《箱根・翠松園》
装い新たに生まれ変わった
大正ロマンあふれる文化財の宿へ。
後編|美しい日本料理を堪能
古くから、観光客はもちろん、文化人や高感度な人々に愛されてきた箱根。小涌谷の森に包まれる極上の旅館「箱根・翠松園」は開業19年目を迎え、未来に向けて新たなるしつらえを施し、2026年4月9日、丁寧な化粧直しを終えて再開業を果たした。今回、ホテルジャーナリスト・せきねきょうこさんが実際に滞在し、極上ステイの魅力をご紹介する。
文=せきねきょうこ
フランス・アンジェでの大学生活後、スイスの山岳リゾート地で観光案内所勤務中にホテル暮らし。フランス語通訳を経て1994年から現職のホテルジャーナリスト。連載・著書多数。
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旬の食材を繊細に仕立て、
季節の移ろいをひと皿ごとに映し出す

目にも艶やかな皐月の前菜。生雲丹、蛍烏賊生姜煮、浅利クリーム、新玉ねぎの玉地蒸し、新丸十ミント煮のほか、山海の幸やパプリカカステラ、バジルチーズも。いずれも手の込んだ逸品
料理の美味しさや独自性に定評のある料亭 紅葉では、ベテラン料理長の森田正弘氏による、季節感のある厳選食材と独自の解釈、繊細な手腕でつくり出す日本料理が私たちを惹きつけている。
大正時代に建てられた日本家屋でいただく上等な食事に、大正ロマンを感じる内装や窓に映る庭園の美しさなど環境の満足度の高さに、食事空間の魅力も倍増だ。

本マグロの中トロ、平目、伊東産アオリイカ、初鰹のたたき。新タマネギにニンニクの芽をあしらいに。自家製塩ポン酢、醤油、からしなど。初鰹は5月が旬。身が引き締まりさっぱりとした味わい。アオリイカも甘みが強く美味しい

春の吸い物
金目鯛の若狭焼。金目鯛に香煎(柿の種の粉末)をまぶし、風味を利かせて香ばしく焼き上げる。柔らかな魚の身に香ばしい柿の種がぴったり。ここではゴマ豆腐とウド、木の芽、蕗、花山椒にあんをかけ吸い物として
まだ明るさの残る初夏の夕暮れどき、料亭 紅葉にアンティークな色合いの明かりが灯る頃、一人また一人と夕食を楽しみにするゲストが入館する。夕食は料理長が近隣の山の恵みや、全国から取り寄せた旬の食材を選び、繊細に仕立て、季節の移ろいをひと皿ごとに映し出す日本料理である。

オリジナルの贅沢な鍋物
江戸前穴子の小鍋仕立てには大ぶりのハマグリ、丸ナス、レンコンが入り、香りづけに根三つ葉、刻み新ショウガを添える。グツグツと煮える出汁は鰹と鶏ガラでコクを出した。贅沢な強肴に酒も進む

低温調理で柔らかく
黒毛和牛の溶岩焼き。58℃で2時間かけ低温調理。ほどよい火入れで肉の旨味を閉じ込める。甘みの強い新じゃが、アスパラガス、徳島産シイタケ「天恵菇(てんけいこ)」、蕗の薹味噌バターを添えて
食事は食材の上質感のみならず、機転の利いた“まさかの食材”を用いた新しい美味しさが追求されている。出汁や旨みなど基本は変えずとも、伝統や頑なさの殻を破る斬新な探究心が反映され、絶品料理の数々をつくり出している。

桜海老と新茶の釜炊き
まさに海と里の春をまるごといただく新茶と桜海老の釜炊きご飯。香ばしい桜海老と香り爽やかな新茶の組み

「水菓子」で〆る
ボリュームのある日本料理の最後を飾るのはトマトの蜜煮、マンゴー、モヒートの氷菓に練乳のババロアでさっぱりとやさしい甘さのデザート。コーヒーや紅茶、食後酒を楽しむなら隣接のバー 伊都で
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レトロなバーや朝食が心身を満たす

到着の日の午後、夕食前にバーに立ち寄り、ウェルカムドリンクを楽しもう。レトロな趣のバーで食前酒を傾け、素晴らしい夕食前に心の準備をするひとときだ。

質、量ともに充実した夕食を楽しんだ翌朝、不思議なほど空腹を覚えつつ朝食へ。丁寧な小鉢料理がずらりと並び、釜炊きご飯とともに幸せな一日のはじまりとなる。
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箱根・翠松園
住所|神奈川県足柄下郡箱根町小涌谷519-9
Tel|0570-0117-22(10:00〜20:00)
客室数|23室
料金|1泊2食付9万6800円〜(2名分。税・サ込)
カード|AMEX、DINERS、Master、VISAほか
IN|15:00 OUT|11:00
夕食|日本料理(レストラン・一部部屋食)
朝食|和食(レストラン・一部部屋食)
アクセス|車/東名高速道路厚木ICから約50分、御殿場ICから約30分 電車/箱根登山電車小涌谷駅から送迎車で約5分
施設|レストラン、バー、スパ、大浴場など
text: Kyoko Sekine photo: Hiroshi Abe
2026年8月号「海へ 山へ」

































