TRADITION

神事を受け継ぐ神楽団の気迫を垣間見る「岩見神楽」

2020.8.5
神事を受け継ぐ神楽団の気迫を垣間見る「岩見神楽」

「神楽」と呼ばれる芸能は、全国各地に伝承されています。ところが、地域によって内容や特徴はさまざまで、全国的に一様ではありません。130を超える神楽団体が存在し、人々を惹きつけてやまない魅力をもつ石見神楽とは、一体どのような芸能なのでしょうか? 連綿と受け継がれる伝統と技、心の奥底に響く迫力の舞その多様な姿に触れてみよう。

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石見人の魂に刻まれた石見神楽を堪能

島根県中央部よりやや西寄りに位置する江津市にある有福温泉は飛鳥時代、天竺より入朝した法道仙人が山奥で見つけた温泉といわれ、名湯が湧く地域でもある。この温泉街の街中にある神楽殿では土曜の夜、地元の神楽団体による石見神楽の上演が行われている。 趣きのある木造階建ての建物の階に舞台があり、名ほどの収容が可能。客席と舞台が近く、間近で迫力満点の石見神楽を味わうことができる。

「恵比須」の演目に向けて準備をする小学生の団員

軽快なお囃子に合わせ、金糸銀糸を織り込んだ豪華な衣裳に、表情豊かな面を身につけ舞うのは、初代団長のお孫さんにあたる近重悠也さん。子ども神楽団に所属し、初舞台は歳だったという。

初代団長の孫にあたる近重悠也さん。20 年以上のキャリアをもち、舞い手として先頭を走りながら、若手を指導する立場でもある

「1967年、初代の団長である祖父が結成したのが、有福温泉神楽団です。温泉街活性化のため、観光客向けの石見神楽の舞台をつくることが結成のきっかけだったそうです。父もいまも現役の団員ですし、僕は小さい頃から続けているので、神楽は生活の一部。常に〝楽しさ〞を感じながら続けてきました」と話す悠也さん。

20年以上も続けているが、神楽をやめたいと思ったことは一度もないという。現在、悠也さんの歳になる息子さんも手拍子として一緒に舞台に立ち、代が同じ舞台で共演を果たしている。現団長の伊藤康則さんは、伝承される理由があると話してくれた。

「それぞれの演目のせりふや舞い方は、台本となる教科書がありますが、舞い方も演出も、世代が代わると少しずつ変わるもの。変化を否定せず、古い要素を残しつつ、新しい要素もプラスする。これが世代を超えて継承されている神楽団になる理由だと感じています」

お囃子の手拍子を担当するのは団員の息子さん

石見神楽の歴史をひも解くと、日本神話の中の「天岩戸伝説」にまでさかのぼり、岩戸に隠れた 天照大御神を誘い出すために、宇津女命が岩戸の前で舞った踊りが起源だといわれている。現在、演目は、古事記や日本書紀を原典とするものなど数種に上り、スケールも大きく変化。特に、石見神楽は「神事」でありながら、エンターテインメントな要素が濃く、ストーリーも明解。舞もお囃子も激しく、胸のすくような爽快さと勇壮さがある。神、鬼、大蛇が激しく舞う石見ならではの舞がそこにはある。

親子2代で神楽団に所属。父は神楽の進行を指 揮する大太鼓を担当

有福温泉 湯の町神楽殿
住所|島根県江津市有福温泉町 694
問|有福温泉観光案内所
Tel|0855-56-2277
www.all-iwami.com/contents/kagura

石見観光振興協議会事務局
Tel|0855-29-5647

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text : Mayuko Kimura photo : Everett Brown, Kenji Okazaki
2017年別冊『伊勢神宮と出雲大社』


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