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納豆の栄養は?関西人は納豆嫌い?
今日から役立つ納豆の10の秘密。
《高野秀行さんに学ぶ、納豆の豆知識》

2021.7.12
納豆の栄養は?関西人は納豆嫌い?<br>今日から役立つ納豆の10の秘密。<br><small>《高野秀行さんに学ぶ、納豆の豆知識》</small>

ここでは日本のスタンダード納豆として広く認識され、身近な存在である「糸引き納豆」をクローズアップ。誰かに教えたくなる豆知識をご紹介。

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1.ワラ包みの納豆は、ニッポンだけの調理法だった!

アジアやアフリカでは葉っぱで煮豆を包んで発酵させるが、日本では伝統的にワラで包んで納豆をつくってきた。「日本では冬には葉が落ちてしまうため大きな葉を使えなかったこと、稲作を行っているのでワラがふんだんにあったことが理由でしょう」と高野さん。保温力も保存力も高く通気性もよく、世界的に見てもユニークで優れた仕込み方法であり、日本の先人たちの知恵だ。

2.関西人の納豆嫌いってホント?

関西人はあまり納豆を好んで食べない、という説は「納豆の起源から見れば理にかなう部分もある」と高野さん。「納豆は、肉や魚が手に入りにくい内陸部の山岳地帯で貴重なタンパク源や調味料として食べられていました。西日本は海に近く流通も発達していたことから、環境的に納豆を必要としなかったのかもしれません」

3.調味液あってこそ “日本の納豆”

現代の日本の納豆の特徴は調味液(たれ)が付いていることだ。1980年代半ばから市販の納豆に付けられるようになった。調味液はグルタミン酸とイノシン酸という旨み成分を含み、両者が合わさると人の感じる旨みは倍増するとされる。納豆の生産量が飛躍的に増加した要因のひとつに、調味液付きでの販売があるといわれている。

4.栄養はネバネバに詰まっている!

日本の納豆はアジア納豆やアフリカ納豆に比べて糸引きが強く、「糸を引いてこそ日本の納豆」とのこだわりも根強い。このネバネバの正体は納豆菌がタンパク質を分解する過程でつくられる「ポリ-γ-グルタミン酸」などで、アミノ酸が連なり、長い糸をより集めたような構造になっているため糸を引く。血栓溶解を促し、動脈硬化を防止する働きをもつ酵素であるナットウキナーゼも含まれている。

5.かたち変われば、味も栄養も違う

左から、大粒 小粒 ひきわり

ひきわり納豆は大豆を砕き皮を除いてから発酵させたもので、納豆菌が付着する表面積が広がることでより発酵が進みやすく、匂いや旨みが強くなる傾向がある。栄養価にも違いがあり、ビタミンB2は粒納豆のほうが多く、ビタミンKはひきわり納豆に多く含まれる。

6.秋田の年明けは、納豆からはじまる

高野さんが「日本の納豆の本場」と考える秋田県南部の一部地域では、納豆汁を食す文化が残っている。肉や魚が手に入りにくい厳しい自然環境の中での貴重なタンパク源や調味料として食べられ、いまでも冠婚葬祭や季節行事、正月には納豆汁が欠かせない料理であるという。

7.黄、黒、青……、料理の幅を広げる大豆の違い

納豆の原料としてよく使われているのは黄大豆。ほかにも、より風味が強く甘みも感じられる青大豆や甘く濃厚な香りが特徴の黒豆など、材料の違いで異なる味わいが楽しめる。糸引きにも違いが出るため、火を通したり、サラダに使ったりと、さまざまな食べ方に挑戦しよう。

8.岩手に伝わる幻の雪納豆ってなんだ?

雪深い岩手県西和賀町に伝わる、煮豆を雪の中に掘った穴に埋めて発酵させてつくる納豆。煮豆を朴葉(ほおば)とワラで包み、熱湯を注いだ鍋とともに雪室に入れて温度を保ちながら発酵させる。厳しい自然環境が生み出した知恵だったようだ。雪納豆づくりを唯一実践していた方が亡くなり、現在は本当に幻の納豆となってしまった。

9.納豆にも“旬”があるんです

スーパーなどでは1年中見掛けるため普段は旬を意識することはない納豆。しかし原料の大豆には旬があり、大豆の収穫は例年12月頃で、冬場に発酵させるのが伝統。そのため、1月〜3月頃に加工された納豆は新豆ならではのふっくら感や甘みがあってとても美味しい。

■旬を堪能する収穫から加工までの過程
11〜12月 大豆を収穫
1〜3月 新豆を貯蔵〜発酵

10.かき混ぜるほどに、旨くなる!?

納豆のかき混ぜ度合いには好みがあるが、農林水産省食品総合研究所が行った実験により「かき混ぜる回数が多いほど旨みや甘みが増す」ことがわかった。混ぜるほどに旨みが増し、400回で甘みはピークに。美味しい納豆を食べたくなったら、ぜひ400回のかき混ぜに挑戦を。

■アミノ酸の量
100回かき混ぜる→1.5倍
200回かき混ぜる→2.5倍
■甘み成分の量
100回かき混ぜる→2.3倍
200回かき混ぜる→3.3倍
400回かき混ぜる→4.2倍

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全部食べれば納豆マニア!納豆四天王

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text: Miki Yagi photo: Akio Nakamura, Kazuya Hayashi
Discover Japan 2021年7月号「ととのう発酵。」

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