クリエイターがインスピレーションを感じる街、高岡へ
「市場街2021」【前編】
専門的な技術でものをつくり出す職人と、音楽や映像などを創造するクリエイター。このふたつが出合い相乗効果を生み出す、富山県・高岡の魅力とは?
伝統とクリエイティブの掛け算が
市場街だけのコンテンツを生む
澄んだ光の中に、時々凛とした風が吹き、色づいた木の葉が揺れる。富山県高岡市でクラフトの祭典「高岡クラフト市場街」が開催される時期は、柔らかな陽が差す美しい季節である。
高岡クラフト市場街がはじまって今年で10周年。もともとこのイベントは、日本唯一の総合クラフトコンペ「工芸都市高岡クラフトコンペティション」の活性案として提案されたもののひとつ。同じく高岡の伝統的な建物が多く残る地域で開催されていた「金屋町楽市 in さまのこ」や、クラフトコンペの入選作品を購入できる「工芸都市高岡クラフト展」が、以前は同時期に個別開催されていた。高岡が歩んできた歴史や文化の物語が「加賀前田家ゆかりの町民文化が花咲くまち高岡—人、技、心—」として日本遺産に認定され、点在していた3つが「高岡クラフト市場街」を中心に合わさり、ひとつの線となったのだ。その時代を支えていたのは、産学官金といった地元産業、大学、行政、金融機関、そして自治体コミュニティの人々だ。この連携のかたちは、いまも変わらない。
10年の中で確実に変化したこと、それは高岡に生活拠点を置いていない人々のリピート率だ。昨年のオンライン開催を経て、今年はリアルとオンラインの両方を兼ね備えた初のハイブリッド開催で実施。富山大学の学生と高岡の職人の融合で生まれた作品を展示したり、南砺市・利賀村の秘境レストラン「L’évo」で富山の食とクラフトの共創にフィーチャーした映像を配信したりと、26のリアル企画、43ものオンライン企画が市場街を通して行われた。
おりん職人・島谷好徳さんと音楽クリエイター・若狭真司さんによるインスタレーションライブを、「富山県総合デザインセンター」内のスタジオで実施し、オンラインで配信
「高岡には日本でも有数の優れた職人さんたちの技術があり、自分たちが行う創造と融合すると、想像もしていなかった化学反応が起こるんです」と参加クリエイターらは語る。高岡で起こった反応が、また別の作品の発想につながる。そのようにして着実に、高岡クラフト市場街は関係人口を増やしてきた。また、今年の催しを細かく見ていくと、さらに新たな変化の兆しも見えている。デッドストックの高岡銅器にサボテンを植えて展示した「わびさびポット展」など、高岡の製作所や企業と地元クリエイターが協働した企画も生まれている。
クリエイターと職人が尊重し合いながら、ものを生み出すかたちが大きな流れとなり、それを楽しむ人たちがいる。この高岡にしかない関係性が、何度も足を運びたくなる街の魅力につながっている。
キーマンにうかがいました!
高岡はいかにアップデートされ続けるのか?
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市場街2021(高岡クラフト市場街)
開催期間|10月16 ~ 24日の9日間
会場|富山県高岡市の中心市街地(山町筋エリア、御旅屋エリア、金屋町エリア)及び戸出エリア、勝興寺、善興寺の全26会場、YouTube
問|高岡クラフト市場街実行委員会
Tel|0766-20-1255(高岡市文化創造課)
https://ichibamachi.jp
※「Creators Meet TAKAOKA」と「高岡クラフトストア」、「わびさびポット展」は市場街開催期間中の特設展示です
text: Kaeko Ueno photo: Atsushi Yamahira
2022年1月号「酒旅と冬旅へ。」