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古くから自然とともに暮らしてきた奄美大島の人々【前編】
エコツアーに参加!奄美大島の稀少ないきものに会いに行く!

2021.8.19
古くから自然とともに暮らしてきた奄美大島の人々【前編】<br><small>エコツアーに参加!奄美大島の稀少ないきものに会いに行く!</small>
町の94%を山林が占める住用町の「黒潮の森 マングローブパーク」。1人乗りあるいは2人乗りカヌーで1時間ほどゆっくり探索できるツアーが人気。木々のトンネルや周囲の山々を見渡す川まで移り変わる景色を満喫

天然記念物やそこだけに生息する珍しい固有種が確認される奄美大島。それも特定の種類だけでなくほ乳類や鳥類、両生類、昆虫類、そして植物とあらゆるユニークないきものが暮らす島だ。世界自然遺産に向けていま熱い注目が集まる、いきものの楽園へ出掛けよう。今回は、魅力あふれる奄美大島の自然の世界を4つの記事でご紹介します。

国内屈指のマングローブ原生林へ

主にオヒルギ、メヒルギの2種で構成される住用町のマングローブ。亜熱帯多雨林と並び、奄美大島の生物多様性を保つのに重要なエリアとなっている。陸生、海生の動物がひとつの生態系の中で生きる。展望台からは、壮大なマングローブ原生林の景色を一望することができる

緯度と黒潮の影響によって温暖多湿な亜熱帯性の気候をもつ奄美大島。雄大な自然環境には、北方系と南方系の生物が混在し、アマミノクロウサギやルリカケスといった固有の動植物が多数分布している。国土面積の0.2%に満たない島でありながら、日本で確認される約3万8000種の生物のうち実に5083種のいきものが暮らしている。

多くの固有種や絶滅危惧種を含む「進化の宝石箱」ともいえる自然環境は世界的にも稀少で、その生物多様性の高さは突出している。環境保全の必要性も高いことから、奄美大島は、徳之島や沖縄島北部、西表島と並んで世界自然遺産への登録が決定した。

こういった奄美大島の独特の生態系を知る手段のひとつとして、マングローブのカヌーツーリングがある。奄美市住用町のマングローブ原生林は、西表島に次いで日本で2番目に大きい。マングローブとは、熱帯や亜熱帯の河口湿地帯や、沿岸部の干潟に生育する樹木群の総称。住用町のマングローブは、主にメヒルギ、オヒルギという2種の植物で構成されており、ほかにサキシマスオウノキ、アマミアカラシなど多様な植物が群生している。

潮の満ち引きによって表情を変えるマングローブだが、干潮時の地表はいきものたちの楽園になる。多く見られるのはオキナワハクセンシオマネキやミナミコメツキガニといったカニ類。樹々の根元には、水陸両生魚のミナミトビハゼがとぼけた顔をのぞかせる。水中には、沖縄では絶滅し現在は奄美大島にしか生息しない貴重なリュウキュウアユも。マングローブの「編み籠」のように入り組んだ根は。幼魚の格好の隠れ家になるという。目線を上に向けると、干潟の生き物を捕食するルリカケスやリュウキュウコノハズクといった鳥類が優雅に舞っている。「黒潮の森マングローブパーク」で体験できるカヌーツーリングなら、この豊かな生態系を、生息するいきものに近い目線の高さから観察できる。海水と淡水が混じる汽水域は流れも穏やかで、初心者や子どもでも安心だ。

また、マングローブ原生林を見渡す見晴らしのいい尾根筋には「石原ヨシハラウエノ遺跡」がある。つくられた時期は定かではないが室町から江戸時代初期にかけて構築された山城で、奄美大島では古くから自然とともに人が暮らしてきたことがわかる。現在はマングローブ原生林を見渡す展望台となっているので、カヌー探索の前後でぜひ立ち寄りたい。

潮が引くと地表に出てくるオキナワハクセンシオマネキ。片方のハサミが大きいのは雄だけで、雌のハサミは両方とも小さい。リュウキュウアユやニホンウナギなど珍しい魚を水中で見つけられることも
奄美大島が北限になっているオヒルギ。赤いガクの花を咲かせる。果実は樹になっている状態で種子が発芽し、ある程度の大きさまで母植物から養分を吸収。その後落下して水中へ。湿地に流れ着き、定着し成長する

 

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text: Akiko Yamamoto photo: Yoshihito Ozawa, Tatsuya Hiragi
Discover Japan 2021年8月号「世界遺産をめぐる冒険」


《エコツアーに参加!奄美大島の稀少ないきものに会いに行く!》
1|古くから自然とともに暮らしてきた奄美大島の人々
2|霧深い金作原原生林の幻想的な世界へ
3|奄美大島は稀少種の宝庫。
4|世界自然遺産の旅は自然のスペシャリストに頼るべし。

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