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クリエイターがインスピレーションを感じる街、高岡へ
「市場街2021」【後編】

2021.12.16 PR
クリエイターがインスピレーションを感じる街、高岡へ<br>「市場街2021」【後編】

職人とクリエイターが出合い相乗効果を生み出す、富山県・高岡。時代が変化する中で、高岡は時に立ち止まりながらも歩みを進めてきた。いま街を動かすキーパーソン3人から、受け継がれてきたものを語ってもらった。

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高岡クラフト市場街
副実行委員長
有田行男さん(写真左)
富山大学芸術文化学部・大学院芸術文化学研究科准教授。京セラ、日本電気の勤務を経て、現職。大学では「高岡クラフト市場街」プロジェクト実習を担当している。

高岡クラフト市場街
実行委員長
國本耕太郎さん(写真中央)
「漆器くにもと」の4代目で、職人と他業種をつなぐ伝統工芸産地プロデューサー。伝統工芸とアウトドアを融合したブランド「artisan933」の共同設立者も務める。

高岡伝統産業青年会
会長
羽田 純さん(写真右)
1984年、大阪府生まれ。高岡市の芸文ギャラリーでキュレーションを8年担当した後、クリエイティブスタジオ「ROLE」を設立。富山を拠点に幅広い分野でデザインを行う。

文化創造都市「高岡」は
いかにアップデートされ続けるのか?

國本耕太郎さん(以下、國本) 10回目となる高岡クラフト市場街が、無事開催できました。昨年のオンライン開催に続き、初のリアルとオンラインを組み合わせた今年のハイブリッド開催も、なかなかおもしろいものになりましたね。

有田行男さん(以下、有田) この10年を振り返ると、2011年には東日本大震災があり、その影響もあってスマートフォンの普及も一気に広がりました。日常生活が変わっていく中に、市場街も存在していました。そう考えると、昨年はオンライン開催についての議論もありましたが、世の中を考えると、当然の進化であったのだと感じています。

國本 市場街を中心となってスタートさせたのは、元富山大学教授の松原博さん(初代高岡クラフト市場街実行委員長)。当時、松原さんの周りには高岡の職人や行政の人などさまざまな人が集まっていました。振り返ると、そこで自然と産学官金の連携が生まれたのかなと。昔は職人さんが表に出ること自体がタブー視されていましたが、市場街を通して職人たちの顔がより見えるようになり、問屋も新しいスタイルをつくり出すように変化しましたよね。

羽田純さん(以下、羽田) 当時職人たちがしたかったことと、世の中の需要がハマったのが市場街のはじまりだったと思いますね。工芸都市高岡クラフトコンペを起点に、周辺で自ら展覧会を行う人たちも出はじめていました。当時、松原さんが言っていた「点から線へ、線から面へ」にうまく進化できた時期でもあったと思います。「高岡」というキーワードを頼りに全国から人が集まり、この場所でつながっていく。ここに来る人たちは、ものよりも人に会いに来た感覚が強くて、その関係性をつくれたことに価値を感じています。

有田 高岡市では、’15年に「文化創造都市高岡推進ビジョン」がつくられています。当時、市場街はアイテムとしては存在していたけれど、街づくりの核になるとは考えていなかったのではないでしょうか? 推進ビジョンの中にコンテンツは多くありましたが、市場街というイベントによって、金屋町や銅器団地を巻き込んでプラットフォームとして大きくなり、このビジョンに重なったということが街にとって、よかったのかなと思っています。

羽田 ほかの地域の人たちと話をしたときにうらやましがられるのは、高岡にある団体同士のかかわり、組織体系ですよね。クリエイターがいて、大学があって、行政も参加しながら、街の人と職人が協働する。オールスターで活動する理想的な構図です。

有田 私はもともと、都内で働いていたので産学連携のイメージはできても、産学官と言われるとピンとこなかった。しかし、地方に来てみると行政の存在はとても大きいんです。街づくりも大切になってきますから、連携するときに官は外せない。官と産をどうつなげていくかが大学の役目だと思っています。デザインや芸術を学べる国立大学は少なく、多くの富山大学の学生はほかの地域から来ています。せっかく地域で学んでいくわけですから、首都圏では学べないような実践的な学びを生徒たちに提供していきたいですね。

羽田 多様な職人が集まる高岡伝統産業青年会では、今後は集団としての力だけでなく、個の力も強めていって、クリエイターとつながりたい人の窓口をつくっていきたいですね。’22年の2月には、これまで首都圏で行っていた高岡伝統産業青年会の展覧会を、はじめて地元・高岡でも開催予定です。

國本 職人やクリエイターと何かやってみたいけど、どう実践したらよいかわからない人こそ、高岡に来てほしい。特に市場街の期間は、さまざまな人やものが融合して独自のコンテンツを生み出しているのでおもしろいと思いますよ。これからも市場街を進化させていきます。ぜひ高岡で皆さんにお会いできる日が来ることを、心から楽しみにしています!

内外の関係性が文化創造都市誕生のカギ

高岡伝統産業青年会
高岡の伝統産業に従事する40歳までの若手で構成され、近年は他業種からの参加者多数

高岡市
文化創造課及びデザイン・工芸センターを中心に「文化創造都市高岡」を推進するべく市場街をサポート

富山大学芸術文化学部
市場街開催にあたって実務的な部分を担う。特別実習として単位取得も可能

山町筋・金屋町
ともに市場街メインエリアのひとつであり、重要伝統的建造物群保存地区

クラフツーリズモ
企業向けだった工房開放を一般に広げ、つくり手と直接交流できるよう2012年から開始

工芸都市高岡クラフトコンペティション
35年続く伝統工芸産地発全国公募展。若手登竜門として世界に羽ばたく作家も多数輩出

アート&クラフトシティ高岡推進委員会
歴史資産やアート、ものづくりの文化を活かし、それらの推進につながる取り組みを行う

クリエイ党
富山大学芸術文化学部の学生有志と、高岡の職人によるものづくりプロジェクト

富山県総合デザインセンター
オンライン開催にあたり技術面をサポート。センター内のバーチャルスタジオは配信拠点として活用

高岡の文化が体感できる3つの舞台へ

400年の歴史と先人に敬意を払いながら、つながり続ける高岡の文化。この街を存分に楽しむために、まずは訪れたい代表的スポットをご紹介。

〈体験〉
高岡の産業を牽引する、クラフトツーリズムの聖地
「能作」

錫(すず)を中心とした鋳物メーカー「能作」の本社工場では、錫製のぐい呑みなどが職人と同じ技法でつくれる鋳物製作体験が人気。高温の錫を流し込む作業はスタッフが行うが、砂を使用した鋳型の製作、やすりによる研磨、数字やアルファベットなどの刻印打ちは自らの手で行える。ガイド付きの工場見学(要予約)や、能作のうつわで食事を楽しめるカフェもあるため、好みに合った過ごし方で楽しんでほしい

 

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〈食事〉
地元食材と高岡のうつわが織りなす日本料理
「茶寮 和香」

高岡市で生まれ、大阪の名店「一汁二菜うえの」などで修業した早川勇人さんが2015年に開店した日本料理店。町家づくりを生かした梁の残る吹き抜けの天井は、歴史ある金屋町の情緒を感じさせる。「お品書きはその日の朝に決め、お客さまの顔を思い浮かべながらつくる」と早川さん。花鳥風月を取り入れた美しい料理の数々が、高岡を中心としたこだわりのうつわに盛られ、舌に加えて目でも美食が楽しめる

 

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〈宿泊〉
鋳物文化を伝える一棟貸しホテル
「民家ホテル金ノ三寸」

高岡の鋳物メーカー「四津川製作所」の代表・四津川元将さんが手掛けた民家ホテル。8名まで泊まれる「八」と4名まで泊まれる「月」の2棟からなり、宿泊中は備えられた四津川製作所のうつわや客室に飾られた鋳物から、高岡銅器の魅力を暮らしの中で体感できる。鋳物が輝くラグジュアリーな1階に対し、2階は残る落ち着いた雰囲気。キッチンや収納などの設備やアメニティも充実しているので、長期滞在にも便利

 

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市場街2021(高岡クラフト市場街)
開催期間|10月16 ~ 24日の9日間
会場|富山県高岡市の中心市街地(山町筋エリア、御旅屋エリア、金屋町エリア)及び戸出エリア、勝興寺、善興寺の全26会場、YouTube
問|高岡クラフト市場街実行委員会
Tel|0766-20-1255(高岡市文化創造課)
https://ichibamachi.jp

 

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text: Kaeko Ueno photo: Atsushi Yamahira
2022年1月号「酒旅と冬旅へ。」

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