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大分の真竹で作る四角い籠
高橋みどりの食卓の匂い

2020.7.31
大分の真竹で作る四角い籠<br><small>高橋みどりの食卓の匂い</small>

スタイリスト・高橋みどりさんがうつわを通して感じる「食」のこと。五感を敏感に、どんな小さな美味しさ、楽しさも逃さない毎日の食卓を、その空気感とともに伝える《食卓の匂い》。今回は用途に合わせて揃えたくなる7サイズの四角い籠「角物」を紹介します。

高橋みどり
スタイリスト。1957年、群馬県生まれ、東京育ち。女子美術大学短期大学部で陶芸を学ぶ。その後テキスタイルを学び、大橋歩事務所、ケータリング活動を経てフリーに。数多くの料理本に携わる。近著に『ありがとう! 料理上手のともだちレシピ』(マガジンハウス)など

使用したのは「角物 定番」取っ手付き#1/9720円(175×135×H60㎜)、#2/1万800円(210×160×H110㎜)、#3/1万5120円(240×180×H140㎜)。7サイズ展開で、一番大きい#7は455×335×H300㎜の4万5360円。このほかふたがなく浅い「トレー」のシリーズなどが揃う 問|おじろ角物店 ojirokakumonoten@gmail.com

華飾なものが苦手で、四角い物が好きな私が惹かれた籠。聞けばそれは「角物」と呼ばれているそう。四角好きゆえに、無骨な会津本郷焼の四角い鰊鉢は大、中、小と手元に集まりました。カトラリーや箸入れとして使っているのですが、どうにも本来の使い方を知りたくて、当時出会った会津の方の家に行き、鰊漬けを漬けたという経緯のある私。この角物も同じく制作風景を見たいと思い、大分県にあるおじろ角物店を訪ねました。

街中からちょっと入ったところに、夫婦二人で営む工房があります。入り口脇には、竹材の保存庫があり、入ると作業順に部屋が分かれていてスタッフが静かに作業をしています。仕事のひと通りを見てみると、竹細工とは作業の7〜8割が割る、剥ぐ、を繰り返す材料加工に充てられることがわかります。骨格となるコの字型のパーツは、火で炙って曲げる。寸分の狂いもない加工が、その後の組む作業にとって非常に重要であり、仕上がりの美しさにもつながります。この地道で丁寧な仕事の上にこそ、角物があります。つくり手の小代正さんは、角物は自己表現の作品ではなく、あくまで日用の道具としてつくりたいと言います。芸術品でも工芸品でもなく、和でも洋でもないニュートラルな道具、そして食べていくためのなりわいとして。

正さんはかつて会社員、妻の美穂さんは歯科医師でした。もともとものづくりが好きな二人が選んだ仕事が、竹細工の角物づくり。地元大分の真竹を使い、何よりも四角いものが好きだったから角物を選び、職住一体の暮らしから、簡素で実直な道具としてのものが出来上がった。角物を知れば知るほど、私が惹かれた理由がそこに重なりました。

工房の棚にきちんと並んだ商品は、使われるために出番を待っているかのよう。その中でひと際目に留まったのが同じデザインで7サイズが揃う取っ手付きの「角物 定番」。一番小さいサイズ#1は、その名も「豆腐籠」。豆腐1丁が入る。その昔、豆腐を買ってこの籠に入れ持ち帰ると、ちょうどいいあんばいに水がきれることからこの呼び名がついたという。食いしん坊には、なんとも魅力的なネーミング。

まずは#1〜#3のサイズを使ってみたい。もちろん#1には豆腐を。実にいい風情なのに、我が家の近所には、この籠を提げて行くような豆腐店がないのが残念。#2は、ゆったりとしたお弁当箱として。バゲットにカマンベールチーズを挟んだカスクートを2本。キュウリやプチトマトなどをお供に。休みの日のブランチに近所の公園へ、ワインでも引っ提げて行きたい気分。#3には、旅のお供に中国茶の茶籠セットを仕立てる。お茶請けに現地調達の甘いものでのティータイムもいいですね。外へ持ち出さぬときには台所にその場所を取り、常備の乾物やお茶を入れるストック箱として、3時のおやつの控えの間として、いつでもおにぎりを入れて飛び出せるよう待ち構えています。丈夫で通気性のよい「角物」は、使えば使うほど色つやもよくなっていくことでしょう。そんな変化も楽しみながら。

text&styling=Midori Takahashi photo=Atsushi Kondo
2019年9月号 特集「夢のニッポンのりもの旅」


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