《ヘラルボニー》
アート×福祉で地域活性化を叶える
中編|「地域を豊かに」するビジネスモデルとは?
世界が熱視線を送る岩手・盛岡発のクリエイティブカンパニー「へラルボニー」。異彩を放つ作家とともにつくる福祉×アート×ビジネスを起点とした事業展開で、既存領域の枠を越えた新しい価値を創出している。中編ではヘラルボニーのビジネスモデルや事業展開についてご紹介。
「地域を豊かに」という思いから
生まれたビジネスモデル

へラルボニーの主なビジネスモデルは、作家や福祉施設とライセンス契約を結び、デジタルデータにした契約作家の作品をヘラルボニーブランドのプロダクトや企業とのコラボレーションに取り入れていくというもの。作品は知的財産として管理され、収益の数%がロイヤリティとして還元される。現在、国内外で293名の作家、79の福祉施設と契約しており、保有する作品のデータはおよそ2600点にも及ぶ。

「作家ファースト」の徹底も、へラルボニーが大切にしている姿勢だ。著作権は作家本人に帰属。作家の意思を尊重し、作品の尊厳を守るため、作品を使用するたびに作家の利用許諾を得ている。すべては作家との関係性を、“支援”ではなく対等な“ビジネスパートナー”としてものづくりをしているがゆえのこと。2025年の売上高は創業初年度の85倍まで成長し、作家や福祉施設に支払われたロイヤリティはここ4年で25倍になったという。

さらに企業との取引も過去4年で3・7倍に増え、その数は170社に上る。「日本航空」、「大王製紙」など、名だたる企業やブランドとのコラボレーションも多く、「丸井グループ」では契約作家によるアートをあしらった15種類の「へラルボニーカード」を発行。利用金額の0・1%分が作家や福祉団体へ還元される仕組みで、発行枚数は5万枚を突破した。

へラルボニーブランドでは作品が有する力を引き出しながらプロダクトに落とし込んでいく。日常生活で使用するアイテムとして馴染みやすいという点も意識するポイントだ。美術品として原画の販売も行っている
事業は4つの軸で展開しており、へラルボニーブランドのプロダクトを企画・販売するリテール事業と、企業との取り組みを企画・プロデュースするアカウント事業を中心に、ウェルフェア事業、アート事業で構成される。
ウェルフェア事業はDE&I研修やイベントを介したマジョリティの意識変容の取り組みと、障害のある方が活躍できる場づくりの二方向から開発を推進。2025年に「80億人がちがいを面白がれるほうの世界へ。」というビジョンの下、「HERALBONY ACADEMY」を創設し、実践と研究を重ねて異彩を放つ組織を探求する。アート事業は障害のある作家を守り育て、新たな作家の発掘も進める全事業の根幹といえるだろう。国際アートアワード「HERALBONY Art Prize」の主催を通じ、作家の才能をたたえつつ長期的な活躍を後押ししている。

企業やブランドとコラボレーションする際は、異彩を放つ作家たちの作品を掛け合わせることで、世の中の障害へのイメージをどのようにして変容させていけるかを重視している
また2024年には、フランス・パリに「HERALBONY EUROPE」を設立した。世界最大級のスタートアップ集積施設「StationF」を拠点に、現地企業との協業を模索しながら、欧州の作家との契約締結へ向けた足掛かりとする。
この挑戦は、へラルボニー第2章のはじまりだといえよう。岩手・盛岡から世界へ。アートには国境を越え、心をつなぐ力がある。異彩を放つ作家とともに、へラルボニーは前進し続けていく。
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text: Nao Ohmori photo: Kenji Okazaki
2026年2月号「地域を変える企業」



































