ART

高岡の伝統産業を牽引する
「能作(のうさく)」の進化が止まらない!

2021.12.6
高岡の伝統産業を牽引する<br>「能作(のうさく)」の進化が止まらない!

1916年から鋳物の製造を開始し、錫(すず)製品が人気の「能作」は、2017年4月に新社屋を完成させ、ものづくりと産業観光のふたつにつながりをもたせた。産業観光のトップを走る「能作」の新たな試みを、専務取締役の能作千春さんに伺った。

高岡の伝統産業×観光の中心として

曲がる金属「錫」の特性を生かし大ヒットした「KAGO」シリーズをはじめ、数々の錫100%製品を生み出し続ける鋳物メーカー「能作」。2017年4月に新社屋を完成させてから、地域の産業観光のハブとして役割を担ってきた。富山県高岡市の豊かな水源と静かな田園に抱かれた高岡オフィスパークの一画に現れた約4100坪の敷地に、山脈を思い起こさせるような建物は、この6年間、確実に人と人や企業と企業、国と国をつないできた。

エントランスを抜けて、まず目に入るのが、「TOYAMA DOORS」。能作社員がおすすめのスポットを取材し作成した観光カードから、地元の人しか知らない富山県の情報を得ることができる。予約制鋳物製作体験「NOUSAKU LAB」で自分だけの錫製品をつくり、「IMONO KITCHEN」で地元食材をふんだんに使用した食事を錫のうつわで楽しむ。予約制工場見学でものづくり技術に触れ、工場の様子を見たら、お土産は本社工場限定品が手にはいる「FACTORY SHOP」で。

視察や団体での利用はもちろん、地元の人が友人を連れてくるケースも多い。地域に根ざしながら、関係人口を増やしている好例といえるだろう。

建築設計は「アーキヴィジョン広谷スタジオ」の広谷純弘さん、什器・内装を「Koizumi Studio」の小泉誠さんが手掛けた能作社屋。ロゴデザインは「水野図案室」の水野佳史さん、プランニングは「t.c.k.w」の立川裕大さんが担当した。日本を代表するクリエイターたちと、よい関係が築かれている
エントランスに展示されているのは、「能作」が生地をつくり、高岡市の100人の職人たちが手業を施した一輪挿し「そろり」。鮮やかな作品群が工場を訪れる人々を出迎えてくれる。それぞれ受注後生産での購入も可能
社屋の中央には、実際に使われている木型が展示されている。もし、抜けている場所があれば、現在まさにその木型で製造中というしるし! 年に一度しか使われない木型もしっかりと保管されている
床には真鍮製の日本地図が! 実際の方角に従って描かれており、所縁ある地域を探し出して楽しむ人々も多いそう。富山県の形をしたテーブルにはプロジェクションマッピングで観光案内が映し出される

職人の技術を多様なかたちで体感する

新型コロナウイルスの脅威は、能作にも大きな変化をもたらした。2019年には年間13万人にまで増えた来場者が、2021年には8万人に。しかし、団体旅行から少人数の旅行へシフトしたことにより、消費者満足度はコロナ前よりも上がったのだ。工場内には入れないけれどガラス越しに丁寧に説明することで、訪れた人とより深い関係が築けるようになった。「11月1日からは1回15人限定で体験も再開しました! また、お客さまにより鋳物を楽しんでいただけて、とてもワクワクしています」と能作千春さんは言う。

「いまはコロナによって、人と顔をあわせる機会が減った子どもたちに企業として何ができるかということを常に考えています。2020年3月には2000人の卒園児に、チョコレートで鋳物のつくり方を勉強できるキットを無償で配りました」。人に幸せを届ける企業の軸は、コロナ禍を通じてより強くなったようだ。

鋳物場では熱や音、匂いや振動を肌で感じることができる。デッキからは全体像を、下に降りていくと間近に作業が見学できる。仕上場では、製品の研磨工程が見られる(※現在、工場見学内容は状況によって変化あり)
鋳物製作体験が人気の「NOUSAKU LAB」。実際に職人と同じ、砂を押し固めて鋳型をつくる「生型鋳造法」で、錫100%製のぐい呑や小皿などをつくることができる(要予約)。世界にひとつ、自分だけのものをつくろう!

ものづくりだけに囚われない産業観光の在り方を

現在、製造業だけにとどまらず、旅行業として「想い旅」、ブライダル業として「錫婚式」を展開している能作。能作千春さんは、自らやろうとしていることに多くの可能性を見出している。「このコロナ禍で企業として、さまざまな資格を取りました。それは今後に向けて、多様な種を蒔いていくことになると思うんです」と語る。

「ここを訪れた人がどこに泊まればよいですか? と聞いてくれたら、それに応えたい。そのほかのことも、自分たちができることがあればやりたいんです。2017年に能作は、台湾にも店舗を構えました。海外観光も技術交流をはかりながら、現地の方々と連携していきたいと思っています」

鋳物の製作にとどまらず、時代に合わせて挑戦を続けてきた能作。これからどんな進化を見せてくれるのか、その動きに注目したい。

美しさと柔らかさをもつ錫のような関係が続くことを願って、ウェディング事業「能作錫婚」を展開。結婚10周年を祝う「錫婚式」は、初年度である2019年に50組が式を挙げた。年を経るごとに風合いを増す錫は、縁起ものとしても◎
贅沢な食と宿とクラフト体験が楽しめる「想い旅」。能作と、木彫の町・富山県南砺市井波にある一棟貸切の宿「Bed and Craft」が、温かい記憶として心に残るような旅を提供する

能作
住所|富山県高岡市オフィスパーク8-1
営業時間|10:00~18:00
定休日|なし(工場見学は土・日曜、祝日の工場非稼働日)
Tel|0766-63-0001(見学・体験窓口)
www.nousaku.co.jp

text: Kaeko Ueno photo: Atsushi Yamahira,Junjiro Hori
2022年1月号「酒旅と冬旅へ。」


 

高岡に来たら先ずは訪れたい
日本料理店「茶寮 和香」

≫記事を読む
 

富山のオススメ記事

関連するテーマの人気記事