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緑の中の貸し切り風呂で草津の湯をひとり占め「つつじ亭」

2019.10.24
<b>緑の中の貸し切り風呂で草津の湯をひとり占め「つつじ亭」</b>
本館に宿泊の人のみ利用できる貸切露天風呂「玉の湯」。源泉は湯畑の湯。大浴場とは源泉が異なるので入り比べたい

古くから愛されてきた日本を代表する名湯、草津温泉。この湯を存分に楽しめる名宿が「つつじ亭」だ。広々とした貸切風呂で名湯を独占した後は、ゆっくり旬の美味を愉しみたい。

玄関を入ってすぐのところにあるラウンジ「夢」。到着後まずはこちらでひと息

日本三名泉のひとつ、草津温泉と聞いて、誰もがその光景を思い浮かべるのは、もうもうと湯煙をあげる湯畑。その勢いに誰もが圧倒される。温泉とはかくも力強いものなのか。

草津温泉の何が素晴らしいかといって、その第一は当然のことながら、湯、そのものである。もともと、僕は温泉の質に、さほどのこだわりがない。源泉掛け流しであれば、それに越したことはないが、だからといって、循環式や加温した湯を、端から拒んだりもしない。

いうなれば、どんな湯をも、分け隔てなく愛するという、温泉博愛派である。その僕ですら、草津の湯は別格だと、強く感じる。湯に触れただけで、“効く”実感があり、その湯に身をゆだねていると、じわり、じわりと身体の中に染み込んでくる気がする。

離れの「囲炉裏の間」。囲炉裏の間を中心に、12畳と8畳の和室と専用露店がつく

その、草津の湯を愉しむに、これ以上は望めないと思えるほどに、秀でた宿があるのだから、草津温泉へ足を運ばない理由など、ひとつもない。

草津温泉の中心地である湯畑から少し離れた地に建つ「つつじ亭」は極めて小さな宿である。宿の名が示す通り、ツツジの植栽に囲まれた玄関を潜り、靴を脱いで上がり込む。小ぢんまりとしたラウンジでひと息ついたら、早速部屋へ。大人数なら離れ、少人数なら本館がおすすめ。僕はいつも本館なのだが、それにはひとつ理由があって、草津の名湯を独り占めできるからである。

「玉の湯」とは泉質の異なる大浴場「うららの湯」。緑に囲まれた檜づくりの露天風呂には、万代鉱の湯が満ちている。開放感にあふれ、いつまでも浸かっていたい

この宿で、僕のお目当ては貸切風呂の「玉の湯」。申し込み制で、1時間を限度として、無料で借り切ることができ、これは本館に泊まった客だけの特典。いつもは烏の行水派である僕には、1時間も要らない。30分もあれば十分。

貸切風呂といっても、ほかの宿なら大浴場付属の露天風呂ほどの大きさ。脱衣室も、洗い場も、無論湯船も広々としていて、深い濃い緑を眺めながら、「湯畑の湯」を思う存分愉しめる。いかにも効きそうな硫黄の香りは、いつまでも記憶に残る。

また、本館の客室には、一人用の小さな湯船があり、そこにもと湯が滔々とあふれているから、こちらはいつでも好きなときに湯を愉しむことができる。

朝食は自家製尽くし
朝食は、鮭の味噌焼き、自家製豆腐、しじみ汁、手づくりの湯葉を使いゴマダレを添えたサラダなど充実した内容

名湯を堪能した後は、名料理が待っている。京風でもなく、郷土料理でもない。強いていうなら“つつじ亭”風。熟達の料理人が吟味した食材を、軽やかに調理する。ひと皿、ひと鉢、滋味深い料理が続く。決して奇をてらわず、しかし工夫を重ねただろう料理は、大袈裟に主張することなく、名湯と同じく、心にじわじわと染み入る。

夕餉の余韻を談話室で愉しみ、部屋へと戻る。瀟洒な湯宿ならではの静かな時間。

つつじ亭
住所:群馬県吾妻郡草津町草津639-1
Tel:0279-88-9321
Fax:0279-88-9322
E-mail:info@tsutsujitei.jp
客室数:10室 料金:1泊2食付3万2550円〜6万4950円(税込)
カード:AMEX、DINERS、JCB、MASTER、VISA
IN:14:00 OUT:11:00
夕食:会席料理(食事処) 朝食:和食(食事処)
温泉:草津温泉(硫黄泉、酸性・含硫黄-アルミニウム-硫酸塩・塩化物温泉)/源泉掛け流し/加温なし/加水なし/神経痛、筋肉痛、冷え症、リウマチなど)
風呂:大浴場男女別各1(14:00〜翌10:00)、貸切風呂(無料、本館利用者のみ)
アクセス:車/関越自動車道渋川伊香保ICから約1時間30分 電車/JR吾妻線長野原草津口駅からJRバス草津温泉行きで25分、終点下車後徒歩15分(送迎あり/要予約)
館内施設:談話室
Wi-Fi:あり
http://tsutsujitei.co.jp

文=柏井 壽 写真=宮地 工
Discover Japan_TRAVEL「味わいの名宿」