りを彩ってくれるだろう。近隣には、大判和紙を大規模施設や飲食店などに用いられる内装素材に変身させた紙問屋「和紙屋 杉原商店」もあり、現代における和紙の可能性を感じられるはずだ。
最後に、旅の醍醐味である食事処のひとつとして「亀蔵」をおすすめしたい。福井県丸岡産そばの実を自家製粉し、毎朝店主が手打ちするそばを、越前焼のうつわに盛り越前漆器の盆や箸を添えて提供。妥協なしのメイド・イン・福井に満ちた一品を堪能できる。
2024年には北陸新幹線開通が予定されている福井。この冬行くもよし、開通後に行くのもよし。躍進を続ける福井は、古くて新しい出合いにあふれている。
スポット紹介
1500年変わらぬ清流を漉き込む
和紙から生まれる現代クラフト
「山次製紙所」
目録を包む奉書紙などに用いられる手漉きの美術小間紙の製紙所として、明治元年に創業。現在では「流し漉き」を主流に、日本酒ラベルを生産するほか、オリジナル和紙「浮き紙」を使った茶缶やカードケースなども販売。セミオーダーも受け付けている。
山次製紙所
住所|福井県越前市大滝町29-5
Tel|0778-42-0553
営業時間|8:00〜17:00
https://yamatsugi-seishi.com
※購入はオンラインショップのみ
全国唯一!紙の神さまを祀る社
「紙祖神岡太神社・大瀧神社」
約1500年前、和紙の里・五箇地区を流れる川の上流に現れ、紙漉きの技術を伝えたとされる、女神・川上御前を祀る。財務省造幣局にも分祀されている、拝殿と本殿がひと続きとなった里宮の連結社殿は国の重要文化財。
紙祖神岡太神社・大瀧神社
住所|福井県越前市大滝町13-1
Tel|0778-42-1151(社務所)
国立競技場にも福井の伝統工芸が
「和紙屋 杉原商店」
越前和紙の問屋として明治時代に創業し、ショップ&ショールームもオープン。紙小物をはじめ、大判の和紙といったインテリア向け素材も取り揃える。隈研吾が手掛けた国立競技場の和紙照明の紙は同社が納入。
和紙屋 杉原商店
住所|福井県越前市不老町17-2
Tel|0778-42-0032(完全予約制)
営業時間|9:00〜17:00(第4土曜のみ)
www.washiya.com
在来種そばを心ゆくまで味わう
「亀蔵 蕎麦と 旨酒と」
福井県丸岡産のそばの実を自家製粉、手打ちで提供する十割そばの店。出汁は鰹節がベースで、メニューに合わせて6種類ほどを使い分ける。すだちそばのほか、そばを使った一品ものも人気。
亀蔵 蕎麦と 旨酒と
住所|福井県鯖江市東鯖江1-1-3 MM6ビル1F
Tel|0778-42-8199
営業時間|11:00〜15:00(L.O.14:30)、17:30〜21:30(L.O.21:00)※そばがなくなり次第終了
定休日|火曜(祝日の場合は営業)
www.soba-kamezou.jp
伝統工芸を楽しむ、
チョコレートと漆器のコラボレーション!
チョコレートと漆器のコラボレーション!
チョコレートブランド・ゴディバが、福井の伝統工芸の価値に共鳴し、チョコレート専用の箱「バロタン」に越前漆器を、包み紙に越前和紙を使用した商品を開発中。首都圏で展開される「GODIVA café」で12月中旬発売予定!
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text: Makiko Shiraki photo: Sadaho Naito
2022年1月号「酒旅と冬旅へ。」