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石川直樹が選ぶ絶景の旅
沖縄・宮古島

2020.7.28
石川直樹が選ぶ絶景の旅<br>沖縄・宮古島
宮古島の前浜ビーチの堤防からジャンプする少年。宮古島で泳げるビーチとしてはとても人気のある浜辺。前方に見えるのは来間島で、対岸のビーチも美しい

日本はもとより世界の辺境から都市まで、さまざまな場所を旅している写真家の石川直樹さんに、またあらためて訪れたい日本の旅先を伺った《写真家・石川直樹さんが選ぶ絶景の旅》。今回は10年以上通い続けているという宮古島に想いを馳せていただきました。

石川直樹(いしかわ・なおき)
1977年、東京都生まれ。写真家。人類学、民俗学などに関心をもち、世界を旅しながら、作品を発表。『CORONA』(青土社)で土門拳賞、『EVEREST』(CCCメディアハウス)、『まれびと』(小学館)で日本写真協会賞作家賞を受賞

アーティストの森 万里子さんがつくったサンピラー。七光湾の少し沖に佇んでいる。強烈な台風にも耐えて、屹立している。周囲はひっそりとして、静謐だ

宮古島はいわずもがな、美しい海とゆったりとした時間が魅力の、いつ行っても楽しめる島だ。僕がまだ20代の頃、沖縄や鹿児島の島々を旅しながら、宮古群島にも足を延ばした。宮古島では沖縄本島とは異なる静けさをあちこちで感じ、不思議な島だな、というのが第一印象だった。あれから幾度となく宮古の島々に通った。いつの間にか伊良部島には橋が架かり、市内は道路拡張で少しずつ景観が変わり、新しいホテルやお店も日増しに増えている。

一時期はホテルの建設ラッシュで、工事に伴う人員の確保や何やらで島外の人が多くなり、マンションなどの家賃も高騰していたが、コロナ禍によってそのバブルも半ば終わりを告げられて、昔の静かな島の様相が戻りつつある。

とはいえ、それも一時のことかもしれない。また観光客も増えるだろうし、クルーズ船もやってくるだろうが、やはり僕にとっては10年以上前と変わらない不思議に静かな島、という印象をもち続けている。

お土産などを買うなら、「道の駅」ならぬ「島の駅」がいい。ここには新鮮な島の野菜や果物、お菓子や酒に至るまで、地場産の旨いものが集結している。焼きたてのパンや、宮古そばも食べられるので、お昼ごはん時にもいい。

自分のお気に入りの海は、「前浜」である。定番ではあるのだが、目の前に来間島が見えて、左手には来間大橋がある浜辺はいつ来てもリラックスできる。夏が近づくと、桟橋から飛び込んで遊ぶ若者たちに出会えるのもこの浜だ。砂浜を裸足でゆっくりと散歩するのが、僕の島での日課にもなっている。

海に行けない雨の日は、日本最南端の映画館「パニパニシネマ」で、キャラメルポップコーンを食べながら映画を観るのもいい。市街地にある小さな映画館だが、館主の「島に映画の灯を」という強い思いが込められたアットホームな場所である。僕はこの映画館で、普段はあまり見なかった『スター・ウォーズ』や『アベンジャーズ』などといったハリウッドの大作のおもしろみを覚え、島でDVDを借りて一気に観た。至福の時だった。

もちろん何もせず雨の音をただ聞いているだけでもいい。雨がやんで太陽が顔を見せただけで、少しだけ幸せな気持ちになる。ただそこにいることの時間を楽しむ、それがこうした南の島での理想の滞在方法にちがいない。

宮古島へのアクセス
那覇空港から飛行機で約45分・羽田空港から飛行機で約3時間・関西国際空港から飛行機で約2時間30分(宮古空港)

『ニッポンの旅計画108』特集に、石川直樹さんが選んだその他の、何度も行きたい絶景スポットが、掲載されています。読むだけでも旅気分が味わえる「妄想旅特集」ぜひ、チェックしてみてください!
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text&photo=Naoki Ishikawa
2020年7・8月号 特集「この夏、どこ行く?ニッポンの旅計画108」

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