《縄文型SDGs》
1万年のサステイナビリティをビジネスに生かす!
「弥生型ビジネス」が浸透する現代、SDGsはそれにブレーキをかけるための「弥生型処方箋」ともいえます。真のサステイナビリティは、自然と共存共生する「縄文型ビジネス」との融合によって開かれる!?
谷中 修吾(やなか・しゅうご)
ビジネスプロデューサー。BBT大学 経営学部グローバル経営学科学科長・教授。静岡県湖西市出身。東京大学大学院工学系研究科都市工学専攻修了。日本全国で地方創生事業を手掛ける。環境省「グッドライフアワード」総合プロデューサーを務め、ローカルSDGsを推進。著書『最強の縄文型ビジネス』でベストビジネス書として選定。専門は、経営学、都市工学、考古学(縄文)
自社の経営に取り入れたい
「縄文型SDGsの3層モデル」
経営の観点で歴史を見ると、ビジネスの基本構造は弥生時代から変わっていません。大陸伝来の水稲農耕がはじまって「自然を管理する」という手法が確立して以来、支配・被支配の社会構造とともに、人は利益の最大化を求めて事業を営んできました。目標達成の計画を立て、ルールで縛って成果を求め、社会の競争を勝ち抜く。これを「弥生型ビジネス」と称します。
確かに、利益を生み出すには効率のよいモデルですが、恐ろしいことに、際限なく利益を求め続けます。その結果が、いまの地球。利益のために資源を奪い合い、もはや地球が存続できない状態にまで達してしまいました。だから、弥生型ビジネスにブレーキをかけるために、弥生型の処方箋が必要。それが、SDGs。地球そのものを存続させるために達成すべき目標(Goals)を掲げたのです。
企業活動の多くは、SDGsのラベルを貼って自己正当化するパフォーマンス。SDGsの1番から17番までカバーすればミッション完了? 本当は18番目以降だってあるはずです。一部の目標に特化して達成すればOK? ほかの目標に反する行動をしていては意味がありません。つまり、ビジネスの現場において根本的な思想哲学と行動様式が変わらなければ、SDGsは表面的なムーブメントで終わるでしょう。
ここで注目すべきは、弥生時代に先立ち、1万年以上にわたって自然と共存共生した縄文時代。人と自然は二つで一つという思想哲学の下、縄文のムラの生活が営まれました。自然の声に耳を傾け、その恵みに感謝し、ムラ同士が協調しながら、自由に創造的な活動を展開する……。まさに地球と共存共生することに最適化した経営の在り方です。これを「縄文型ビジネス」と称します。
いま、現代ビジネスに必要なのは、闇雲にSDGsに取り組むことではありません。経営の思想哲学と行動様式を組み替えて、必然的にSDGsを達成するビジネスの在り方にシフトしていくこと。経営の本質が利益の最大化を志向する弥生型のままでは、たとえ一時的にSDGsが達成されたとしても、そう長続きはしないでしょう。ルールだから従うのではなく、自発的な行動に落とし込まれる必要があります。
だからこそ、縄文型ビジネスのスイッチをONにするのです。日本には、自然と調和して社会を共創した1万年の実績があります。そして、その文化的遺伝子は私たちの中に継承されています。自然との共存共生という思想哲学の下、直感、協調、創造、感謝という行動様式とともにSDGsの達成へ。この「縄文型SDGs」が実践されてこそ、真のサステイナビリティへの道が開かれるのです。
縄文と弥生の二項対立のフレームワーク
二つ一つの縄文思想
自然と共存共生した縄文人の思想哲学とは?
縄文型SDGsが見出される注目企業とは?
創業以来の経営理念に縄文あり
「サントリー」
共生的な世界観をもつGSMには縄文が宿る
「ヤマハ発動機」
未来ビジョン宣言は現代の縄文ワールド
「ミツカングループ」
最強の縄文型ビジネス
イノベーションを生み出す4つの原則
著者|谷中修吾
発行|日本経済新聞出版
価格|1760円
text: Shugo Yanaka
Discover Japan 2021年9月号「SDGsのヒント、実はニッポン再発見でした。」